ロシア旅行(ボルガの船旅中心)とその後知った事

1.はじめに ロシアは近くて遠い国だった。高校迄新潟で育ったので対岸のナホトカはいずれ行けるだろうと思っていたが縁が遠く、効率の悪い共産主義が残れる時代でも無かったしロシア国家破産危機もあり、興味が湧かなかった。66歳の最近になってようやく天然ガスを巡るオルガルヒの活動やプーチン率いるロシアの利権拡大・興隆ぶりを聞き、一度見てみたくなった。今回はモスクワからサンクトペテルブルグまで、途中キジ島等に立ち寄り乍らのボルガ川下り1800kmの旅を選び楽しむ事が出来た。折しもウクライナ(ロシアにとって中心的存在の一つだった旧ソ連の国。国家形成期はキエフの方が中心だった)を巡り、一極覇権の崩壊(ドル暴落)を食い止める為軍事力でロシアを抑えつけ逆に強化(ドル防衛)したい米国とこれに対抗してもう一方の極BRICSの連携を強化拡大させようというロシアとの大戦直前の軍事・経済の角逐が展開されているので、ロシア国内にも緊張が漂っているのかと思っていた。しかし少なくとも一観光客の眼から見る限りロシアは全くのんびりしたもので、道中ずっとどこでも観光客で賑わっていてかなり拍子抜けだった。お陰でロシアの豊かな自然・文化・芸術を堪能して充実した心が潤う旅を味わう事が出来た。今回ロシアの現状を見て感じた様々な事を、ロシア関連の世界史の基礎知識部分を確認し照らし合わせながら纏めておきたい。 2.旅の概要 (1)スケジュールと内容のあらまし 旅程は2014.6.20~7.2迄の13日間。テーマは「ショーロホフ号で行く世界遺産キジ島とロシアの母なる大河ボルガの船旅」であった。モスクワやサンクトペテルブルグ観光にも最低限必要な日程は確保されており、見るべき所は観て来れたと思う。 ・大韓航空でソウル経由モスクワへ。空港の入国審査は行列は長かったが緩かった。市内で3泊(ホテル1泊・船中2泊)し観光した後、夕刻ボルガ川クルーズに出発した。ドイツ建造の船で乗客は200名余、日本人21名を除き大半がドイツ人だった。 ・ボルガ川は両岸とも白樺やアカマツ等がずっと延々とほぼ同じ高さで綺麗に立ち並び、偶に森の中にダーチャと呼ばれる別荘や教会が点在して見えていた。途中ウグリチ、ヤロスラビ、ゴリツィー、キジ島、マンドロギーに立ち寄り観光ながら、川下りを存分に楽しんだ。船室は狭くシャワーと手洗いが一緒でちょっと驚いたが、慣れれば特段問題も無く、食事も昼夜ともコースメニューでおいしかったのでつい食べ過ぎ・飲み過ぎがちになった。船旅なので日本人の同行の方々から多くの旅行や人生の体験談を聞くことが出来て楽しかった。又イベントでドイツ人乗客との歌の交歓会で俄か合唱団員になり「百万本のバラ」や「故郷」を合唱したり折り紙を通じた交流の企画もあって、原生林の中をボッーとする暇もあまりないまま開始7日目の朝にサンクトペテルブルグに到着した。 ・サンクトぺテルブルグではそのまま船中で2泊した。お目当てのエルミタージュ美術館やピョートル宮殿等の観光はいずれも期待に違わぬものであった。サンクトペテルブルク国際白夜マラソン?に出くわしたせいもあり、バスがかなりの渋滞に巻き込まれたしどこも観光客の行列が凄かった。本当に満足しきって3日目の夜、再び大韓航空でソウル経由関空へ帰国した。 (2)旅の見所 <モスクワ観光> ・初日 ロシアの歴史や文化の原点となった郊外の都市群「黄金の環」の代表格セルギエフ・ボザードへ。ロシア正教最大の聖地で世界遺産のトロイツェ・セルギエフ大修道院(モンゴルが支配した14世紀初めに建立)は、モンゴル支配に対抗するロシア諸公のまとめ役を果たした所。ロシアで最も尊敬される聖人セルギイが整備されたモスクワで無く、原生林でクマ・狼や冬は零下20~30度の中で貧苦に耐えながら聖書の教えをひたむきに求めて信仰生活を送った所だ。その聖セルギイの祝福を受けたモスクワ大公ドミトリー将軍率いるロシア軍がモンゴルに勝利した。ロシア軍の勝利を神に感謝しイワン雷帝が建て、代々の皇帝が戴冠式を行ったという白亜のウスペンスキー聖堂等を見学した。今回「黄金の環」の言葉自体も初めて知ったが、それぞれがロシア諸公国の首都として、最終的にモスクワが中心になっていった源流となった地域の事だったのだ。ソ連崩壊後、大修道院、モスクワ神学大学、聖歌隊指揮者、イコン画家等正教文化の中心地となっている。 ・2日目 雀ガ丘から市街を一望後、チャイコフスキーが「白鳥の湖」を構想したという湖の近くのノボディヴィチ女子修道院や、エリツインやゴルバチョフの妻等の様々なレリーフの墓がある隣接の墓地を見たり、多くの壁画で有名な地下鉄(最近事故があったようだ)に入場して大混雑の中を皆ではぐれない様にしながらキエフ駅(ロシアは行き先が駅名になっている)等の多くの壁画を鑑賞した。又、1856年に豪商トレチャコフが創設したイコン画等の古代ロシア民族画を集めたトレチャコフ美術館を見た後、広大な赤(美しいの意あり)の広場を聖ワシリー寺院等を眺めながらゆっくり散策した。ここがソビエト時代以降毎年11月7日に革命記念軍事パレードが開かれている所なのか。 ・3日目 雨の日に時間指定でクレムリン(城塞)見学。12世紀に木造の要塞で始まった。15~16世紀に現在の形になり、この時点でロシア正教の総本山ウスペンスキー聖堂等を建立した。プーチンの大統領府があるとは思えない程警備が手薄のように見えた。ロシア最古の博物館である「武器庫博物館」には1613年~1917年迄続いたロシア最後の王朝のロマノフ王朝の宝物等12世紀以来ロシアの皇帝が収集して来た世界の美術工芸品が沢山展示されていた。     <ボルガ川の船旅> ・4日目 古都ウグリチに夕刻着。イワン雷帝の死後流された息子ドミトリー・ナ・クラヴィーの名の付いた聖堂を見学した。 ・5日目 ヤロスラヴリ 2010年に建都1000年を迎えた世界遺産(2005年)「黄金の環」最大の街。15世紀にはボルガ川を伝って、カスピ海、黒海、バルト海、北海を通じる一大交易都市として発展した。13世紀に創建された中世建築の傑作スパソ・プレオブラジェンスキー修道院へ。5千ルーブル札にある小礼拝堂を見て、修道院内の庭では鐘を使った生演奏を聴き、教会内で聖歌と民謡のアカペラを聴く。実力も音響も素晴らしかった。預言者イリヤ聖堂前を行く人。この聖堂はフレスコ画で名高くユネスコの世界遺産に登録されている。 ・6日目 ゴリツィー キリルベロゼスキー修道院を見学。夜10時でも明るい白夜は初体験です。 ・7日目 キジ島 欧州第2の湖オネガ湖に浮かぶ緑の世界遺産キジ島散策。幅500m、長さ7キロの細長い小島だ。木造のプレオプラジェンスカヤ教会は修復中だったが、緑の小道を歩みながら徐々に近づくと想像を上回る大きさを持った美しい教会だった。特に木製で作られた22個の玉ねぎと言われる部分はじっと見上げ続けても見飽きない美しい曲線をなしていた。補強工事中だったが中のイコノスタシスは鮮明で、中には曼荼羅風のものもあって驚いた.売店のお嬢さんは純朴そのもの。他の冬の教会や、ベル・タワー等の木造建築群も自然にマッチして美しく、先住民にノブゴロドからの移住者がキリスト教を伝えロシア正教会の教会を建設したのだ。ボルガ川の北のはずれなので流石にここまでは争乱が及ばなかったので残ったのであろうこの島の風景と聴いたベルの音は心と耳に深く刻まれて残っています。 ・8日目 マンドロギ-- 素朴な森に生産者自身が直売する民芸品店が多くあり良い土産を沢山見つけた。又ウオッカ博物館、馬術ショ-、民族音楽ショー等を楽しみながらのバーベキューは格別の味であった。 <サンクトペテルブルグ観光> ・9日目 聖ニコライ聖堂を撮影し、エミルタージュ美術館「冬の宮殿」へ。大混雑で並んで順番を待ちやっと印象派のゴッホ、モネ、シスレー等や、レンブラント、ダ・ヴィンチの作品のみを中国人観光客の行列割り込みの酷さに憤慨しながら慌ただしく見学できた。帰国後美術館で買った「エルミタージュ」を眺めて見たが、見ていないものがあまりにも多く、いずれ又ゆっくり鑑賞したいものだ。その後水中翼船で郊外のピョートル夏の宮殿で大噴水を見た。夜はパレスシアターで本場のバレエ「白鳥の湖」を鑑賞出来た。時代の変化からか原作の悲劇をハッピーエンドに変えていた。 ・10日目 翌日はエカテリーナ宮殿へ。金箔の大きな部屋が続き勢威が窺えたが、順番待ちの観光客でごった返し、ゆっくりは見れなかった。1960年代に戦争の破壊から修復されたという豪華な大理石の階段からレリーフを見ながら入った。陶器のコレクションや美術品は戦乱を避けウラル地方に逃れていたという。「明るい回廊」の雰囲気を味わい大広間天井の「ロシアの勝利」も見上げ豪華な「食事の間」を見ながら行った「黄金のアンフィラーダ(続き部屋)」のハイライトの「琥珀の間」は写真撮影禁止だったが天井から壁まで美しい琥珀で埋め尽くされていた。「緑の食堂」も一度はこんな場所で食事をして見たいと思わせる空間だった。まだまだキリが無いので一度は行って見て下さい。今回は行けなかったエカテリーナ公園等も再訪して見たいものです。午後はイサク寺院に。帰途にネギ坊主が派手な「血の上の教会」を撮影した。夜は船内で有志のカクテル&ウオッカパーティーで名残りを惜しんだ。 ・11日目 18世紀にスウェーデンの攻撃から守る為作られたというペテロパブロフスク要塞を見学。中央の大聖堂にはピョートル大帝やエカテリーナ2世等の皇帝達の棺が華やかに並べられていた(お骨は地下との事)。端の方にはレーニンやドストエフスキーを収容した獄もあった。いつかドストエフスキー「罪と罰」の舞台も歩いてみたいものだ。 3.ロシア旅行の感想 (1)ロシア正教の著しい復活盛況ぶり ロシア正教はピョートル1世やソビエトによる受難の時代を経て完全に復活していて大盛況である事を目の当たりにする旅だった。ロシア旅行中毎日のように教会を訪れ、昔から表現様式が殆ど変わらないという美しいイコン画を観て、主要教会では聖歌の素晴らしい合唱を聴く日々が続いた。ソビエト時代の弾圧の跡は殆ど窺えないし、国民の日常生活に横3本のロシア十字架やイコン画が深く根付いているように感じられた。 <ロシア正教の歩み(概要)とロシアの歴史> ・988年  キエフ公国のウラジミール大公が正式にキリスト教を受け入れる。妃の出身国ビザンティン帝国の国教であったギリシャ正教を選んだ。当初はコンスタンティノープル総主教の管轄下だったが、その後ギリシャ正教が次第にロシア独自に発展していく。 ・1236年 キプチャク・ハーン国の侵略が度重なり中心都市キエフは荒廃していった。ウラジミール大公没後は強力な支配者があらわれずモンゴルの襲来を受け支配されたのだ。 ・1345年 モンゴル支配は教会には寛容で、荒野修道院運動でモスクワ郊外にトロイツェ・セルギエフ大修道院が建立される。 ・1453年 ビザンチン帝国が終焉しモスクワ・ロシアが出現した。紋章を双頭の鷲に。1480年にはモスクワ大公イワン3世がモンゴル軍を撃退し250年以上続いた「タタールのくびき」が終りを告げた。 ・1547年 イワン4世(雷帝)がロシア統一し皇帝に。しかしバルト海進出を狙ったがポーランド等との戦いに疲弊しその後も安定せず混乱の時代(スムータ)が続く。 ・1589年 モスクワ府主教が総主教に昇格。ローマ帝国、ビザンティン帝国亡き後モスクワ大公国こそ「世界を支配するキリスト教世界帝国=第3のローマ」との思想も登場。文化・芸術の隆盛が始まる。 (17世紀~ロマノフ王朝時代 典礼の改革を巡り正教会は分裂。又、皇帝より教会が上位にあると主張した為正教会の力は弱まっていく) ・1721年 ピョートル1世(大帝)は総主教の地位を廃止。替りに宗務院を設置し皇帝の管理下に。美術と宗教を切り離させた。1712年サンクトペテルブルグをしロシア革命迄続いた新首都に。 (1762年即位のエカテリーナ2世と共に西欧の政治制度を吸収し侵略と併合で列強入り。文化・芸術も発展させコレクションはエルミタージュ美術館の母体になった。ボリショイ劇場も建立した。 18世紀末からはツルゲーネフ、ドストエフスキー、トルストイ、プーシキン等の文豪を輩出した。1812年ナポレオンとの大祖国戦争に終止符、1904年の日露戦争、第1次世界大戦で食料・燃料難となりロシア革命勃発) ・1917年 帝政が崩壊し、教会は2世紀ぶりに総主教制を復活させるが、それも束の間で、今度は「無神論」を掲げるソビエト政権により厳しい弾圧を受ける。 ・1985年 ゴルバチョフのペレストロイカ政策で、再び最大の宗教団体として復活。 ・1988年 政府が全面的に支援して1000年祝賀祭を開催。教会の権威が急速に復活。 日本は明治新政府により1868年の神仏分離令、1870年の大教宣布で廃仏毀釈が進んだが、その後の市民生活に占める宗教(特に仏教)の密着度会いは低いままである事と対照的だと感じられた。 (2)美しく素朴さを感ずる広大な国であった事 モスクワは緑も豊富でゴミも無く道路清掃の散水車も頻繁に見かけ、赤の広場も街並みも教会を中心にしてカラフルで整然としていて、本当に美しい首都であった。勿論ボルガ川の両岸の原生林は期待通り美しく、船からボッーと眺め続けいても見飽きなかった。サンクトペテルブルグは中心部の美術館・宮殿・教会の華やかさは格別だが、一方で自動車も多く道路の渋滞がかなり酷かった。街外れにはコンテナ風のやや粗末な住宅?らしきものの一角もあり気になった。自然や街もそうだが、教会音楽、バレエ、民芸品等の文化度が高く、人々も素朴さを感じさせる人が多かった。ロシアが他国からの侵略や度重なる戦争を繰り返し撃退して来た歴史の概要を知った今、米国との大戦争の瀬戸際に立たされていても割と平然としていられる理由が何となく理解出来た気がした。日本へのお土産は、どこに行ってもマトリョーシカがあっていくつかは買ったが後半はもういいと思って他の品を探したが、帰国後定番だがやはりマトリョーシカがロシア土産らしいと好評だった。ホフロマ塗りの親しさを表すというスプーンも喜ばれた。ただ今回の旅行先はロシアの殆ど全てのように思っていたが、地図で見ると広いロシアの中のほんの西欧よりの一部に過ぎない事も再認識した。 4.番外編(緊迫する国際情勢関連) (1))欧米の経済制裁の影響は? 出発前に欧米によりロシアに経済制裁があった事は知っていたが関空で円をルーブルに替えていった。ところが少なくとも観光客への値付けは殆どがユーロであり、ルーブルで払うとレートに手数料がかかるのか割高になるので驚いた。ドイツとロシアの関係は表面上はともかく意外に密接な事の証左だろう。この問題で帰国後に大ニュースが待っていた。ブラジルでのBRICSの会合でBRICS開発銀行創設決定の報道である。これは戦後ずっと続いて来た米ドル・石油本位制への挑戦になるものであり米国経済にも大打撃を与える事になるので米国は絶対に座視し得ないだろう。欧米のロシア経済制裁の第2弾もあるようだし、今後どう展開していくのか経済に止まらず米国/NATOとロシアの軍事的衝突に至る事も充分あり得る大問題だ。100年前の第一次世界大戦、70年前の第二次世界大戦後初めての世界の覇権構造に大転換を齎す可能性が強い歴史的な出来事と思われる。小競り合い程度で辛うじて平和裏に進展していくのか本当に核戦争になるのか、世界は今瀬戸際に来ていると思う。 (2)ウクライナ政変はロシア攻撃の拠点作り 出発前に、ロシアの隣国ウクライナで暴動後のクーデター的政権交代で親米政権が誕生し、それに即座に対抗したロシアによるクリミア編入、東部ウクライナの親ロ派自治政府の発生、それを押し潰そうとするウクライナ政府軍の攻撃と、米国とロシアの間にかなり激しい角逐があった。旅行の間特にボルガ川クルーズ中は新情報も途絶えて久し振りにのんびりしたが、帰国後事態は緊迫度を増しとうとう7月17日にはウクライナ東部上空1万メートル超を飛行中のマレーシア航空機が撃墜されるに至った。攻撃したのがウクライナ政府か親ロシア側なのかまだ分からないが、私自身ははっきりした推論とその論拠は持っている。いずれにせよ、撃墜直前のイスラエルのガザ侵攻、マレーシア航空機撃墜、イラク北部のISISの攻勢は皆世界の覇権を巡る関連した動きである事は間違いないだろう。周辺国も全て各々多大な影響を受ける事は当然である。勿論日本の中国敵視策や集団的自衛権問題もこれらの動きと直結していて、米国ネオコンの指示に基づくものだろう。一般の日本人からすると信じ難いと思うが、米国は本気でロシアとの核戦争も辞さずの構えであり、中東ガザ攻撃やイラクの内戦やアフリカの資源争いに日本の自衛隊を下請けとして参戦させたいようである。米欧/NATOと連携して露中に対決し、米国から日本に対し一説では軍事費は20兆円、自衛隊員も沢山出すよう強い指示があるといわれている。本当はのんびりと川下りをしたり、こんな旅行記を書いていられるような平穏な場合では無いのだが。 (3)作家ミハイル・ショーロホフと手塚治虫 若い頃ドストエフスキーやトルストイ等の翻訳本を受験勉強そっちのけで読んだが、今回乗る船の船名のショーロホフは読んだ事が無かったので旅行前に短編を探し赤木かん子編の「戦争」(ポプラ社)に選ばれた「人の運命」という本を読んだ。ウクライナがソビエトの一員だった時代にドイツとの戦争(1941年~45年)に召集され人生を翻弄されるウクライナ出身の逞しく優しい兵士の物語で、戦争が人の運命を狂わす悲しみが心に響く名作品だった。ウクライナが地政学的にも本当に重要な位置にあるのは今も昔も変わらないようだ。同じ本に手塚治虫の「ぼくは戦争を忘れない/語り部になりたい」があり実際の被爆撃体験を基に人間狩り、大量虐殺、言論の弾圧という国家の暴力があった時代の事を語ってくれていた事も知った。昭和19年、勿論漫画は1冊も無かった時代、軍需工場への動員、空襲等について描かれていた。 4.終りに 大概どこの国に行っても一般の国民の多くは善良な人達の方が多い。ロシアはロシア正教会の影響なのか観光客の立場からなのか思っていたよりずっと純朴な人達しか会わなかった。しかしプーチンを支える人達の中にパミャーチと呼ばれる一団があるそうで、この存在があるので米欧/NATOの攻撃に曝されても今の所何とか対抗出来ているそうである。表面だけは自由な民主主義国の体面を装っているが、内実は昨今は特に隠しようも無くあからさまに米国のいいなりにさせられている日本の現状とは対照的だ。いくら天然ガスや北方領土の権利が欲しくても、米国と完全に敵対しているプーチン大統領との交渉が許される状況では無い筈だが、マレーシア航空機MH17の撃墜事故では米国の要請に拘わらずまだロシアの仕業と決めつけず非難をしていないのは注目される事だ。訪日の実現はもう無理と諦めざるを得なくなるのではないだろうかと思うが実現すると面白いのだが。私達も攻められてもかわす術を持って何度も復活する独立自尊の国になりたいものであるが、当面は軍事ではオスプレイの本土配備等本土の基地化進展、経済は消費税増税やTPPの多大な影響により弱者から順次脱落する社会が更に加速して、一層苦境に立たされていくだろう。しかしいずれの日かロシアの250年余続いた「タタールのくびき」ならぬ日本の「米国のくびき」から解き放たれる時が来るのだろうか。いずれにせよロシアは自然も宗教も音楽も文学もとても魅力的な国だった。その一端を見る事が出来て大変楽しく、心の糧になる旅行であった。… [more]

