ロシア旅行(ボルガの船旅中心)とその後知った事

1.はじめに ロシアは近くて遠い国だった。高校迄新潟で育ったので対岸のナホトカはいずれ行けるだろうと思っていたが縁が遠く、効率の悪い共産主義が残れる時代でも無かったしロシア国家破産危機もあり、興味が湧かなかった。66歳の最近になってようやく天然ガスを巡るオルガルヒの活動やプーチン率いるロシアの利権拡大・興隆ぶりを聞き、一度見てみたくなった。今回はモスクワからサンクトペテルブルグまで、途中キジ島等に立ち寄り乍らのボルガ川下り1800kmの旅を選び楽しむ事が出来た。折しもウクライナ(ロシアにとって中心的存在の一つだった旧ソ連の国。国家形成期はキエフの方が中心だった)を巡り、一極覇権の崩壊(ドル暴落)を食い止める為軍事力でロシアを抑えつけ逆に強化(ドル防衛)したい米国とこれに対抗してもう一方の極BRICSの連携を強化拡大させようというロシアとの大戦直前の軍事・経済の角逐が展開されているので、ロシア国内にも緊張が漂っているのかと思っていた。しかし少なくとも一観光客の眼から見る限りロシアは全くのんびりしたもので、道中ずっとどこでも観光客で賑わっていてかなり拍子抜けだった。お陰でロシアの豊かな自然・文化・芸術を堪能して充実した心が潤う旅を味わう事が出来た。今回ロシアの現状を見て感じた様々な事を、ロシア関連の世界史の基礎知識部分を確認し照らし合わせながら纏めておきたい。 2.旅の概要 (1)スケジュールと内容のあらまし 旅程は2014.6.20~7.2迄の13日間。テーマは「ショーロホフ号で行く世界遺産キジ島とロシアの母なる大河ボルガの船旅」であった。モスクワやサンクトペテルブルグ観光にも最低限必要な日程は確保されており、見るべき所は観て来れたと思う。 ・大韓航空でソウル経由モスクワへ。空港の入国審査は行列は長かったが緩かった。市内で3泊(ホテル1泊・船中2泊)し観光した後、夕刻ボルガ川クルーズに出発した。ドイツ建造の船で乗客は200名余、日本人21名を除き大半がドイツ人だった。 ・ボルガ川は両岸とも白樺やアカマツ等がずっと延々とほぼ同じ高さで綺麗に立ち並び、偶に森の中にダーチャと呼ばれる別荘や教会が点在して見えていた。途中ウグリチ、ヤロスラビ、ゴリツィー、キジ島、マンドロギーに立ち寄り観光ながら、川下りを存分に楽しんだ。船室は狭くシャワーと手洗いが一緒でちょっと驚いたが、慣れれば特段問題も無く、食事も昼夜ともコースメニューでおいしかったのでつい食べ過ぎ・飲み過ぎがちになった。船旅なので日本人の同行の方々から多くの旅行や人生の体験談を聞くことが出来て楽しかった。又イベントでドイツ人乗客との歌の交歓会で俄か合唱団員になり「百万本のバラ」や「故郷」を合唱したり折り紙を通じた交流の企画もあって、原生林の中をボッーとする暇もあまりないまま開始7日目の朝にサンクトペテルブルグに到着した。 ・サンクトぺテルブルグではそのまま船中で2泊した。お目当てのエルミタージュ美術館やピョートル宮殿等の観光はいずれも期待に違わぬものであった。サンクトペテルブルク国際白夜マラソン?に出くわしたせいもあり、バスがかなりの渋滞に巻き込まれたしどこも観光客の行列が凄かった。本当に満足しきって3日目の夜、再び大韓航空でソウル経由関空へ帰国した。 (2)旅の見所 <モスクワ観光> ・初日 ロシアの歴史や文化の原点となった郊外の都市群「黄金の環」の代表格セルギエフ・ボザードへ。ロシア正教最大の聖地で世界遺産のトロイツェ・セルギエフ大修道院(モンゴルが支配した14世紀初めに建立)は、モンゴル支配に対抗するロシア諸公のまとめ役を果たした所。ロシアで最も尊敬される聖人セルギイが整備されたモスクワで無く、原生林でクマ・狼や冬は零下20~30度の中で貧苦に耐えながら聖書の教えをひたむきに求めて信仰生活を送った所だ。その聖セルギイの祝福を受けたモスクワ大公ドミトリー将軍率いるロシア軍がモンゴルに勝利した。ロシア軍の勝利を神に感謝しイワン雷帝が建て、代々の皇帝が戴冠式を行ったという白亜のウスペンスキー聖堂等を見学した。今回「黄金の環」の言葉自体も初めて知ったが、それぞれがロシア諸公国の首都として、最終的にモスクワが中心になっていった源流となった地域の事だったのだ。ソ連崩壊後、大修道院、モスクワ神学大学、聖歌隊指揮者、イコン画家等正教文化の中心地となっている。 ・2日目 雀ガ丘から市街を一望後、チャイコフスキーが「白鳥の湖」を構想したという湖の近くのノボディヴィチ女子修道院や、エリツインやゴルバチョフの妻等の様々なレリーフの墓がある隣接の墓地を見たり、多くの壁画で有名な地下鉄(最近事故があったようだ)に入場して大混雑の中を皆ではぐれない様にしながらキエフ駅(ロシアは行き先が駅名になっている)等の多くの壁画を鑑賞した。