ロシア旅行(ボルガの船旅中心)とその後知った事 ロシア旅行(ボルガの船旅中心)とその後知った事

ギリシャ旅行(古代は神話と民主制国家の源、今は財政破綻のみ強調される国)で考えた事

1.はじめに ギリシャにはおよそ3000もの島があるというが、私は3つの目的でギリシャ旅行では人気のエーゲ海で無くペロポネソス半島主体の小旅行を選んで行って来た。 ①「若き日」に憧れていたがすっかり忘れていた古代ギリシャ文明・美術に直接触れる事。又、一時だが目指したオリンピックの発祥の地を見る事。 ②「民主主義」の淵源と言われる地で、そもそも古代ギリシャの民主主義とは本当はどんなものだったかを考え、現在の日本の「民主主義(もどき?)」の問題点を再認識し今後の参考にする事。 ③財務省は消費税増税の為に「ギリシャの財政破綻」を盛んにPRして一般の日本人を騙している。外国に多大な借金をしている財政困窮のギリシャと90数%が国内で消化される国債で賄う日本の財政の課題との関連性は全く希薄であるとの論点を強化する事。 (1)ペロポネソス半島とアテネ歴史の旅 最近のギリシャ旅行はエーゲ海巡りやメテオラネス修道院等の方が人気があるようだが、今回は古代ギリシャ神話や民主政治の発祥の地として輝かしかった歴史の舞台の中心地である「ペロポネソス半島とアテネを巡る旅」の企画は希望にぴったりだったので飛びついた。 ①オリンピア遺跡は今もオリンピックの採火をするヘラ神殿前の採火灯や2004年のギリシャ五輪の時も円盤投げ会場として使われた古代競技場もあるとの事で、一度は行って見たかった。 ②昔良く父に聞かされたが今は死語のようなスパルタ教育のスパルタは、アテネと拮抗して戦い続けて消耗した為双方共倒れとなり、その後長い間東ローマ帝国やオスマントルコ、ドイツ出身の国王等にずっと支配され続ける結果を招いてしまい、長い主権喪失期間を経てようやく1829年に独立した事や、独立後も2度の世界大戦、戦後の内戦等動乱続きで大変だった歴史の一端に触れる事。 ③何と言ってもアテネでパルテノン神殿を見て往時の勢威を偲びアクロポリス博物館、アテネ考古学博物館で古代ギリシャ文明や美のレベルの高さに触れる事。 ④バッセのアポロン神殿、ギリシャ正教会の聖堂、ティリンス遺跡、エピダウロス遺跡、ミケーネ遺跡、コリントス遺跡等でギリシャ神話の骨格となる舞台を見て、その後の争奪の歴史にも触れて、欧米の文明文化の起源の地がその後どのように展開していったのかに触れるのが目的だった。 (2)古代の民主制国家とはどんなものだったのか。現代にどんな影響を齎しているのか。 3年前のトルコ旅行でエフィソスに行った際ソクラテスも逗留した舞台でもあった話を聞き、昔読んだプラトンの「ソクラテスの弁明」を帰国後読み直して見てギリシャに行かなければと思った。又今回のギリシャ旅行ではプラトンの「国家」が今でも欧米の国家戦略立案者、特にネオコン思想の中心と言われるハーバード大学でも必須な基礎知識となっている事を知り、帰国後初めて読んで見た。昨今の日本の政治状況を見ると「民主主義は理想の制度では無い」という疑念が深まるが、約2500年も前のプラトンの「国家」では民主主義がファシズムを生み出し易い制度である事が語られていて、今の日本や世界各地の実状そのものであり、描かれていた事や人物像は現代にもそっくり通じるものであり自分のようなタイプの人間も批判の対象になっていたりして本当に驚いた。更に日頃日本には民主主義ですら実はちゃんと根付いていないし、むしろ後退している現状である事を再認識させられているのだが(司法・検察当局の権限が強大過ぎ、かつ恣意的運用も強過ぎて冤罪も多い)。日本でも地政学や国際関係論といった学問がもっと深く拡がって視野の広い人物がそれを政策に生かして国際協調を大切にしていかないと、折角アジアで唯一植民地化しなかった国なのに、時を経て「国家」に描かれたように権力者が劣化して政治(軍事)も経済も表向きはともかく実質的に完全に植民地化されてしまう危険性が強まって来ている。 (3)ギリシャと日本の財政事情は全く別物である 今日の一般の日本人には「ギリシャは財政破綻した国」であり「日本も消費税を増税しないとギリシャのように財政破綻してしまうから大変だ」という誤った認識が完全に刷り込まれて、ギリシャは財政破綻した貧しい気の毒な国と考えている人が多い(尤もそんな関心すらも無い人の方が多いが)。しかし、このプロパガンダは消費税増税を認めさせ権益を更に強化する為に財務省等がマスコミを動かし行われたものであり、全く関係もないギリシャにとっては引き合いにされて迷惑な話だろう。ギリシャは2010年にユーロ危機が叫ばれてから4年目を迎え予想通り破綻もせず今の所危機は沈静化している。ユーロ圏にとってギリシャは歴史のルーツであるという意味合いに加え、観光地・別荘地として無くてはならない存在であり、又オリーブやぶどう等の食料も豊富で、ドイツ等からの債務返済要求も当初の厳しい姿勢が徐々に緩やかなものになって来ているようである。ドイツ・フランス中心の欧州にとってギリシャは必要不可欠な国なので決して切り捨てられたりはしないだろう。 一方、貯蓄大国である日本の消費税増税の本当の目的は①消費税の輸出大企業への還付金により輸出大企業の輸出競争力を支援する事 ②法人税減税分に充てる事とが大半の目的である。この事は、これまでの消費税導入後の税収の推移等を調べれば明確に理解出来る事だ。又、「税と社会保障の一体改革」や「高齢化社会での社会保障費の増大に対処する為」という一見尤もらしい大嘘も消費税増税の決定と併せて年金制度等あらゆる社会保障制度の改悪が続く事で隠しきれなくなりつつある。アベノミクスは金融財政で無理やり株を急浮上させ少数の不動産・株式保有者は大いに潤い喜んだが、本当の成功である景気回復に必要な第3の矢の成長力・国際競争力の回復には繋がっていない。今後、経済特区で外国資本を誘致したり雇用条件を自由化して切り下げたりしても本格的な景気回復は困難である。遠からず(中国発になるか?)又々バブルが崩壊し、アベノミクスの失敗が明確になる確率は限りなく100%に近いと思う。一般国民も嘘を信じていたと皆気付く事になるだろうが、その時に後悔してももう遅いのだ。それにしても一般の日本人が同じ嘘に何回でも騙され続けるのも悪く、もう庇いようが無いと半ば呆れ半ば諦めて突き放して見ているしかない。 確かにギリシャの財政事情は悪くユーロの信認を崩しかねない存在のようだが、それとてドルの基軸通貨性を守る為に米国がゴールドマンサックスが中心になってユーロを相対的に弱体化さす為にギリシャを材料にして攻撃を仕組んだ事は知る人ぞ知る公然の事実だ。この状況を利用した日本の財務省は「消費税増税によって自らの権益を拡大する為」だけに、先進工業国で国民の貯蓄が著しく大きくリーマンショック時等も安全通貨としてドルも避難してくる程相対的にはまだ財政が健全な日本と、農業・観光国でドイツを始め他国からの借金比率の高くなりすぎた小国ギリシャでは他の条件は全く違う事を百も承知なのに「GDP対比の政府の債務比率の高さ」のみを取り出してマスコミを通じて多くの日本人の将来不安を煽り、「ギリシャのようにはなりたくないから何とか財政破綻を免れる為、辛かろうが増税に甘んじて社会保障制度を守ると共に子や孫の将来も守っていくべきだ」とマスコミを使って洗脳してしまっているのが実状だ。ギリシャの現状の一端を理解して、「日本の財政問題はギリシャとの関わりで無く独自な問題として考えるべき」という認識が必要である。本当に騙されるのもいい加減にして欲しいものだが、このまま国債増発と公的年金による株式買い支えだけで株高を演出しているとインフレリスクが高まり年金世代を中心に大きな負担増に繋がっていき弱者の脱落が消費支出の縮小、社会の不安定化に繋がっていくだろう。一部で喧伝されているが本来は遠い筈の、ヘッジファンドの狙う国債の暴落や金利急騰等の最悪の事態も視野に入りだして来るかも知れない。 2.旅行日程(2/23~3/3) 第1日目 関空~イスタンブール経由アテネへ 乗り継ぎが慌ただしかった。 第2日目 アテネからコリントス経由オリンピアへ 今回の旅はゆったりとした大型のバスでペロポネソス半島中に麓から山上まで連なるオリーブ畑とぶどう畑を見ながら走り回る旅だった。2004年のアテネオリンピックの時に作られたと舗装道路は驚く程整備されており、トンネルも片側通行で2本ずつ作られておりオリーブが美しいので快適だった。見所は1893年に掘られたコリントス運河だった(現在は小さな観光船が通れる程度)。 第3日目 オリンピア遺跡、考古学博物館見学後ギティオへ ・オリンピア遺跡はBC776年~AD392年迄約1000年間ゼウスへの奉納競技が行われた場所。遺跡中が野生の花々とオリーブ等の木々に彩られレスリングや競技場(2004年のアテネ五輪でも投擲競技が行われた)等各施設が古代そのままに残っていた。ゼウスの神殿や今も2020年の東京五輪でも聖火を採るヘラの神殿も時空を超えて厳かに存在していた。 … [more]

ギリシャ旅行(古代は神話と民主制国家の源、今は財政破綻のみ強調される国)で考えた事 ギリシャ旅行(古代は神話と民主制国家の源、今は財政破綻のみ強調される国)で考えた事

イスラエル旅行と、その後知った事

<はじめに> 今の世界情勢に多大な影響力を及ぼすイスラエルの実像を少しでも観たい、行けば何かが分かるだろうと思い、2013年2月末から10日間行って来た。旧約聖書も新約聖書も読んだ事は無いが、3つの宗教の聖地エルサレムに行きそのイロハも知りたかった。行って見ると思いがけなく美しい風景や、豊富美味な食事も良かったが、何といっても古代から現代に至る壮大な歴史・宗教の渦巻が強烈であった。旅行中やはり実力のある凄い国だと思うようになっていった。ただ他の旅行先の時は、帰国後1カ月程で旅行記も無邪気に纏める事が出来たが、イスラエルだけは何かまだ本質的な理解が足りな過ぎると感じ何も書けなかった。歴史・宗教についても知識不足だし、政治・軍事状況は錯綜しているので表面的知識だけでは不十分で、余程良く見極めないと安易に語れない問題も多く、帰国後に知識の確認や補充が必要でした。10か月経過してようやく最低限の情報の整理と自分なりの納得が出来たので現段階の到達点として纏めて、やっと辿り着いた基礎的判断材料としておきたい。 折しも、最近イスラエル中銀のフィッシャー前総裁が来年2月にFRBの副議長になるというニュースがあった。サマーズやバーナンキを指導した人らしいが、ユダヤ金融資本主義が裏で世界を支配しているという風説がまるでその通り表に現れたようなニュースだ。金融や政治についてちょっと知れば、世界は我々一般人の想像を超えたレベルで極く少数の権力者への集権化が進んでいる事が見えてくる。日本でも日銀の株主、日本の株式会社の株主構成や提携先を見ればおぼろげながら実態が分かってくるし、具体的事例を探して挙げる材料に事欠かない。又、日米欧のマスコミを支配していて僅かでもその実態への言及や批判を封じ込めようとしている。しかし、少人数の権力者集団が銀行、軍事力&検察・警察を握りながらマスコミを通じ情報統制を強化しようとしている実情を全て覆い隠す事は難しいだろう。現在米国ドル・石油本位制による単独覇権維持が難しい微妙な局面を迎え、激しい角逐が続いている事を知る人も少なくない。この問題の根底と今後の見通しを把握するのに良い考える材料を提供してくれる国がイスラエルだと思う。今回見た事・知りえた事を繋ぎ合せ、複雑極まりない世界の歴史・宗教・政治軍事状況に強い影響を与えているイスラエルが一体どんな国か、その一端でも正しく認識して、その力に圧倒されるだけでなく日本の美風・大切なものは何なのかを再確認して守っていく手掛かりにしていければ良いと考えている。 <旅程と概要> 第1日 関空→トルコ航空でイスタンブール経由テルアビブへ ・テルアビブ 空港は賑わっていた。玄関口にベン・グリオン初代首相の像がある。直ぐに空港から北へ走行したバスの両側はずっと菜の花が一面に群生していて、美しかった四万十川や宇佐神宮の川岸・指宿等の菜の花程鮮やかではないが、これだけ連綿と長く続く菜の花畑を見るのは初めてで、本当に綺麗な国に良い季節に来たものだと感激した。 第2日 テルアビブ着→アッコー→ハイファ泊 ・カイザリア テルアビブから北へ40kmの所にある紀元前後、初代ローマ皇帝アウグストゥスに従っていたユダヤのヘロデ大王が築いた街で、ここからペテロ・パウロがローマへ向かいキリスト教の布教を始めたとの事だ。美しい地中海が眩く目に飛び込んできて海岸の間近にある円形劇場跡や導水橋跡等を見ながら散策し、春風を楽しんだ。 ・アッコー  交通の要衝にあるこの街は歴史上十字軍とイスラム等の攻防・戦闘が繰り返された小高い眺望の開けた丘にある。十字軍の要塞も残っていた。現在は残存パレスチナ人が1/3居住しているが高い所はユダヤ人、低地がアラブ人と居住地が分かれているそうだ。オスマンの旧市街は世界遺産になっているが通過しただけだった。 ・ハイファ   … [more]

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イラン旅行と最近の中東情勢で感じた事

<はじめに> イランに9月26日から11日間旅して来た。「栄華を極めた古都と素朴な村を巡る古代ペルシャ・バスの旅」である。 一般的な日本人から見ると「イランは危ない国」のイメージが強い。確かに戦乱・動乱の続く中東は内戦・テロも多いだけでなく、比較的遠いし何故そういう状況になっているか分からないので敬遠するのは理解出来る。しかし、日本のマスコミ報道は欧米マスコミのキリスト教の立場を元にしてシオニズムで出来たイスラエルの影響を強く受けたプロパガンダ報道の追随が多く公平性に問題がある。マスコミ以外の情報も加味して見ると内戦の続くシリアを別にすれば、イランではこの旅行期間に本格的な戦争は起こらないしテロの危険も極小だと判断した。そして今後「イスラエル&欧米とイランの戦争が回避出来るのかどうか」を見守る上でより正確に理解する為に、自分の眼で本当のイランの現状も少し知っておきたかった。一時は米国の空爆の危険が高まったが、ロシアの介入や米国議会が慎重になった事等で回避された。そしてたまたま今回の旅行直前に、ローハニ新大統領とオバマ大統領の歴史的な電話会談があり、又11月初旬からジュネーブで開かれているイランの核開発問題協議が大詰めを迎えている。イスラエルやサウジアラビアの反対が強く協議成立迄に簡単にいく筈はないが、この成否は中東地域だけでなく世界情勢の安定に多大な影響を及ばすので協議の行方を固唾をのんで見守っています。 中東情勢についての基礎知識は、現政権の政策に批判的な元官僚の孫崎享氏(元イラン大使)や天木直人氏(元レバノン大使)の著作やメルマガ、JSRメルマガ他の情報がより公正で信頼性が高いと考えて参考にしている。又、小室直樹氏の「イスラム原論」や「アラブの逆襲」も読み直し、理解出来る範囲で(旧約聖書や新約聖書、コーラン等を読んでいないので充分な理解は難しい)それらも照らし合わせながら自分の感じた事を纏めてみた。日本の人達が国際情勢に多大な影響を及ぼすイラン問題やイスラム教を偏った情報だけでなく、少しでも公正な立場から考えイラン等イスラム圏の多くの善良な人達と友好関係を築いていけたら良いと考えています。イラン(ペルシャ)は決して侮れない実力を持ち世界をリードしてきた輝かしい歴史・文化・宗教が存在し理解を深める事でより心豊かになれると感じさせる旅でした。 <私の見たイランの現状と背景> 現在は人口7000万人余のイラン。豊か過ぎる親欧米産油国のカタール航空便でカタール経由まずは1260万人が住む首都テヘランへ。街はイラン高原の麓で海抜1500Mと高く、北に4000m級の山々が並んで聳えていて美しくホテルではエアコンを切って過ごした(空調は全館一律タイプだが)。山の向こうはカスピ海で南岸は緑も豊かで冬は雪も降るという。テヘラン市内は鉄道や地下鉄の整備が充分でなく南北のメインストリートは酷い渋滞(ガソリン不足の筈だが)で悩まされていた。今は欧米主導で日本も追随した経済制裁で、飛行機の部品が供給されず運行が不安定な為バスで国を縦断しようという企画の旅であったが、却ってよりイランの魅力に浸れる旅だったと思う。 1.宗教=イスラム教関連について ・イスラム教の教義と一般イラン人のイスラム教&現指導者層への思い 使徒モハメットが西暦610年メッカ郊外でアッラーの神の啓示を受けたとして始めたイスラム教の教義に六信(神・天使・啓典・使徒・来世・定命)五行(信仰告白・礼拝・喜捨・断食・巡礼)があるようだ。異郷・異教の私だが、トルコやエルサレム、イラン等を旅して訪れるイスラムのモスクはどれもとても好きな空間です。礼拝は他のイスラム教国では決められた通り5回行う人が多いが、イランでは3回で簡便に済ます人も多いそうで全く行わない人も3割程度らしい。今回のツアーガイドは日本に6年間暮らしたイラン人だったが、預言者モハメッド布教以前のアケメネス朝ペルシャやササン朝ペルシャ時代等古代の非イスラムの歴史・文化の豊かさを誇りにしていてイスラム一色ではないようだった。前回の大統領選挙では投票で下位だったにも拘わらず、イスラム教指導者達の推薦で強硬派のアフマディネジャドが就任したいきさつがあったらしく当時も反対のデモがあり、今回選挙では自分達の選んだローハニが新大統領に選ばれたので米国との関係が改善されそうだと皆大歓迎だったそうだ。 ・偶像崇拝禁止の意義 各地に大小いろいろなモスクがあったがテヘランは少ないと感じた。モスクの中はどこも偶像は何も無く、ただ壁面や天井は美しく床に絨毯やゴザも敷き詰められた心休まる空間でした。イスラム教の偶像崇拝禁止は、バーミヤーン遺跡(アフガニスタン)の大仏の破壊等何であんな乱暴な事をするのかと思っていたが、アッラーの神(神だがヤハウェと同一ではない)を唯一絶対の神としモハメットですら最後の使徒で最大の預言者として位置づけられていて偶像化していない。又イスラム教の信徒間は平等で王様も貧民も神の前では同列だそうで宗教指導者はいるが聖職者・僧侶階級を持たない事は、僧や神官を別格扱いしている日本人には理解しにくい所だ。それでも異教徒の私でも、モスク構内に入ると何とはなしに漂う温かさや優しさに共感や安らぎを感じて心が伸びやかになるのが嬉しい事です。 ・ハラール(食べて良いもの)とハラーム(食べてはいけないもの) テヘラン市内のバザールの中の食料店に質量とも豊富な食材が並んでいるのに驚いた。くるみ・ピスタチオ・ピーナッツがあまりに安くておいしかったので、大量に買って来てお土産にしたが、友人・知人から好評しきりでした。欧米日等の経済制裁により4年間年率30%のインフレに苦しめられているが、それでも食料自給率は100%で輸出もしていて食料問題はないとの事(但しテヘランは家賃が高く、殆どの人が仕事を2つ掛け持ちで働いていて、医師が夜タクシーの運転手をやる位との事だった)。アルコール厳禁なのでノンアルコールビール(但しレモン味等)で過ごしたが痛痒は感じなかった。ケバブも美味だが、ホテル・レストランはどこへ行ってもほぼ同じパターンのてんこ盛りでとても食べ切れなかった。豚だけでなく牙や爪がある動物が禁止されている(ハラーム)が制限は複雑で(意外に解釈は柔軟らしい)、食べて良いものはハラール表示のあるものに限定されているとの事。いずれにせよ食べ物はふんだんで果物も何でもあって皆とてもおいしいし、スイーツはアルコールが飲めないので発達していて、日本に負けず劣らずのおいしいお菓子が豊富でお土産にしたら大変喜ばれました。 ・イスラム教シーア派の国 イランは世界のイスラム人口16億人のうち約1割という少数派のシーア派が殆どの国だ。スンニ派と元々の教義に大差は無さそうだが、モハメッドの血統を継ぐイマームをいだくか、血統にとらわれないカリフを信者代表とするかの違いがある以上の事はまだ理解していないのでこれ以上触れない。イスラム教第一の聖地メッカのある多数派のスンニ派の国サウジアラビアとは関係が悪く、シリア内戦でもイスラム少数派のアラウィー派のアサド政権支持のイランと反政府軍支持のサウジアラビアとは敵対して主導権争いをしているようだ。勿論イスラエルや欧米の諜報組織も深く絡み石油利権を巡って争っているようだが、中東のより根本的な問題はパレスチナ問題だ。それにカダフィーやムバラク等独裁的政権が倒れた現在、サウジやカタール等湾岸国の王家の存在はまだ盤石だろうが微妙でに複雑に絡み合っているので正確な把握は難しいが、出来るだけ正確に知ろうとしている所です。 今回はイスラム教シーア派第2の聖地ゴムでマスアーメ廟を見学。ここはイスラム革命の発端となった地でホメイニ師もここで学んでいた人口78万人の宗教保守派の牙城。多数の参拝者と教学者達がいたが、皆ホメイニ師の怖いイメージとはほど遠くにこやかでゆったりとしていて教学者に声を掛けたらきさくで一緒に撮影に応じてくれた。ゴムを本拠にする現指導者のハーメネイ師達はローハニ以外を選びたかったようだが、52%の選挙結果には抗えなかったようだ。 2.政治&軍事関連 ・原子力 イランは医療用アンソトープの生産を行うテヘラン原子炉の稼働の為20%高濃縮ウランの自国製造を進めていると主張しているが、核保有に繋がる90%以上の高濃縮ウラン製造に繋がると警戒されてきた。そこでイランはIAEAの査察受け入れをするので経済制裁を大幅に緩和するよう主張している。それでも今回協議成立迄至らず20日に再協議となったようだ。イスラエルは自国の安全の為に核武装していて米欧も暗黙で認めている事は公然の秘密だが、中東の他の国の核武装はイスラエルが絶対に認めないので米欧・IAEAも認めない。今回イランがIAEAの査察を認めてもイスラエルが協議成立に反対なのは、核保有せずともイランの影響力の強大化を警戒しているのだろう。イスラエルは経済制裁の緩和を極小にすべく強硬に主張していて大詰めの段階だ。今回旅行時テヘランからイスファハンへバスで南に向かう道中に2か所核関連施設が遠望できる所があったが、走行中の車中からの撮影すら禁止されていました。 ・パフレヴィー時代と(ホメイニ師らの)イラン革命の見方 モハンマド・レザー・シャー・パフラヴィー(パーレビ国王)は父の開いたパハラヴィー王朝の2代目。1970年代は米国との関係は良好で最恵国待遇を得て最新鋭の戦闘機や旅客機を供与される等イラン近代化(開発独裁)を推進した。又ヒジャブの着用禁止等の女性解放も推進したが、近代化を嫌うホメイニ師らのイスラム法学者や傀儡政権への国民の反発等でアメリカ大使館人質事件等が立て続けて起こり、最終的に国王は国外追放となった。以降米国との敵対関係が続いて来ていた。今回の旅ではテヘランのサーダバード宮殿で当時のペルシャ絨毯等の宝物を見たが実に華やかであったがイランの人達は敬遠しているとの事で、近代化の時代はたった2代だけで元のイスラム教国に戻っていった事が分かった。ちなみに現在は旅行者もヒジャブ着用が義務付けられていたので妻達も滞在中ずっと着用していた。女性の社会進出はまだまだとはいえ、学生も多いテヘランで大学生の7割が女性だそうです。 3・主に古代を偲ぶ旅行内容 ・テヘラン 考古学博物館では古代ペルシャの展示物が多かったがゆっくり鑑賞する時間不足でした。宝石博物館(イラン中央銀行の地下)では歴代王家のまばゆいばかりの財宝を見学した。 ・カシャーン 人口27万人の王の道(スーサ~ペルセポリス)沿いにテヘランから南へ約3時間のオアシス都市。欧米列強の圧迫下にあったカージャール朝の宰相アミール・カビールが更迭後に暮らし暗殺された世界遺産のフィーン庭園は噴水・池が美しくまだ眼に浮かぶ。バラの花も綺麗だった(バラはイランからイギリス等に拡がったとの事)し散歩は実に快適であった。有名なカシャーンの絹の絨毯は懐具合に関わらず見ると買いたくなるのが必定なので眼を瞑ってパスしました(トルコ絨毯よりこちらが本場だそうです)。 ・イスファハン 途中ピンクの石作りの家や石畳の続く素朴なアブヤーネ村に立ち寄り。おばあさん達が、凄い田舎なのに素敵なピンクのバラ模様のスカーフをしていて似合っていて土産にしようと見たらメイド・イン・ジャパンだったのでパス。この人口僅か数百人程度と思われる田舎村の洞に数名の若者の写真が飾ってあったので何か聞くと、皆1980年~88年迄続いたイラン・イラク戦争の戦死者を祀っているとの事で驚いた。 イスファハンはテヘランから南へ40km。古くから政治・文化・交通の中心の街だったが、16世紀末はイスラムのサファヴィー朝の首都として世界の半分と言われる程栄えた都市。まず創建8世紀のの精密なタイルの美しい金曜モスクから、広大なイマーム公園を一望出来るアリパク宮殿へ。素晴らしい細工を観ながら急な階段を上り、室内楽団もいた所を更に上るとテラスからの眺望は素晴らしかった。広大なイマーム公園は夕方には家族連れが芝生の上に輪になってゆっくり歓談を楽しむ光景が実にのどかでした。人々の日本人旅行者への好意も随所で感じられました。翌日もイマーム広場をゆっくり堪能。本当に広大で周囲にはトルコ石(本当はイラン産)やタイル、ラクダの骨に書いた細密画等多種類の伝統工芸品店が立ち並び時間を忘れて見入って回り何点か購入。決済はドバイ経由であまり歓迎されなかったがクレジットカードも使えました。イマームモスクの細工は素晴らしかったし、公園を一周する馬車も楽しんだり。イギリスのものと思っていたポロ競技も発祥の地はここイスファハンだったようです。是非再訪したい所です。 ・アクダ&ヤズド ゾロアスター教の街アクダ経由ヤズドへ。高いミナレットの金曜モスクを望んだあと、アーテシュキデで拝火教神殿で1000年以上燃え続けているという神秘的な”永遠の火”を観た後、鳥葬が行われていた沈黙の塔という丘を歩いた。イスラム教は本当は異教徒に寛容で共存してきたのが事実のようです。 ・パサルガダエ パサルガダエへ向かう途中のアバルクで樹齢4500年前の糸杉の周囲を散策。糸の名前が全く似合わない巨木ですが、掘り出したものでまだ半分は埋まっている状態との事で、実に若々しく感じる樹でその姿は眼に焼きつき忘れられません。 ペルセポリスの北東87kmにあるパサルガダエ。アケメネス朝・ペルシャ帝国の最初の首都であり、紀元前546年に、キュロス2世の手によって建設が開始された場所。大昔のキュロス2世のものと伝えられる墓には強い存在感があった。。 ・ペルセポリス 史上最初の帝国と言われるアケメネス朝ペルシア帝国の都。最盛期(リビアから中央アジア迄またがる大帝国)を迎えたダレイオス1世(ダーラヤーウ1世)が建設した宮殿群。クセルクセス1世、アルタクセルクセス1世等が実際に行政をした場所と言われている。山裾に自然の岩盤を利用して作られている広大な宮殿跡だ。今回は間近な森の中の大臣達も泊ったコテージ型ホテルだったので、初日はクセルクセス門から夕日が沈みゆく日没前と、翌日は早朝から大階段、クセルクセス門、百柱の間、謁見の間、東階段、ハディーシュと全体をゆっくり歩くのと2回も訪れる事が出来て史跡を満喫した。東階段の壁に描かれた当時の多くの属国群の民族毎に特徴あるレリーフが興味深く、往時の権勢が偲ばれました。 ・シラーズ 最後が南端にあり、詩人の街と言われるシラーズ。紀元前700年頃からの街だが、13世紀以降学問の中心地となり、詩人サアディーやハーフィズ、哲学者モッサー・マドラーらを輩出し芸術や文学が花開いた。一時衰退したが1750年、ザンド朝が起こると1762年にシラーズはその都となり、カリーム・ハーンは要塞や城壁、バザールなどを改修再建し繁栄を取り戻した。今回の旅行ではローズモスクに立ち寄った。小さいモスクだが名の通りピンクのモスクで内部もステンドグラスも風情があり印象に残った。 4.カタール シラーズからドーハへ飛び、夕方まで市内観光。ラクダ市場やパー・アイランド、ゴールドスーク、スーク・ワキーフ、イスラム芸術館、カタールアルジャジーラの本社前等を慌ただしく見物した。イランの古い歴史建造物とは一転して対照的過ぎる豪華な街が続く。7人に1人は億万長者という国だけあって物凄い繁栄ぶりだったが、ここは日中39℃と暑かったのと巨大なビル群や豪華なヨットが多数等別世界なのでちょっと馴染みにくいと感じた。夜ドーハを発って関空へ。 4.最後に 今年は2月にイスラエル旅行し今回のイラン旅行と併せ、あまり知らなかった世界に首を突っ込んだ1年でした。やっとイラン旅行について纏めたので次にまだ書けなかったイスラエルについて纏めてみます。私は数年前まで政治と宗教についてあまり深く関心も関わりも持たず過ごして来たが、この2つについて皆が少し真剣に向かい合う事が必要な時期に来ていると思う。 ・政治 湾岸戦争、イラク戦争、各国のアラブの春、シリア大内戦、イラン核開発問題は根底にパレスチナ問題と深く繋がっている事が見えてきた。湾岸戦争やイラク戦争で多額の資金を出して米国を支えた日本。戦争が続き財政難に喘ぎ出した米国。日本人の生計にも大きな影響を及ぼして来た。今後更に大きな動きが予想される。目先の利害にのみ捉われず、国際情勢も踏まえてキチンと正しく見て他人任せにせず関与していく必要がある。 ・宗教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。いずれも1神教で元々の神を共有しているようだ。それら同志の骨肉の争いの歴史と論理は今後も少しずつ理解を深めていきたい。八百万の神を祀る日本、靖国神社だけを特別大切にする人達もいて有力だ。仏教も葬式主体で僧の在り方にも疑問もある。宗教は無宗教も含め価値観の根底にあるもので、狭い道徳を一律に押し付けるのでなく、各個人が比較宗教学的に見比べて考えていく必要がある。 権力を握っている人達の専横で全てが決められるのでない、空気を読んで従うだけで無く、しっかりした考え方で草の根で繋がっていく時代にしていきたいものだとつくづく感じています。… [more]

イラン旅行と最近の中東情勢で感じた事 イラン旅行と最近の中東情勢で感じた事

ドルの弱まる時代。どう対応する?

<はじめに> 新聞・TVでも、アメリカの「債務上限問題」を報道したので、一般の日本国民もやっと「アメリカは大丈夫なの?」と感じ始めた。殆ど多くの人が「それでもアメリカは大丈夫」「債務上限額はこれまでもずっと何十回も上げられてきたので今度も問題ない」と考えそこで思考を停止し、これまで通りにその枠内で行動する。だが米国単独覇権が終わりに近づいていてサインが色々と出だしている事には無頓着だ。今の国際金融制度に代替する制度が明確化するにはまだまだ時間を要するが、近い将来大きな変革が起こる歴史的時代を迎えている事は確かだと思う。この事を指摘する著作・報道も少しずつ増えて来たが、今回はまず「オバマ発金融危機は必ず起きる」山広恒夫(ブルームバーグ・ワシントン支局)著に沿ってその骨格を主体に纏めて見た。 <今、草の根の日本人が認識すべき事> 米国ドル基軸体制に絡めとられた日本は米国の植民地同然になりつつある。どう対応すれば良いのか名案は無いが、まずは現状を的確に把握する事から始め自分の出来る範囲で対抗するしか無い。   1.大きな流れの基本認識 米国は「建国以来の第1合衆国銀行が創設された18世紀末を起点とする経済発展の長期波動の転換点に達して来ている」との認識が必要。 ①1971年・ニクソンショック=金ドルの交換停止でドルが現実の価値を失い、米国は基軸通貨国としての矜持をホントは40年余前で既に失っている。 ②1985年・プラザ合意。この時も日本を犠牲にして危機を脱出した。日本は失われた10年の時代に突入し、以来ジリ貧に。 ③2008年・リーマンショック(住宅金融のバブル化とその破裂)は「100年に1度」でもなければ、既に克服されたものでもなく、今後のオバマ発の本格的な金融危機の序曲に過ぎない事。 2.QE(FRBのニューマネー供給)の現状 オバマが推進したリーマンショック対策の金融規制改革法は「偽りの金融改革」だった。オバマは「ヘッジファンドのお友達」。FRBも大量のマネーを投入して金融機関を救済した。金融機関はただ同然で資金を調達して利益を上げ新たなバブルのリスクを世界中にまき散らしただけで、本質的な問題は何も解決していない。FRBや金融当局者は「精神の無い専門人」。物価指数やGDPの伸びが下方に触れるとデフレ恐怖症にかかり、ガソリン価格・教育費・医療費・交通費・食品・自動車&家屋の修理費等の大変なインフレを実感出来ず、一般の米国民や他国への配慮は全く無い人達です。 ①QE1(09.3~6ヶ月間)→FRBが米国債3000億ドル購入&住宅ローン担保証券MBSを1兆2500億ドル他、合計1兆7250ドルで金融機関を救済しリーマン危機をひとまず先送りし切り抜けた。 ②QE2(10.11月~11・6月まで)→FRBは6000億ドル購入&MBS償還金3000ドル購入。米国では豪華客船クイーン・エリザベス2世号だと大歓迎されたが、R.マンデルコロンビア大教授は本当は「世界経済へのテロ行為である」と言及した。バーナンキは「実態は米国の金融システム=ウォール街を力強くするウォール街限定の振興券」である事を認めていた。 ③QE3(12.9月~)→月額400億ドル購入。雇用市場が改善する迄。既に開始後1年以上経過しており、縮小観測もあったが縮小出来ず。取りあえず当面半年程度の延期と見る向きが多い状況。中国は米国債の持ち分を縮小する傾向である。サウジアラビアですらシリア空爆問題を契機に米国と距離を置き始めたようだ。もうどこも買い支えるのが難しくなりつつある米国債を日本だけがアベノミクスで買い増ししている異常な事態になっている。これは「基軸通貨の緩やかな減価政策」であり、21世紀の「米国版徳政令」であるといえる。この事を「長期的安定に沿ったインフレ」等と言って誤魔化して債務を帳消しにする構えでいる。しかも、この過剰流動性が世界経済を混乱させて来たし、今後も米国以外の国が混乱の影響を背負う事になるのであるが、米国は他国の痛み等我関せずの構え。 ニューマネーの供給だけで「最大限の雇用」を確保する等は夢物語に過ぎない。金融関係の雇用者が少し増え報酬が上がっても、利益至上主義に凝り固まった経営者は労働者の削減と賃金引き下げしか考えない。マンデル教授も「基軸通貨であるドル相場の下落は海外のドル保有者に税金を支払わせる事に繋がる」と警告している。 3.今後の展開予測の一例と日本の一般国民の対策 ワシントンのシンクタンクは債務上限問題は2014年2月7日まで引き上げられ今回はデフォルトを回避したが、この「非常手段は長続きしないだろう」。債務上限の新たな引き上げ期限が到来する時の債務上限は約6000億ドル増の17兆3000億ドルと予測。多額の税還付を行う時期と重なることもあり、次回の引き上げ期限は2014年3月頃迄しか延長出来ないのではないかとも言われている。ここを乗り越えるとフレディマックからの配当金の支払いも得て数4半期息がつけるとしているようだ。今後の展開について正しい情報を常に把握していく必要がある。 日本でも、金融当局に近い立場の人や既に優良な株式を保有している人達、それに自己資金を金融資産と投資資金とに厳格に区分管理出来てプロ顔負けの実力のある人はともかく、それ以外の一般人は日本政府&金融機関からのあの手この手の株式&債券購入への制度的誘いに負けず市場と距離を置き(今からの市場参入は、当面はまだ大丈夫でも、いずれバブル崩壊時に逃げ遅れて鴨葱の類になる公算が強い)価値観を問い直し物を大切にして、まだまだ多い無駄を省き、信頼出来る人達と連携して籠城するしかないだろうと考えています。… [more]

ドルの弱まる時代。どう対応する? ドルの弱まる時代。どう対応する?

反消費税増税カテゴリについて

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国の財政について、財務省・マスコミの嘘・隠蔽は目に余る。

国内には借金が約1000兆円と言い、海外には財政の健全性を謳い日本国債購入を勧める。それより菅・野田政権で31兆円も海外に投融資しているのだ。

国内には資産を抜きにした論議をしている。金融資産も多いし、未だに対外資産保有はトップを中国と競っている。日銀が日銀券を増やさない為欧米対比で為替レートが円高になるのは当たり前である。このデフレ下で消費税を増税すれば、価格転嫁出来ない中小企業の倒産も増加して失業者も増えてしまう。

財務省を許せないのは「税と社会保障の一体改革」等と全くの嘘・カムフラージュを押し通した事だ。社会保障は使ってしまったり、米国関連債券の減価で国民年金にどれ位穴を空けているかまだはっきりしない事が最大の問題だ。

少なくとも8%や10%程度では輸出戻し税で輸出企業の補填でほぼ使いきってしまい、到底社会保障に回せる筈が無い。これからも社会保障費の抑制の動きが強まり、社会保障の水準を守るには、すぐ近い将来に17%だ、20%だと言い出す事は必至である。何よりも国家公務員の天下りは目に余る。国民がどれ程窮乏しようがお構いなしで増税し、天下り利権は一銭たりと減らさない姿勢には驚くしかない。これ程国益で無い、剥きだしで私益を守る為の集団とは思いもしなかった私の不明を恥じるしかない。

本当に天下り利権削減無き消費税増税を凍結する為、「国民の生活が第一」等の真に消費税増税に反対する議員を多数にする為に声を挙げていく。



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今では米国の有力な経済学者の殆どが、積極財政論者なのだ!(その3前半)

2013年01月19日
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(その2)第1章の要約の続き
「日本を滅ぼす消費税増税 」菊池英博氏著から抜粋。
現在の日本では、財務省&マスコミの嘘に騙されて「均衡財政が善」 で「公共投資は悪」と考えてしまう人が本当に多い。
これを正すのは大変だが、丁寧に論述を辿るしかないと思い各章毎に要約して公開する事とした。この見解の正しさを普及させる事が現下のデフレからの脱却、大不況の克服に資すると考えています。勿論著書を購読して理解してくれるのが一番良いと思います。

第2章 デフレ発生から15年、日本経済を検証する
-政治家と財務省が採った政策の失敗-

日本に蔓延する空言・虚言は続く

この章は1991年のソビエト崩壊後、米国の戦略の標的になった日本経済に起こった顕著な出来ごとを政策により明確に説明してくれています。

 ・デフレの原点は橋本財政改革
 現在の日本のデフレは1998年に始まり15年継続した長期デフレである。「1997年度から消費税を3%から5%に引き上げ、所得税の特別減税を廃止した事」と同時に「財政支出を削減し、5年後に財政赤字幅を名目GDPno3%以内にする事を法制化した増税緊縮財政で国民から13兆円の資金を奪いバブル崩壊からの復活を打ち砕いた。

・金融危機による信用収縮でデフレが始まる
→ 1992年から自己比率規制(BIS規制)を守る事を義務付け「8%以上の自己資本」を要求。大手銀行19行は株価下落に伴う自己資本減額分の12.5倍50兆円の貸出を回収しなければならなくなり、1年間に46兆円を回収し大幅な信用収縮を惹起した。
三洋証券・山一証券・北海道拓殖銀行等が破綻。

財務省は「粗債務」で財政危機と誤認
→一国の債務には「粗債務=借入総額」と「純債務=ネットの債務」があるが 国際的には両方の記載がある。しかし財務省がマスコミに「粗債務」しか発表しないので多くの国民は「政府債務と言えば粗債務」しかない」と思わせている。しかし
財務省がマスコミに「粗債務」しか発表しないので多くの国民は「政府債務と言えば粗債務」しかない」と思わせている。1994年に、日本の「粗債務」が80%の時、米国71%、ユーロ地域69%に比べ高かった。しかし「純債務」では日本が20%、米国54%、ユーロ地域43%より遥かに低い健全財政であった。財務省は海外向けには国債の95%を日本国民が保有しているから財政危機では無いと宣伝しており明らかに2枚舌である。「日本の財政は純債務で把握すべき。純債務で見れば日本は財政危機で無い」
→リーマンショック以降で見ても日本は世界一の純債権国なのでドルとユーロに対して円高が進んでいるのです。
→1997年3月、ゴア副大統領が来日、橋本首相に「日本は財政危機ではない。内需抑制策を取るので無く、内需拡大策を取るべき」と進言したが受け入れなかったのが、その後の米国証券会社の日本売りに繋がった。

小渕首相が危機を克服
→1998年7月参議院選挙で自民党惨敗。橋本退陣後、小渕首相は財政構造改革法を凍結し、同年10月の「金融安定化60兆円」金融機能早期健全化法案で金融恐慌を鎮静化した(菊池氏提案、亀井静香議員等自民党の議員連盟の議員立法によったもので財務省は反対だった)。株式の含み益喪失の大手行に公的資金を投入したのだ。1999年の大型補正予算で翌年税収は50.7兆円に回復した。

デフレを法制化した小泉構造改革
→小泉構造改革のスローガン「構造改革なくして成長なし」「公共投資は経済成長に寄与しない」は1980年代のレーガンの新自由主義による政治理念と経済政策である。主なデフレ政策は「財政は引き締め・金融は緩和」。「基礎的財政収支均衡策」「労働基準法改定で実質的に労働者の解雇自由」「時価会計デフレ」であった。

均衡財政政策の導入で財政デフレに
→「基礎的財政収支」は「税収・税外収入の範囲内しか支出しない」という均衡財政の考え方。1980年代後半レーガン、父ブッシュの「数値目標と期限付き均衡財政政策」は共に失敗だったのに。アルゼンチンを国家破綻させた政策でもある。
→日銀に金融緩和させ円安誘導し、輸出バブルを起こす政策だった。輸出企業と内需中心企業、大企業と中小企業、都市と地方、個人の貧富等あらゆる格差が拡大し、日本経済全体が弱体化する懸念が的中。2009年度税収は38.7兆円まで激減。国債の金額の方が多くなり、まさに「第二の敗戦」を迎えた。

何故均衡財政を導入したのか
→財務省が橋本財政改革の失敗を無かった事にしてもう一度均衡財政を法制化しようとした。「財政支出を削減すれば、財政赤字が縮小する(昭和恐慌の浜口雄幸首相)」という均衡財政の考え方が今でも財務省に残っている。この財務省の悲願こそ日本経済の体質に合わない間違った政策なのだ。昭和恐慌も米国大恐慌ももたらした政策である。
→子ブッシュが「日本の預貯金を日本に使わせず、余ったカネを米国債や対外投資に向けさせようとした」もの。
→公共投資と社会保障費を削減し、新規国債発行を抑え、金融緩和でデフレ解消が出来ると考えた。
結果2000年からの10年間で120兆円のカネを絞りだし、米国債を80兆円買っていると見られる。

3度目の基礎的財政均衡策が進行中
→鳩山首相はデフレ解消を優先しようとした。
→菅が2010年6月「2020年までに基礎的財政収支を均衡させる」と決定。野田も継承。消費税増税法案も議決されデフレが進行する。3度目が成功する可能性は皆無。


 



今では米国の有力な経済学者の殆どが、積極財政論者なのだ!(その2)

2013年01月08日
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(その1)はじめにの要約の続き
「日本を滅ぼす消費税増税 」菊池英博氏著から抜粋。
一度読んで、要点を抜粋しようと思ったが、現在の日本では均衡財政が善 で公共投資は悪と考えてしまう人が多く、これを正そうと思うと丁寧に論述を辿るのが良いと気付き各章毎に公開する事とした。購読してくれるのが一番良い。

第1章 日本は既に平成恐慌である
-均衡財政目標で経済が失速-

日本に蔓延する空言・虚言の代表例
デフレは人口の減少が原因である。
→「生産人口が減っている」というが、「ヒトが余って就職出来ないのが現状」
→「就職できても非正規社員が多く低賃金で喘いでいる」
人口減少には投資を増やして生産性を向上させれば全く問題ないのだ。
→ドイツは先進10カ国の中で最も人口増加率が低いが日本より遥かに高い成長率を示している。
→経済が成長すれば人口も増える。第2次大戦後のフランスはド・ゴール大統領が政治と社会を安定させ第2子から子供手当を支給し子供を社会的に共同して育てるという理念を国民に植え付けてきた。

新自由主義をもっと徹底させる構造改革が必要である。
→新自由主義で国民をこれだけ不幸にしながら、更に国民の富を収奪する意見である。
新自由主義の根幹には、人間性の否定があり、ヒトをモノ・カネと同一に扱い、必要な時に「安く買い」、いらなくなったら「捨てる」。
→新自由主義が日本人の心を砕いている。

公共投資は経済成長にプラスにならない。
→「小泉構造改革」の時に小泉・竹中が主張しマスコミが宣伝した文言。これが日本をデフレに追い込んだ。勿論無駄な公共投資は止めるべきだが。デフレ脱却の為、政府がリスクを取って投資をし、民間には投資減税の恩典を与えて民間投資を誘発するしかない。
新自由主義で米国がデフレにならなかったのは、軍事費という公共投資のお陰。
→「生活に直結した公共投資」でデフレを解消する方向を示し民間投資を誘発する政策が必要。デフレ解消は政府投資が決め手。

日本は財政危機である。
「日本は世界最大の対外純債権国」であり、円は世界中でもっとも心配のない通貨であると思われているから円高が進んだのだ。
財務省がいう日本の債務は「粗債務」(借入総額)であって、政府が保有している金融資産を「粗債務」から控除した「純債務」でない。
→海外では日本が財政危機だと思っている国はどこにもない。「対外純資産が250兆円もある世界一の金持ち国なのに、自分の国の為に自分の国の資産を使わないでデフレ政策を採っているから税収が減っているのだ」(愚かな国ではないか!)。
日本は財政危機ではなく、政策危機である」と思っているのだ。

緊縮財政を徹底すれば財政再建になる。
→「デフレ継続・成長放棄の増税」派=財務省・日本銀行・大企業・財界・連合。「デフレだと金利が低いので国債発行コストは低く抑えられる。デフレは継続した方がいい」という論拠。この派を支えている考えが新自由主義。これだと第2弾、第3弾の消費税増税が必要になる敗北思想だ。

・消費税を30%まで引き上げるのか!?これ以上の成長は出来ないから消費税を上げる。消費税増税以外に財源はない!?
→消費税増税→デフレ一段と進み税収不足→さらに消費税増税を繰り返す事になる。
→DEMIOSモデルでは消費税増税5%で名目GDPが5年で25兆~30兆円縮小する。日本の経済構造が破綻してしまう。
→日本が消費税導入した1989年から2010年までの21年間で消費税収入の累計は224兆円。法人税は減税(最高税率を40%から30%に引き下げ)とデフレ政策で208兆円の減収。2012年4月には法人税率30%から25.5%への引き下げを実行し更に1兆円減収に。これが「社会保障と税の一体化」の実態である。
→庶民から取り上げた消費税が大企業の利益となる仕組みなのだ。企業間格差、国民の所得格差も拡大する。こんなシステムでは財政再建等到底不可能である。

1973年、1979年の2度の石油危機後の安定成長は積極財政で実現した。余剰の預貯金を建設国債発行で社会的インフラの整備拡充に投資したて経済発展して来たのだ。日本の経済成長は「官民ベストミックス」といわれる「政府投資が民間投資を補完する」経済体質によってなされて来たのだ。しかし橋本財政改革で増税&緊縮財政で一気にマイナスに。小渕首相の景気対策で一旦回復したが、2001年からの小泉構造改革と2002年の「基礎的財政収支均衡策」で失速、デフレが深刻に、税収が激減したのだ。

過去10年間で家計部門の金融資産は114兆円も増加。国内で使用しなかった6兆円と併せ120兆円が海外に流出したのだ。つまり国内ではデフレ政策で資金を使わせないようにし、その7割に当たる約80兆円を米国債購入に充てた。これが小泉構造改革の真の目標だったのではないか。

第2次世界大戦後は「デフレは悪魔の仕業であり、絶対に引き起こしてはならない、人類はデフレと訣別する」ということが共通認識。日本の失業率は1997年3%台、1998年4.1%以降4~5%台で推移。ドイツは再就職後の賃金が半分以下なら失業継続と見做すがこの基準なら10%位だろう。非正規社員は200万円未満だから家庭を持てず子育てが出来ない。一方2010年の大企業の内部留保は総額461兆円。トヨタは2005年から2011年度の6年間で内部留保が9000億円増加。人件費は220億円減少

<参考>
国民の可処分所得の減少「大増税後の世帯収入別負担予測」
消費税増税前に毎年上がる厚生年金保険料、2012年給与控除の上限設定、子供手当から新児童手当への変更、復興増税による所得税増税が先行する。消費税増税を加えると サラリーマン平均412万円で合計負担率6.4%、金額で26万円の増税だ。
1997年の緊縮増税財政の時は政府が市場から13兆円吸い上げたが、今回はそれを上回る14兆円を超える負担増となる大緊縮財政となり、経済恐慌を引き起こすだろう。

日本は既に平成恐慌
近代資本主義に入ってからの長期デフレは、1925年に始まって1932年に終息した昭和のデフレと1929年10月に始まって1933年に終わったアメリカ大恐慌のデフレである。
15年経過した現在のデフレは20世紀以降の最長記録を更新中。累積デフレ率は21%に達している。昭和恐慌が始まったと同じ時点に来ているのだ。

官民共に投資不足、マイナス成長の原因
現在の日本では、政府投資(公共投資)が小泉構造改革以来ずっと減少。民間も政府も投資が回収超過となり、名目GDPを引き下げる要因となっている。・・・経済活動の根幹は投資であり、日本経済停滞の原因はこの投資不足である。政府投資は2007年から回収超過、民主党政権になって増幅。民間投資は2009年のリーマン・ショックによって輸出関連企業が激減。

デフレは金融緩和で解消出来る。
「循環型デフレ」であれば金利を下げ、金融の量的緩和をすれば投資需要が出て来て景気が回復する。しかし現在の日本は16年目のデフレであり、日銀が金利をゼロにして量的にも緩和しているのにデフレは解消せず。この間緩和した日銀資金は外資を中心とする証券筋が借り入れて、NY市場で株式や商品市場の投機活動に使われたのである。大きな需要不足と経済力の弱体化(供給能力の減退)が原因である事を示している。日本のデフレはまさに恐慌型であり金融緩和だけで解消は出来ないのだ。

(その3)恐慌型デフレを解消するにはどうしたら良いかに続く。



今では米国の有力な経済学者の殆どが、積極財政論者なのだ!(その1)

2013年01月05日
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「正しい積極財政」の理解者・支持者を増やそう

菊池英博氏藤井聡教授の論説を理解して広めよう-
 この2人のUstは必見です(クリックするとご覧頂けます)。 

菊池英博氏の「日本を滅ぼす消費税増税」の論説を理解する事が大切です。概要は以下の通り。

1.はじめに

2012.8月に成立した消費税増税法案は、法案の附則に「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」という、いわゆる「景気条項」が明記されている事を知っている人は本当に少ない。また「2020年までに年平均経済成長率は、名目で3%、実質で2%程度を目指す」という数値目標も記載されているのだ。

私も含めた反対派の人達は「デフレ解消を優先して後述の政策を採れば税収が増加し、消費税増税なしで社会保障費も賄えるのではないか」 財務省を始め賛成している学者、マスコミが間違っている。歴史的にも証明されていると考えている。

「日本は世界一財源の豊富な国であり、財政危機は壮大な虚構であり、日本は政策危機である」「15年も継続している日本のデフレは、政府財務省が意図的に継続しているデフレ政策が主因、だから税収が増えない」「デフレ政策を転換し、経済を成長路線に戻せば、消費税を増税しなくても、高齢化社会を乗り切れる」

日本経済は既に恐慌型のデフレに陥っており、既に平成恐慌と言える段階に達している。これを克服するには、昭和恐慌や、米国大恐慌の教訓に従って、財政主導・金融フォローの経済政策を取り入れる事が必要。この具体的政策を提示する。

次の4点が大切。
①デフレによる物価下落は大資本・富裕層・官僚等の強者は利得があり継続したいもの。一方若者の就職難・中堅層の生活苦・高齢者の悲惨な状況が強まっていく。デフレは危険極まりない経済社会現象なので、デフレ解消に立ち上がる必要がある。

「デフレは人口減少が原因だから仕方がない」とか「財源がないから財政支出が出来ない」という世上の意見は全て間違っている。

今の日本のデフレは恐慌型デフレであり、金融緩和だけでは解消しない。

④日本の輸出産業は大きな転換期を迎えている。海外の消費者への販売は海外生産に委ね、国内は高付加価値製品生産の為の機械と技術の開発に集中すべき。減少する国内雇用は、内需の拡大、内需関連産業の育成強化、新エネルギーの開発といった具体的政策により吸収すべき。

高橋是清、池田勇人、田中角栄といった政治力を備えた政治家が閉塞感に満ちた日本を救うのだが…
安部政権になって金融緩和を打ち出し、財政出動も言及しだしている事が好感を持って受け止められている事は当然である。金融緩和だけに終わらせず、不要な箱物だけでないインフラ整備・更新等の大規模な財政出動が必須である。 それをしながら一時的に景気が好転したからと言って消費税増税を強行したら又恐慌が深くなっていくだけなのだ。この事を諦めずに言い続けます(続く)。



消費税増税法案の問題点(その4最終)

2012年10月11日
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「消費税増税 乱 は終わらない」2012年 植草一秀×斎藤貴男」対談を取り上げる>の続き
 (その4最終)

   <恐るべし、消費税増税後の世界。だが潰すチャンスはまだある>

これまで見てきたように、「社会保障拡充どころか社会保障削減を秘めた消費税増税」をすると、日本社会の変貌が決定的になる。実態はもう無くなっているが意識面ではまだ残る「平等社会幻想」にトドメを刺す。あとに控えるTPP参加で完全に米国型弱肉強食社会入りになってしまうのだ。
次の総選挙でシロアリ退治無き消費税増税に反対する議員が過半数になれば、消費税増税凍結法案でストップがかけられるのだ。この事を諦めている人達に全力で働きかけを続ける必要がある。

①「消費税増税なし」の時の財源調達は?
富裕税の導入、所得税の累進強化、法人税の適正化、大地主への固定資産税の拡充、相続税(課税最低金額の引き下げでない)の拡充、証券取引税の減税延長せず、が必要。現状は富裕層は税金の治外法権にされている実態がある。応能負担でいくべき
納税者番号制を入れるなら最低限総合課税にする議論が無ければおかしい。現状では不公正税制を正す意図等全く無いと言って良い。消費税を基幹税にする事は弱い者いじめを社会の規範にするという事だ。能力が無い所に課税して、無理やり頑張らせて払わせるか資産を売り飛ばせる強盗のような税制。応益原則だ。

②サラリーマン税制は人々から「思考」する事を奪った
この制度に一番最初に手を付けないとダメ。この制度があるせいか、日本国民が税の使われ方に無関心で、まともな議論が少ない。しかし非正規雇用が増えると、登録型の派遣労働者は源泉徴収されるが年末調整までやって貰えない人が大半?交通費自腹の人は確定申告で取り戻せる。知らないで取られ損の人も。せめて確定申告をする習慣を身に付けると良いのだが…
サラリーマンもいい加減「非正規より恵まれているから従順にしてしがみつくだけの姿勢から脱皮」して、次の世代は二極化で下層になる現実を認識し、対抗手段を講じる事位は出来ないのだろうか?

③「権力が恐れるものは国民の教育、健康、そして自信だ」←マイケル・ムーア
今日本の権力者=官僚・それに連なる勢力は「しまった、マニュフェスト選挙等唱えるので無かった」と反省している?
支配者の本音は、常に「国民が無知で、従順で、反逆しない存在」である事を願い誘導する。しかし知識人も大半は保身の為、国民主権の実現よりは大資本の利権維持に動いてしまう。極一部だが、最近は「国民主権」等無くしてしまえ!という暴論まで出ている。

④何故こうも組織に従順なのか?
昔は大人しくしていれば社宅は安く、退職金もいいし、会社に一生面倒見て貰えた。今はいつ首になるか分からず福利厚生も無いのに、何故こんなに忠実なのか?企業の経営革新の本質は労働コストのカット、労働者への分配引き下げ。一億総中流から急激に強烈な格差の時代に移行している現実の認識が足りない。連合は大企業の利益を代弁する存在である事を隠そうともしなくなった。民主党議員はもう何の大義も無くなった連合の支援を得ても落選する。かっての連合参加の中間層・知識層は今いずこ?かっては大銀行は21あったが3行になる時代で会社人間だけでは自分の生活を守れないのだが。

⑤ 小泉・竹中政治の犠牲者達の哀れさ
小泉・竹中政治により、労働市場の規制緩和を進め、中間層が消滅して圧倒的多数の低所得層が生み出された。民主党も元々が構造改革を支持して来たのでマニュフェストでの小泉攻撃も結局茶番、こんな嘘つきに騙されるのがおかしい。
それにしても何故犠牲者が改革を支持するのだろうか?低所得の人が自由競争とか「平気で富を強奪する為頑張った極く一部の人だけが報われる社会」を応援する珍妙な現象も、生活保護の不正受給をする悪い奴らのせいで生活が苦しいのだと貧困層の対立を煽り、自己責任・自助・共助だとして公助を批判する方向に誘導。このセーフティーネット批判層を中韓批判のナショナリズム感情に誘導しているのだ。

⑥「お上と民の精神構造」
未だに政治に関する事は「見ざる・聞かざる・言わざる」の伝統的精神風土がDNAで、現在まで引き継がれている。この風土の中で市民革命は難しい。明治維新はヨーロッパの金融資本が一部の不満士族を動員した変化、戦後民主化は外からGHQが来てやったもので国民の精神構造は変わらなかった。
この中で政治家は見事に2つに分けられる。ひたすら損得を考える人と、損得を離れて日本の為、国民の為を考える人だ。まぁ今は前者が9割の現状だが。自立したバランスの取れた改革を本格的に始める必要がある。

⑦民自公にどう対抗するか
本当のチェンジが必要だ。2008年のキムタクのチェンジは偽装チェンジ政党・みんなの党への誘導番組だった。この党は対米隷属と小沢氏とは手を組まないで政権交代を阻止しようとしたもの。今度の日本維新の会は反民自公を「国民の生活が第一」等の自主勢力に集中させない為の党。小沢氏、鳩山氏が米・官・業による日本支配打破をどこまで考えているか分からないところもあるが。
反消費税増税・脱原発・反TPP・でどこまで大同団結出来るのか。

⑧オリーブの木と言われる選挙協力
自分達は99%だという運動にするには、社会主義アレルギーの強い日本では社民党や共産党は党名変更が必要。無理であれば統一会派づくりのコーディネーターが必要だ。アメリカはWASP以外の人達は元々中枢から排除されている意識は強いが日本は単一性の高い国なので事情が違った。しかし今は非正規が増え社畜は減ったがセーフティーネットのレベルが低く、今いるところから落ちれば谷底まで行ってしまう恐れがあるので躊躇する人も多いのが問題だ。

⑨反原発と反消費税増税の違い
原発反対は市民の生活、生命、健康を守る深刻で切実な問題だから纏まり易い。消費税問題は深刻な問題なのだが政治色が強いので躊躇してしまう人が多いし、TVで情報操作されていて普通の人には判断が付きにくい。
安住元財務相は「貯蓄超過=経常収支の黒字」の意味すら知らなかった。まともに知らないで財務省のいいなりで言っていただけ。 増税論の根拠が曖昧過ぎる。価格転嫁出来ない零細事業者にとっては実質的に直接事業税のようなものだ。この構造的欠陥問題を知らないので本当は反対であるという潜在的な反対者が表に出て来ないのだ。ましてTPPの孕む恐ろしさになるともっと分からない人だらけの現状で政府は参加に向けて潜行している。

⑩NHK問題。皆様のNHKどころか政治権力のNHKが本当だ
メディアが何も言わないのはアメリカがバックにある電通の存在が大きい。NHKは内閣の人事権の下に置かれ、予算等は総務省と国会の承認を得れば良い。皆様から受信料をとっていながら皆様の影響力はゼロに等しい偏向報道の極みにある。中には報道人として良識のある人もいるが、政治の問題は政治部に完全にコントロールされている。政府から公的資金投入を狙い「御用番組」作りに必死である。新聞社にしろ出版社にしろCIAの関与・コントロールがあっても不思議ではない報道に終始している。

⑪IT社会と監視社会
納税者番号制や、防犯カメラの性能アップ(顔認識機能等)、Nシステム、国民背番号制、携帯のGPS、国交省のITS(Intelligent Transportation Society)プロジェクト等。警察の公安と、公安調査庁と、陸上自衛隊の情報保全隊等で管理するのだろうか。フリーパスの人と、何かと従順で無い人を危険人物扱いする人に二分するのか。

⑫-1 財政危機捏造の証拠
財務省の本音は、財政赤字が拡大すると官僚利権に切り込まれる事態を恐れて、先回りして増税という事だ。増税法案が決まった途端に10年で200兆円の公共事業を実施するという国土強靭化法案が出て来た事は本当の財政難で無い証拠だ。
財務省は4K[高校授業料無償化」「子供手当」「高速道路料金の無料化」「農家の戸別所得補償」等、国から市民に直接給付される財政資金を嫌った。ガラス張りで財政資金をかすめ取る事が出来ない為 、利権にならないからである。

⑫ー2 プログラム支出と裁量支出
アメリカは裁量支出は単年度編成だが、社会保障等のプログラム支出は年度を超えて毎年度の予算と関係せず執行出来る。公債特例法案の成立等無くても社会保障支給は可能なのだ。日本では社会保障給付や失業保険給付はガラス張りでさじ加減が振るえず利権に出来ないので切る対象にされやすい。

⑬恐るべき消費税増税後の世界
自営業とか零細企業で増税分を転嫁出来ないところが潰れてしまう。自営業で老後の蓄えが充分出来なかった人達も少なくない。従業員がいる場合失業も増える。
他方、TPPに参加すると平成の農地改革等で株式会社の農地取得が認められる事になる。条件のいい農地は株式会社に買われるしかない。漁業もしかり。農民・漁民は派遣労働者化していく。公務員もニューパブリックマネジメントで、どんどん株式会社みたいな人事制度になっていて、公務の派遣化も急速に進んでいる。もうはっきりとエリートとその他大勢の社会が出来あがってしまう。職業の自由は保障されていても、実際のメニューは2つしかないというふうにしかなりようが無い。

⑭支配者はエネルギーと食料・武器の独占を狙う
TPP参加は日本を本格的な米国の植民地化してしまうものだ。ごく少数の巨大資本が圧倒的な力を持ち、人々が生きていく上で必要なものを握ってしまう 。彼らは、日本が再生エネルギーに走る事を命懸けで止めなきゃならない。鉱物資源やウランに依存させねばならないのだ。太陽光・風力・水力・地熱技術は本気で取り組めば進化する可能性が高いのだが…
遺伝子組み換えの「自殺する種子」を独占管理し、知的所有権として保護する。それTPPの枠組みに入れ食料を独占管理する。
日本の風景、生活様式、文化、伝統は農業と結びついているのだが…労働者は消耗品・部品となり奴隷になりかねない。
マスコミに対抗しても機銃掃射と竹槍だ。マスコミがしっぽを振って軽減税率にして貰えば彼らは政商そのものだ。特にNHKの運営を政治権力から切り離す必要がある。

⑮第3極への誘導
今は意図的な「第三極」への誘導がなされている。かって新進党が消費税増税に反対していたが、1996年の10月の選挙前の夏に民主党が誕生して票が割れ、自民党勝利→消費税増税となった経緯もあるのだ。巨額の資金が必要な松下政経塾やみんなの党、維新の会の宣伝のスポンサーは誰なのだろうか。

<最後に>
今回の対談本で米国・官僚・マスコミの計画的な揺るぎない国民の財産の纂脱策略が明らかになり、深くその冷酷さを認識出来た。客観情勢は自立志向の人達にとっては厳しいが、それだけの理念と覚悟を持った人達の決起の力は強力だ。今後相手の繰り出す汚ない手も乗り越え、戦い続ける局面が続く。日本民族の普通の国民の思いがけない力が見れる可能性もあり、周囲に働きかけ乍ら前進を続けていくだけです。 

以上



消費税増税法案の問題点(その3)

2012年10月06日
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その2
「消費税増税 乱 は終わらない」2012年 植草一秀×斎藤貴男」対談を取り上げる>の続き

まず今後、給付付き税額控除や軽減税率をやる場合、マイナンバー(社会保障・税番号制度)が必要と言われるが本当か。問題点は何かを考える。普通に公平な税制の実現を考えれば本来は必要な制度だ。しかし日本の財務省や霞が関官僚機構が一体の、「国民の生活が第一」等はもっての外、「国権が第一に決まっているだろう」というDNAが強烈に残っている現状で導入するには悪用の危険が大きく反対だ、という論点には残念ながら確かにそうだと賛成せざるを得ない。官僚機構が至るところで法の番人であるべき最高裁事務総局迄腐っているからだ。

検察が捜査報告書を捏造する国
植草氏が消費税増税反対等で痴漢冤罪を仕組んだり、小沢一郎議員裁判で特捜検察が捜査報告書を捏造したり…検察・警察に続いて最高裁迄裏金疑惑で訴訟を起こされたり…霞が関官僚機構のやりたい放題はマスコミを懐柔してグルになっているから始末が悪い。自分達既得権益者の仲間は何をしても見逃され、不当な権益を追及したり構造を正そうとする人を冤罪で罰しようとする実態が次々と明らかになって来ている。これでは個人の資産に関する全ての情報が何に悪用されるか本当に分かったものではない。

国家による人権侵害の歴史
「明治 6年の政変」の真相も毛利敏彦氏の3部作によると長州閥の金権腐敗の問題があり、司法卿江藤新平はそれを追及する先頭に立っていた。大久保が国家の権力を重視、江藤は人民の権利を重視していた。行政権・司法権・裁判権・軍の指揮権を一手に握った大久保は、下野し「佐賀の乱」に関与した江藤を、江戸刑法を使って士族の身分を剥奪の上さらし首にした。日本の前近代性のルーツがこの大久保の独裁にある。そのDNAが内務省から検察・警察に次がれていて検察庁地下にある同行室はとても現代とは思えぬ一種の拷問部屋である。人民の権利より国権を上に置く政治権力が人民の情報を握れば「監視社会」「暗黒国家」になる可能性が強い。

国家無問責!?
最近「受忍論」が流行り出している。 東京大空襲の被災者・遺族の国家賠償訴訟も「戦争なんだからしょうがない」だし、嘉手納基地の騒音訴訟も「受忍論」。原発事故は一応国の責任だと認めたが、個別の仮処分申請では反映されていない。ゴルフ場が東電に汚染の除去を申し立てたが、飛び散った放射能は無主物と言ってのけた。戦前は「国家無問責」と言う言葉があり官僚は天皇に責任を負っていて国民ではない、公権力の行使で市民に損害を与えても国家に責任は無いとしている。

法務省と財務省
法務省の刑事告発権、財務省の税制・経済政策・為替介入・国有財産の管理・予算編成など権力が集中し過ぎている。これに加え国税調査権がある為、財務省による 日本支配が許されてしまっている。これが日本の行政機構最大の欠陥と言って良い。財務省支配の構造を破壊しないと日本はますます危険な国になる。

サラリーマン税制(源泉徴収)を全員申告納税制か、又は選択性に!
源泉徴収は1940年に日中戦争をやっている時に戦費調達の一環で始まったもの。戦後GHQが廃止しようとしたが、大蔵省が抵抗し、「原則」確定申告で、給与所得者のみ年末調整制度とする事になった。戦中・戦後の税務署員の不足もあり、会社はタダで年末調整をやらされた格好である。源泉の目的は戦争遂行の為の増税・大衆課税であった。戦後源泉徴収をしなかった社長が所得税法違反で起訴された訴訟は最高裁までいったが敗訴している。

戦後改革の盲点
戦前の高等文官試験を戦後は国家公務員上級試験にして残してしまった。この事が憲法では公務員は全体の奉仕者に転換した筈が、実際には官僚の主導権が維持されたまま今に至っている。官僚機構の突出・官僚による日本支配の構造・戦時税制の継承は戦後の占領政策で天皇の役割と共に、大蔵省の意向をアメリカが尊重した結果と思われる。

日本の戦後教育の問題点
ドイツと異なり日米は「ものを考える」事を重視せず「国家に従順で指令に従う人材」を育成するのが願いで教育が行われている。
日本では勉強はもうエリートだけでいい、あとはただ従順でいてくれればいい、という考え方があからさまな本音である。「ゆとり教育」は回りくどく表現しただけだ。国家の意思は「賢くならなくていい」 という愚民教育なのだ。

申告制度とマイナンバー(納税者番号)制
納税者番号と住基ネットのIDカードを連動させたら最後、持たないものは脱税を企んでいると言われるので持たざるを得なくなる。監視社会に反対もへったくれもない。納税者番号が鍵なのだ。

価格に転嫁出来ない業者の存在
周囲の同業者との競争上か、元請け・下請けの力関係で増税分を値上げして売れる筈がない。スーパーは従業員の人件費を下げるか、仕入業者への支払いを低くするしかない。消費税増税は人件費削減に拍車をかける事になる。デフレを作ると大企業の望む人件費の削減が実現する事になる。増税で価格が上がる部分は消費者の負担、価格の上げられないのは事業者の負担なのだ。
名前は消費税だが実際は付加価値税なのだ。又納税義務者でない小さな事業者が消費税増税分を値上げ出来れば益税になる可能性もある。インボイスの導入は納税業者が仕入れ税額控除を受けられなくなるので、非課税の1000万円未満の事業者を潰す事に繋がる。又納税者番号の方向にも繋がるものである。

悪魔の税制。消費税は「弱小勤労者税」「弱小事業者税」
消費税のウエイトは20数%なのに、滞納は全体の滞納額の半分。消費税は仕組み自体に無理があるから払うに払えないので滞納が多いのだ。若し潰れたら「その方が生産性が上がる」という論理を平気で言う学者もいるのだ。

戦争にたかりまくった日本
日本の高度経済成長が果たされた最大の要因は「戦争」まず朝鮮戦争。新日鉄の社史に、朝鮮戦争のおかげで我が社は大儲けをしたと書いている。次のベトナム戦争で東南アジアへの輸出が激増。(1960年~1971年で5倍強〕民生部門が手薄になった対米輸出、北米市場では65年~71年で約6.5倍)日本は9条に守られながら戦争で食って来た国。小泉政権の頃から日米同盟が大事と強調されるようになって来たが、安部政権で「アメリカとわが国は価値観を共有している」と言いだした。憲法改正もアメリカの戦争に自衛隊が「属軍」として参加しやすい憲法にしてしまえという話だ。

成長によるパイの拡大は可能か
90年代 のアメリカでITが飛躍的に進歩しホワイトカラーが不要になって、中間層が没落し二極分解が進んだ。10年遅れで日本で小泉・竹中政治で労働者の非正規化が進展。これが分配の問題を起こした最大の核心部分。政府が格差を拡げるのを後押しした結果、日本は世界有数の格差社会になった。
パイの拡大の為に、脱原発を方針として決め、皆が知恵を出し合えば、太陽光・風力・水力・地熱等の枯渇しないエネルギーの分野で世界のリーダーになる可能性もある。石油・ウランから天然ガス・オイルシェール・メタンハイドレートも巨大資本が支配しているので彼らは自然エネルギーの方向に向かわぬよう、いろいろ仕掛けをしてくるだろうが。

公共セクターの分配機能が重要になるのだが… 
新自由主義が進むと民間企業の分配に公権力は原則介入しないので(正規・非正規の差別禁止や最低賃金制は可能だが)格差は更に加速する。現状では政府の分配・再分配の機能の重要性は増しているが、政治家や官僚はそれを放棄している。巨大資本と政府が一体化して自分達にだけ分配しようと躍起になっている。共生やセーフティーネット重視の議員が減り、多数の政党に分かれている。
そして社会保障は完全に自助・共助でいきます、公助は後回し。全部自己責任。社会保障を充実して欲しいなら消費税を上げるゾという仕組みを作った。今後消費税を上げるゾと言われた時に抵抗したら社会保障は切り下げてもいいです、という事になる。
今は消費税収<社会保障関係費なので「消費税は全額社会保障費に充当する」という誤魔化しが可能である。

消費税増税の前にやるべき事は?
天下り利権への本当の切り込み、所得税累進の強化、法人税の適正化(海外に行けば関係ないのをどうするか)、3大メガバンクの無税時代に遡った課税、創価学会等宗教法人と認定される事で大儲けに繋がっている状況の改善、宗教法人の土地の課税優遇
の問題etc。これをまともに課税すれば他の税金なんかいらないんじゃないかとすら思う。

その4(最終)に続く。



消費税増税法案の問題点(その2)

2012年10月04日
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続き
<次に「消費税増税 乱 は終わらない」2012年 植草一秀×斎藤貴男」対談を取り上げる>

この対談本の面白さは際立っている。消費税増税法案を練り上げ成立させた財務省(当時大蔵省)に1985年から2年間在籍した事があり制度の内幕を知る植草氏と、中小零細企業の家庭に育ち週刊文春の記者を経てフリージャーナリストになり消費税に苦しむ現場を知悉した斎藤氏の対談は貴重で、相互に補完し合いその問題点をあます所無く浮き彫りにしてくれているからだ。

この対談本の中から、新聞・TVだけが情報源の人にマスコミが隠す重要な事と、この本で初めて知り得て認識を深めた事をピックアップし、普通の国民の生活を壊す消費税増税を阻止する為に私の言葉で人に伝えるべき要点を備忘録として纏めたものです。

<数限りない問題点>

①もともと制度に「構造的」欠陥がある事
消費税を負担しているのは「消費者」だけでない。最大の問題は建前と違い、「零細事業者」にしわ寄せがいく制度になっている事です。輸出大企業は消費税から多額の還付金を受け取り、経団連加盟の大企業や競争力の高い企業は消費増税分を価格に転嫁出来るが、零細事業者は価格に転嫁出来なくても増税分の納税を強制される。この点が零細事業者の廃業や自殺にまで繋がる大きな要因となっている。本当に弱肉強食を絵に描いたような制度で、共生を困難にして農林業の衰退、地方の商店街のシャッター通り化をもたらし、ひいては自殺の増加、いじめの多発等の精神の荒廃にも繋がっている。

②機会の平等や頑張った人が報われるは嘘
結果における「格差」が生まれる理由が「そもそも生まれた時の条件」や「消費税制度を悪用し、法律すれすれの悪行を実行したか」等による事が多い。本当に頑張れば、それなりに奴隷的境遇でない自立した生活が出来る制度が必要だ。

③増税のシナリオは財務省(目的が消費税増税=省益拡大だけが実態のようだ)によって綿密に練り上げられたもの
2010年の衆院選挙後解散がなければ3年間衆参の国政選挙は無い。財務省はこの空白期間に消費税増税を目論んで布石を着々と打ち続けた。麻生政権の時に、所得税法等の一部を改正する法律に税制改正付則104条を付け、2010年までに経済状況の好転を前提に税制の抜本的な改革を行う・・・というもの。その後西松事件での小沢潰しに失敗したが小沢氏の代表辞任、鳩山政権は、この付則の凍結を怠ってしまった。財務省は付則を変えず、鳩山内閣を潰す為母親からの多額の献金問題で攻撃し退陣に追い込んでいった(トドメは辺野古だが)。その後の菅・野田は財務省に完全に隷属し、消費税増税に方針を転換して党内論議を無視するか、したフリをして無理やり法案を可決させた。完全に民主主義を否定したやり方だ。
今は消費税増税の可否を選挙の争点にしないように解散時期を出来るだけ遅らせようと画策していて特例公債法案なしでもやり繰りする可能性もある。その背景には2010年2月2日の小沢・キャンベル会談後の米国の小沢・鳩山政権潰しの決断も大きかった。

④名ばかりは「一体改革」だが実質は「単なる増税」だ
しかも天下り利権等のいわゆるシロアリ退治は全くなしのシロアリの構造を維持する為の増税である事。最低保証年金制度は例え月額7万円でも消費税率を10~17%程度にしないと財源がない。人口構造が逆ピラミッド的になった現在 年金の賦課方式のシステムを積立方式に変えない限り年金の存続は難しい。その為社会保障制度改革推進法には、消費税を社会保障支出の財源とすることの規定を盛り込んでいる。消費税率を上げないと社会保障支出を増やせなくなるする枠をはめたものだ。社会保障の将来像、年金の制度を作り変えなければ、すぐに次の大問題が表れてくるその場凌ぎの欠陥法案なのだ。

⑤経済との関係=景気悪化は必至
1997年(GDP523兆円)に増税してから99年迄全体の税収は落ち込んだ。2000年一旦回復後、小泉改革で超緊縮財政を実行し2003年迄税収減。大増税は財政再建に繋がらない事を実証。2011年のGDPは498兆円に減少している。パイが縮小している上に分配が大きく偏り、「格差」が激しく拡大しているのだ。日本でも中間層が没落して、ごく少数の富裕層と大多数の低所得層への2極分化が進んでしまった。本来はこれを是正する財政の再分配機能を重視すべき所、逆に消費税という逆進性の強い税をとって、もっと格差を拡げようというのだから怒りを通り越し、決める人達にも諦める人達にも呆れてしまう。

⑥軽減税率=財務省のさじ加減次第の利権化
複数税率をするにも、給付付き税額控除制度を導入するにも、インボイス導入が前提となるが財務省は消極的で「社会保障制度国民会議」で決めるとなっているが、財務省の誘導が確実で、財務省に都合の良い制度しか出てこない。富裕層がインボイス導入を嫌がっているのだろうか。

⑦申告納税制度
課税対象所得はクロヨンと言われサラリーマンに不利と思われているが、基本的に申告が前提でサラリーマンの源泉徴収制度が例外。サラリーマンの政治=税金に対する無知・無関心を維持したい為ようで、本当は全員申告制度に改めるべきなのだ。
又、サラリーマンの妻の専業主婦は第3号被保険者で年金保険料は納めなくても良いが、自営業者の主婦は家の収入から、それも勤務先の補助が無いから専業主婦並みに貰おうと思うと2重に払わなければならない。老齢基礎年金と国民年金基金は明らかに不公平です。この点を指摘するとサラリーマンから自営業者は脱税しているだろうと言われが、これは財務省による分断工作だろう。

⑧財政危機の大嘘(1)
財務省は謀略機関そのものだ。支配欲とヒロイズムで他人の人生を差配したがる。財務省は日本で5指に入る営利性の強い企業と考えると説明がつく。植草氏が在籍した2年間でTPRという情報統制プロジェクトが始まり売上税導入の為に政財学3千人のリストを作り、売上税に関する問題発言を全て潰しにいく基礎資料としていた(竹中や本間教授、ライフコーポの清水氏との関わりの興味深い)。大手マスコミ幹部も吉兆で接待していた。増税は彼らにとって自分達の収入を意味する。彼らは財務省の利益、権益の拡大の為に死力を尽くし謀略活動をしているのだ。2010年~13年の空白の3年間に欧州政府債務危機が発生した事は財務省にとって渡りに船のようなもので、ギリシャのようになるという荒唐無稽な宣伝に使う始末だ。

⑨財政危機の大嘘(2)
2007年の日本の財政赤字は、国債発行額で言うと25.4兆円。しかし債務償還費14.4兆円を引けば実際に増えた借金の金額は11兆円。通常海外では財政赤字はこの11兆円をさしていうものだ。GDPの約500兆円対比約2%は極めて健全なレベルなのだ。しかし2009年になるとリーマンショックによる急激な経済停滞により25.4兆円だった赤字が50兆円に急拡大した。このレベルになると財政危機と呼んでも良いが、この財政赤字の大半が「循環赤字」と呼ばれるもので、「構造赤字」ではない。この「循環赤字」を減らそうと「構造的」な政策を打つこと自体が間違いなのだ。

アメリカでクリントンが1993年30兆円の財政赤字を20兆円の黒字にしたのもまず景気回復を優先した結果だった。

⑩財政危機の大嘘(3)
財務省の実権は東大法学部の人間が握っている。彼らは経済の専門家でない私もこの事を得心するまで時間を要した)机上で財政赤字を減らした予算書を作れば、そのまま財政赤字が減ると勘違いする驚くべき人達なのだ。植草氏が勤務した期間政府の税制改革が日本経済に与える影響試算をしたが、経済成長率も個人消費も設備投資も住宅投資も全部プラスになる結論になるよう指示された!との事で数字を操作していたのだ。

その2はここまで。その3に続く(その4が最終)。

 



消費税増税法案の問題点(その1)

2012年10月01日
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<始めに>

内憂外患が続く。しかし割と多くの人達は、諦めているのか、鈍感なだけなのか、視野が狭すぎるのか、生活に追われてそれどころで無いのか、苦しいながらも比較的楽しそうに暮らしている。大阪でも、特権階級層でなくても、最貧層以外は衣食住・趣味・友達に事欠かず何とか暮らしているようだ。

イスラエルのイラン攻撃準備や日中韓の緊張を煽って、国民の眼を消費税増税から逸らさせる戦略はかなり成功している。俄か愛国者・中国嫌いが増えている。原発の被曝被害隠しや原発政策を変更せず押し通す体制も固められつつある。小沢冤罪裁判で3年間も小沢氏の活動を縛った結果、菅・野田政権という自民党の上を行く属国政権が出来て米国・官僚の信任が厚い。この冤罪裁判の戦犯達(検察・最高裁事務総局・マスコミ)の罪は限りなく大きく、売国奴達を今後もしつこく追及していく必要がある。

只、前原・石原・野田による外交・防衛の未熟極まる中国敵視政策の代償は大きく適切な対応により改善を図っていくしかないが、それでも日本にとって当面の最大の問題は財務省とその部下のような野田政権がいかに隠そうとしてもやはり消費税増税なのである。その消費税自体に内在する問題と、増税で新たに起こる問題点を追及し、今は可能性が薄いように見える消費税増税法案凍結の実現に向けて、本気で活動していきたい。

<消費税そのものと、増税による問題点>

この問題を抉りだす為に次の2つの書籍の内容を辿り、明確化していく。
参考文献
「消費税の呪い」小室直樹著。1989年7月31日初版
「消費税増税 乱 は終わらない」2012年 植草一秀×斎藤貴男」対談

<まず故小室直樹氏の「消費税の呪い」、副題は「日本のデモクラシーが危ない」から見てみる>

そもそも1988年12月末、多くの反対を強行突破して導入した消費税は、当初から多くの矛盾を抱えてスタートしたのだった。

簡易課税制度
売上高5億円以下の業者は売上高の0.6%(20%×0.3)を消費税として納めれば良い。この制度が脱税の温床であった。この帳簿方式と簡易課税制度により、税務署に摘発されないギリギリの最適脱税が求められ、脱税企業・脱税プログラミング・脱税大学の3点セットが揃った。経済の犯罪集団が定常化され、その行為が正当化されていたと言える程の欠陥制度なのだ。

伝票方式が採用されなかった事
竹下内閣が導入した消費税は「簡明でない」という致命的欠陥があった。伝票方式 なら脱税しにくいのだが商工業者の反対に屈し帳簿方式にしてスタートした。一方サラリーマンや著述業は所得が100%ガラス張り、中小企業は曇りガラス、農業は雨戸張りで、脱税のチャンスの不平等がある。税金こそデモクラシーの血液であり、徴税の不公平はデモクラシー諸国においては致命的である。更に免税点、限界控除制度等も絡み難解な制度となってしまっている。

国会で一番大切な仕事は税金の審議
それなのに売上税騒動で予算案を人質に税制審議を拒絶する野党の態度が慣行化してしまった。これはデモクラシーの終焉だ。

納税者番号制度の欠如
税務署員や会計士・税理士・銀行員に守秘義務 を課しプライバシーを守った上で導入すれば徴税の不公平は無くなる。徴税公平の秘訣は納税番号制と申告義務制で、米国は1986年の税制改革で納税者の社会保障番号を納税番号とし、歳入庁が納税者の懐をつかみきったので大成功した。デモクラシー国家においては誰しも公人としての領域があり、この領域には私人のプライバシーはありえないのだ。(ちょっと嫌だけど脱税の横行よりはマシである)

自由に充分な討議がなされたという条件
イギリスの1649年の清教徒革命のテーマは国民の同意なしの税制改革には応じられないであった。議会の決議が国民の意志と解釈されうるには自由に充分な討議がなされたという条件があるのだ。

自主課税からデモクラシーは出発する
自主課税無き所にデモクラシーは無い。日本では自民党税調と大蔵省主税局が、国民を完全に無視したまま導入を強行したのだ。自民党税調の体質は関東軍主義であった。自民党税制調査会長山中貞則が「朕は税金なり 」と思いこんで「政府税調を軽視するつもりは無い、無視するだけだ」や「最後にストンと決められるのは自分しかいない、素人がゴチャゴチャ言うな」等と言い強行した。正に「問答無用」の論理と行動であり確信犯なので厄介なのだ。本当はデモクラシーは玄人の仕事に対し素人が最終決定を下すシステムなのだが…戦前の軍部の替わりに戦後は東大やミニ東大出身の特権官僚達がこれと同じ事をやっているのだ。

近代デモクラシーの原点とは
地上の住民たる人間に是非善悪の決定権が握られた事が出発点。デモクラシーの反対は独裁制では無く、神権政治なのだ。デモクラシーにも委任独裁制がローマの昔からある。デモクラシーには平和主義も軍国主義もあるのだ。逆に封建制度の徳川時代は稀に見る平和な時代であった事で分かるだろう。

導入から24年経った消費税を振り返って見ると、最初からデモクラシーとは程遠い全身汚物まみれの非合理的な制度であった事が見えて来た。次回に2012年の消費税増税についての問題点を見ていくが、特に決定プロセスがデモクラシーを否定するような形であった事が導入時と極めて似ている事に気付かされた。(続く)



福島原発事故について-その7

2011年07月31日
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トルコ・アヤソフィア

「今抱えてしまった大きな問題点」のうち最後となる5番目についてです。

1.東電と政府の損害賠償責任について
2.福島原発放射線の影響と対策
3.福島原発事故の実態解明
4.日本の原発政策の本当の意義とは?
5.日本経済に与える影響と増税の可否

5.日本経済に与える影響と増税の可否

(政府は何故復興増税等という天下の愚策を強行しようとするのか?)

(1)根底にある増税の流れの背景

そもそも何故現在円高なのか?について簡単過ぎる理由を認めようとせず、国民に隠し通そうとしているのが財務省です。理由は只一つ米国財政が破綻の瀬戸際にあるという事実です。
(菅政権はほぼ100%官僚のいいなり政権で野田財務相等は知識も覚悟も足りな過ぎで問題外)

これは今ちょっとおカネが足りないという次元では無く、米国中心の「国際金融システムのシステミック・リスク」であり、リーマンショックで多くの金融機関が 破綻した後の深手がケタ違いに酷い事です。株式市場に大量の資金を投入して立ち直ったように見せかけて来たが、もうこれ以上の維持は難しく、本当の危機は これから始まるのだという事です。

リーマンショックで大きく傷ついたのは欧米であり、日本は比較的軽症だったのでもっと早い段階で円高になるのが当たり前だったが、欧米が一生懸命にお化粧をしていたので今頃顕在化しただけ。日本も苦しいが米国・欧州の方がより崖っぷちなのです。

日本が蓄えて来た1兆1378億ドル(2011.7.7財務省発表)の外貨準備高は中国に抜かれたとはいえ世界第2位の高い水準にある。この一部を売却し日 本の震災復興に充てれば良いと私達素人は皆そう思う。しかし米国の属国である日本の財政の実権はずっと財務省が握っており、彼らは米国に忠誠を誓っている 為か、決して米国債売却の検討を絶対に出来ない。このお金は既に米国に貢いだもので日本人はもう使えないと考えざるを得ないのだ。

888兆円もあっても使えないばかりか僅か10兆円程度の復興財源を全て増税で賄い公務員制度改革(公務員も身を切る)には一切手を付けさせないで国民に全て負担させようとしている。
こんな事は本来は許せないのだが隷米の自公政権やそれ以上に隷米を極める菅政権は米国の意向に決して逆らえないのでこの政権や亜流政権が続く限りやむを得ないのである。

(2)復興税→消費税増税への流れ作り

復興税の内訳は、まだ今後政府の税制協議会で詰めていく段階で詳細は未定。法人税と所得税の増税で広く薄く長くが基本方針のようだ。菅政権の言動を辿り、発 足当初から復興委員会の論議を見れば極めて明快だ。最初は消費税増税を自公と組んで強行しようとしていたが元々根強い党内の反発の上に、大震災に襲われ反 発が更に強まり復興委員会が当初予定していた消費税による復興増税の旗ををひとまず降ろし、当面は法人税と所得税増税で繋ぎ、2010年代半ばに消費税増 税に切り替える腹積もりのようだが今度は財界が反発しており予断を許さない状況が続いている。
日本は1990年代初頭のバブル崩壊以降、原材料の高騰や中国・韓国等手強い競争相手の出現等で貿易等の薄くなった利 幅をコスト削減により凌いで来た。とりわけ人件費を非正規雇用に切り替える事によりより圧縮して利益を拡大してきた。この為国内の貧富の格差が大幅に拡大 している。  ここにリーマショック、東北関東大震災と続いており、ただでさえ困窮しているのに更に消費税増税すれば多くの低所得者の生活困窮に止まら ず、消費減退→失業増大→大不況の到来→社会の大混乱→本格的衰退に繋がっていく可能性がある。

しかし増税が小規模に止まれば秋以降当面は震災復興需要により景気を持ちこたえる事が可能となろう。

(3)増税の前提条件=公務員制度改革先行が必要なのだが…

日本が官僚主権国家だという事はある程度言われて来たが、今回の福島原発事故発生以来その実像が次々に明らかになって来ている。皆が官・政・財・学・報複合 体の利権構造のあまりの強固さ、複雑な絡み合いを知る事となり、その力関係や仕組みが連日twitterやブログ、書籍でより詳細に多くの人達に知れ渡っ て来た。

とりわけ経産省と東電・学者・マスコミによる原発事故原因報道の隠蔽、放射能拡散状況の隠蔽、低線量被曝の危険性隠し、計画停電等電力供給不足煽り、反対者 への圧力強化等でひたすら原発稼働再開に繋げようとする強引さは、連日連夜全て多くの国民がはっきりと目にした事である。
あらゆる手段を総動員して現行体制を守ろうとする姿勢に、彼らに対する恐怖感・警戒感もさる事ながらある種の哀れさが漂うと言ってよい。もう何も見えずに権 限を振り回せばこれまで通り乗り切れると本当に思っているのだろうか。保安院のとかげの尻尾切りだけはやむを得ないと諦めたようであるが。

今や日本人でゆとりが残っている層は縮小しており各分野の一握りの成功者以外残っているのは公務員だけである。この人達が全く自分達の身を削らず、あらゆる利権は手離さず、国民のみに負担を強制する冷酷な人達である事も連日明らかになってきている。

年金原資の行方も話題になりだしている。少子高齢化で社会補償費の抑制も必要だ。制度改革や消費税増税もいずれは避けて通れない課題なのかも知れない。しか し財務省・マスコミの財政困窮キャンペーンは国の資産を無視し負債のみを強調したあまりに幼稚なPRである。もし財務省・マスコミのいうような危機的状況 ならもうとっくに円の暴落になっている筈なのだ。事態は全く逆な事はもう知る人ぞ知る状況で、騙しはもう効かないのである。
将来消費税増税が必要でも、その前に国家公務員の待遇切り下げが先決・必須条件なのでありこの問題を実行出来る内閣の実現が求められるのである。

(4)米国の日本支配進展の深刻さ

ソ連崩壊後米国のターゲットは日本になり、年次改革要望書によって日本経済を支配下におく戦略が続いてきた。2000年以降行き詰まった米国はイラク戦争等 で打開を図るが、逆に更に財政困窮が深まって来た。今は財政再建を福祉切り下げでやるか富裕層増税でやるかで揉めている。軍事費削減は二の次のようだ。

急増する米国債の買い手は中国と日本だけだったが中国も歯止めがかかり、米国財政の破綻を避けるため日本政府への圧力は私達の想像を絶するレベルである事だ けは想像がつく。これに軍事的面からの圧力もあるとしたら私達に対抗手段はあるのか?核の存在が噂される基地と潜水艦に国土を占拠され、日本の実権を握る 財務・外務・防衛・法務・経産官僚全てが日本の首相より米国の意向を重視して揺るがない事務次官に率いられているとすると事態は深刻を通り越しているのかも知れない。
福島原発事故の収拾が事故当初早い段階から米国高官によって指導(実質的には指揮?)されているという情報も人口に膾炙され始めている。

結局日本は米国債の買い支えとドル暴落・円高による債券の価値の大幅減少に見舞われる事は避けられない状況になって来ていると思う。

(5)今後の東電存続の形態と電気料金について

それにしても総括原価方式とは凄い制度だ。これが資本主義である訳がない。コストが高ければ高い程利益が上がる制度なのだから驚きだ。原発投資も大きければ 大きい程いいし、政府・マスコミ・地方自治体への各種支出も原価に入るので接待も広告も懐柔策も手厚くやればやる程利益が上がるようだ。東電も経産省も御 用学者もこんなうまい構造を手離すまいとしてあらゆる抵抗を繰り広げるのも当然だろう。この点はまだ改善論議の俎上にも上っていない。

原子力賠償責任法の修正案(原発の損害賠償支援機構法案)も損害賠償を国民に押し付け国費を無制限に投入して東電の存続を守る仕組みであり本当に許し難い内容だと思う。しかしこの内容はあまりに理不尽である為このまま成立してしまうと不公正過ぎ歪みが大き過ぎていずれ損害賠償や投入する税金の大きさに耐えかねるなど社会に混乱が起きるだろう。

個人的には電気料金を勝手に値上げすれば自衛手段を講ずるしかない。これ迄電力消費が贅沢過ぎたので節電余力は大きく、家計の健全性維持の為にも節電で電気料金を削減する動きが強まるだけだ。いずれ送受電分離や蓄電・自家発電・自然エネルギーへのシフト等で吸収可能で何とか負担増を避けていけるのではないか。

(6)終わりに

Twitter やブログの内容を監視して統制強化を図ろうという経産省・資源エネ庁の試みは失敗に終わるだろう。巨大利権構造と高待遇に安住して来た人達の知的レベル・ 総合的能力が相対的に低くなり過ぎているからだ。採用も偏差値と従順さ血縁でしているようだ。社会の前線で生存を掛けて闘っている人達や各分野で才能を必 死に磨いている人達、豊かでなくても生活確保に命懸けで努力している人達の研究心、身につけたスキルの方が遥かに貴重だと思う。この人達の力を甘く見て、 ただ税金や各種公共料金を絞り取る対象と考えているだけではそうはいかないだろう。

強権で統制・規制と分断を図る官僚達と実態に目覚めた多くの国民の力が結集されて対抗出来るのかどうか毎日見極め乍ら、結集に向け少しでも力になれるようにしていきたい。

尚、 ここではあまり触れなかったが日本のマスコミ情報では「米国経済・軍事・社会の実態について」正しい情報が不足し過ぎている。これからの一両年の米国の動 向は日本に多大な影響を及ばすので激動の方向性・その原因を正確に把握する事が本当に重要な局面になって来ているので心していきたい。

以上



消費税について

2011年02月05日
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菅政権・マスコミが消費税早期増税を目指す改造をして、その実現に向けてひた走ろうとしている。これは絶対阻止しないと日本は崩壊に向かう事になる。本当にそうなる。社会を破壊する力を持っているのだ。

以下その理由を述べるが大半は斎藤貴男氏の新著「消費増税で日本崩壊」(ベスト新書・定価800円)の引用・纏めである。 この問題が一般の国民の世論に充分浸透しないで増税容認論が出やすいのは、やはり複雑で全体像の正確な把握が難しく、財務省・マスコミの嘘に正確に反論出来る人が少ないからだ。

要点を最小限にとどめても(1)①~(3)③まで7点で反論する必要があるが、増税反対論者は最低限いつでも反論出来るよう言論武装しておいて欲しい。もちろん斎藤氏の2つの著作と、菊池義博氏の消費税はゼロ%に出来る(以前に要約し本ブログに掲載済み)も加えた3著のマスターがベストですが。

1.消費税増税を主張する人達のかざす理由

2007年11月20日政府税制調査会答申(福田康夫自民党内閣当時)の要旨
(1)財政危機にある日本が増大する社会保障費に対応するには新たな財源が必要
(2)財源は景気に左右されない消費税が最善
(3)世代に偏らず公平な税制である

概ねその時の論理を菅政権もマスコミも今も踏襲しており制度の改善に踏み込む気配もない。

2.それぞれの理由に対する反論

(1)-①日本はまだ財政危機ではない事
約900兆円の国債発行残高があるが多くは建設国債が占めているし(高速道路や議員宿舎、役所の駐車場等々資産が沢山あるのだ)、日本政府はGDPに匹敵する金融資産を持っているのだ。それを差し引いた純債務で見るべきなのだ。その上国民金融資産が1300兆円ある。こんなお金持ちの国は世界に中国と日本だけだから円高になるのだ。

マーケットはそれを知っているからS&Pが日本国債の格下げをした日に日本国債の値が逆にあがるのだ。ジョージ・ソロスが昔韓国やタイを暴落させ大儲けした再現を日本国債で狙っているふしもあるが、売り崩しをやるならやってみろ、逆に大損して消えてなくなるのがオチなのではないか。

(1)-②年金改革は既に実施されている
2005年の制度改革で2006年から厚生年金を毎年を0.354%ずつ引き上げ2017年以降18.3%にする事になっている。これで充分とは言い切れないがこれで100年安心と言っていたのは与謝野や藤井・柳沢達ではないか。概ね大丈夫なのである。

(2)-①欧州と税率を比較するなら軽減税率も同じにした上でやるべきだ
例えば英国ではスーパーで買う食品・惣菜には消費税はかからない。レストランやテイクアウトの暖かい食品にはかかるが、大抵家で食事するから消費税が20%近くでも普段の生活に影響はない。
日本では既に酒・たばこ・ガソリン税という間接税をとっている。消費税の国際比較は単純にすべきでないのだ。

(2)-②何と菅政権・官僚・マスコミの隷従する米国に消費税はない!(小売売上税はあるが)
米国も導入を検討したが「金がかかる割には税収増が見込めないから、この税制はやめよう」と決めたのだ。食料品・生活必需品の税率を軽減すると貧困層だけでなく富裕層の負担まで軽くしてしまうし、事務処理が大変。だから駄目と言っているのだ。
実は消費税が貧困層を追い詰める結果、従来にも増して福祉ニーズ・犯罪・自殺の増加による大きな政府を懸念したのだ。

(3)-①とんでもなく不公平な税制である事。零細事業者苛めは過酷だ
もう2004年度に免税点が1000万円に引き下げられた今は「益税」問題など例外ケースだ。零細事業者まで消費税の納税義務者にさせられている。この厳しいデフレ競争下でお客様から消費税分を取りきれないで自分で被らざるを得ない場合も多いようだ。細かい事務の負担も過大で倒産・廃業・自殺に繋がる要因になっているケースも多い。

(3)-②派遣社員の増大を齎した大きな要因である
「仕入税額控除」で正社員の給与は対象にならないが派遣社員にすると対象になる。これでは企業が節税の為に正社員を雇用せず派遣会社から派遣して貰った方が得であり、経営者がそうしようとしたくなるのは当然だ。更に正社員が減少する事を誘発する本当に危険極まりない制度なのだ。

(3)-③輸出戻し税の還付
大企業は自身で払ってもいない(下請けに負担させている)消費税分の還付を受けている。08年度の還付金の総額は7兆円弱。消費税収総額の4割にも達しているのだ!

これだけ多くの社会不安を齎している消費税増税を大した検討もせず欠点も改善しないまま早期に導入しようと声高に叫ぶ財務省・マスコミ・菅政権の人達は制度の受益者側にいて利益が更に拡大するから言っているのであり、社会保障の維持充実の為というのは殆ど嘘に近いものである。

この他に大きな問題としてマクロ経済で見ても消費税導入年、税率引き上げ年とも大幅に景気を後退させ税収の減少になっていたし、その後の景気回復を阻む大きな要因になってきたと言う重大な事実もあるが、次回にしたい。



発展中国と好対照の隷米で収奪される日本

2010年11月04日
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私は最近日本の完全属国化を強要する米国嫌いが強まる一方で、それに対抗する極になる実力を備えて来た中国への関心の深まりが顕著になってきている。自立した日本であるにはどうしたら良いか考えると米国一辺倒からアジア重視に軸足を移していく必要があると思う。

<TPP問題>
TPP加盟問題が浮上している。ASEANで菅首相は検討するとシンガポールのリーシェンロン首相に表明したそうだ。クリントン国務長官に前原外相がハワイに呼びつけられて命じられた通りの事だ。この二人の関係を見ていると、つくづく厭になる。挙句の果てに前原は農業はGDPの1.5%だから重要では無いと言い出す始末だ。郵政民営化も改革案が一向に論議されず、前原はクリントンから小泉時代に決めた通りに早くやりなさい!牛肉の輸入再開も早くしなさい!と命じられて「ハイ!わかりました」とだけ答えているようにしか見えない。
とにかく菅も前原も米国のいいなりなのである。国内のコメ農家に与える影響をどうするのかを充分検討してからという発想が無いのが信じられない。Yes Sir(Mam?)!から始まるのだ。こんな姿を毎日見せつけられて厭にならない人は、「米国の100%手下の特権官僚やマスコミ」と同様に自立した日本人では無くなっている事を自覚したほうがいい。
とにかく農家の保護が重要である。今後のTPPの推移を見守りたい。

<中国の勢い>
胡錦濤首席も温家宝首相も米国に対峙している国のトップとしての風格がある。米国の言いなりで無く巧みに強く対抗しているので日本の隷従振りと違い、貫禄も人間性も強く感じ取れるのだ。日本への対応を見ると、米国以外には中国に対してさえ尊大に振舞う前原外相を嫌っているのは当たり前だが、それなりの大人の配慮を残して対応してくれている。
中国経済は2010年GDPで日本を抜いたと言われているが、この数字はあくまでも白の部分(表に出せる数字)での比較であるようだ。灰と黒の表に出ない賄賂等の経済を入れると既に遥かに上回っていると言われる。旅行者として一端に触れる範囲の印象では、それが本当だろうと感じられる繁栄ぶりだ。クリーンでないくせにクリーンを連呼する国とは大違いのおおらかさだ。
今年訪れた、上海も深センも香港も大連も、その発展振りは目を瞠るものがあるのだ。
文化大革命時代の大変な出来事や、共産党独裁による格差や、人権の抑圧、自由の問題や環境汚染等の多くの矛盾はあるのだろうが、日本人に対する感情が日本のマスコミ報道とは大きく違っている事は中国人と直接触れ合った事のある人なら分かっている事と思う。大部分の人は友好的だ。一部の反日デモはあるが日本の在特会や統一教会等が行うデモが多くの日本人の感情を代表していないのと同じ事なのだ。

<今後の国際経済の動向の軸は米中関係>
米ドルの下落は80円を切り75円に向かう事は日本の輸出企業も観念して対策を打っているようだ。米ドル札はリーマンショック以前に比べ2倍程度になっているという。単純に考えれば1米ドル50円になってもおかしくないのだ。これまで中国が米国債を買い支えて来たが、中国は投資先を日本やいろいろな所に投資先を変えようとしている。この米国と中国の攻防が毎日の国際政治経済を見る上で最重要事項なのだ。日本は未だに中国に次ぐ外貨準備を持ってはいるが、それは米国から見ればどうやっていつ奪うかの獲物であるに過ぎない。日本は自立した政治力は殆ど失ってしまっているのだ。

<反消費税・反戦活動の重要性>
とにかく現政権が強行しようとしている消費税増税が齎す国民の疲弊、不況の到来、格差の一層の拡大は極めて深刻な事態を招来するだろう。消費税増税・法人税減税は配当を増やし欧米株主に差し出す貢物なのだ。
なし崩し的な軍事行動の拡大は、憲法9条の有名無実化の完成に近付きつつある。米軍の指揮下で世界中どこでも一緒に戦争をやろうとする日本を目指した菅政権。どう歯止めをしていくのか?
表面的には前原外相が駐ロシア大使を呼びつけて又すぐ追い返す等威張り腐っているが、内実は外務・防衛官僚が実質全てを取り仕切っているので政治家の力は全く無力化しつつあり、小沢氏の政治力後退で、米国・官僚による日本の軍国主義化が急進展している段階だ。

微力でも反消費税・反戦活動は重要だ。この事を言い続け、特定の政党に支配されない草の根の活動・連携が重要である。仙谷がネット規制へ乗り出してくる等の強力な切り崩しが始まるであろうが毅然と対峙していく必要がある。ひとりひとりの行動が大切になって来ている。



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