又、1856年に豪商トレチャコフが創設したイコン画等の古代ロシア民族画を集めたトレチャコフ美術館を見た後、広大な赤(美しいの意あり)の広場を聖ワシリー寺院等を眺めながらゆっくり散策した。ここがソビエト時代以降毎年11月7日に革命記念軍事パレードが開かれている所なのか。 ・3日目 雨の日に時間指定でクレムリン(城塞)見学。12世紀に木造の要塞で始まった。15~16世紀に現在の形になり、この時点でロシア正教の総本山ウスペンスキー聖堂等を建立した。プーチンの大統領府があるとは思えない程警備が手薄のように見えた。ロシア最古の博物館である「武器庫博物館」には1613年~1917年迄続いたロシア最後の王朝のロマノフ王朝の宝物等12世紀以来ロシアの皇帝が収集して来た世界の美術工芸品が沢山展示されていた。     <ボルガ川の船旅> ・4日目 古都ウグリチに夕刻着。イワン雷帝の死後流された息子ドミトリー・ナ・クラヴィーの名の付いた聖堂を見学した。 ・5日目 ヤロスラヴリ 2010年に建都1000年を迎えた世界遺産(2005年)「黄金の環」最大の街。15世紀にはボルガ川を伝って、カスピ海、黒海、バルト海、北海を通じる一大交易都市として発展した。13世紀に創建された中世建築の傑作スパソ・プレオブラジェンスキー修道院へ。5千ルーブル札にある小礼拝堂を見て、修道院内の庭では鐘を使った生演奏を聴き、教会内で聖歌と民謡のアカペラを聴く。実力も音響も素晴らしかった。預言者イリヤ聖堂前を行く人。この聖堂はフレスコ画で名高くユネスコの世界遺産に登録されている。 ・6日目 ゴリツィー キリルベロゼスキー修道院を見学。夜10時でも明るい白夜は初体験です。 ・7日目 キジ島 欧州第2の湖オネガ湖に浮かぶ緑の世界遺産キジ島散策。幅500m、長さ7キロの細長い小島だ。木造のプレオプラジェンスカヤ教会は修復中だったが、緑の小道を歩みながら徐々に近づくと想像を上回る大きさを持った美しい教会だった。特に木製で作られた22個の玉ねぎと言われる部分はじっと見上げ続けても見飽きない美しい曲線をなしていた。補強工事中だったが中のイコノスタシスは鮮明で、中には曼荼羅風のものもあって驚いた.売店のお嬢さんは純朴そのもの。他の冬の教会や、ベル・タワー等の木造建築群も自然にマッチして美しく、先住民にノブゴロドからの移住者がキリスト教を伝えロシア正教会の教会を建設したのだ。ボルガ川の北のはずれなので流石にここまでは争乱が及ばなかったので残ったのであろうこの島の風景と聴いたベルの音は心と耳に深く刻まれて残っています。 ・8日目 マンドロギ-- 素朴な森に生産者自身が直売する民芸品店が多くあり良い土産を沢山見つけた。又ウオッカ博物館、馬術ショ-、民族音楽ショー等を楽しみながらのバーベキューは格別の味であった。 <サンクトペテルブルグ観光> ・9日目 聖ニコライ聖堂を撮影し、エミルタージュ美術館「冬の宮殿」へ。大混雑で並んで順番を待ちやっと印象派のゴッホ、モネ、シスレー等や、レンブラント、ダ・ヴィンチの作品のみを中国人観光客の行列割り込みの酷さに憤慨しながら慌ただしく見学できた。帰国後美術館で買った「エルミタージュ」を眺めて見たが、見ていないものがあまりにも多く、いずれ又ゆっくり鑑賞したいものだ。その後水中翼船で郊外のピョートル夏の宮殿で大噴水を見た。夜はパレスシアターで本場のバレエ「白鳥の湖」を鑑賞出来た。時代の変化からか原作の悲劇をハッピーエンドに変えていた。 ・10日目 翌日はエカテリーナ宮殿へ。金箔の大きな部屋が続き勢威が窺えたが、順番待ちの観光客でごった返し、ゆっくりは見れなかった。1960年代に戦争の破壊から修復されたという豪華な大理石の階段からレリーフを見ながら入った。陶器のコレクションや美術品は戦乱を避けウラル地方に逃れていたという。「明るい回廊」の雰囲気を味わい大広間天井の「ロシアの勝利」も見上げ豪華な「食事の間」を見ながら行った「黄金のアンフィラーダ(続き部屋)」のハイライトの「琥珀の間」は写真撮影禁止だったが天井から壁まで美しい琥珀で埋め尽くされていた。「緑の食堂」も一度はこんな場所で食事をして見たいと思わせる空間だった。まだまだキリが無いので一度は行って見て下さい。今回は行けなかったエカテリーナ公園等も再訪して見たいものです。午後はイサク寺院に。帰途にネギ坊主が派手な「血の上の教会」を撮影した。夜は船内で有志のカクテル&ウオッカパーティーで名残りを惜しんだ。 ・11日目 18世紀にスウェーデンの攻撃から守る為作られたというペテロパブロフスク要塞を見学。中央の大聖堂にはピョートル大帝やエカテリーナ2世等の皇帝達の棺が華やかに並べられていた(お骨は地下との事)。端の方にはレーニンやドストエフスキーを収容した獄もあった。いつかドストエフスキー「罪と罰」の舞台も歩いてみたいものだ。 3.ロシア旅行の感想 (1)ロシア正教の著しい復活盛況ぶり ロシア正教はピョートル1世やソビエトによる受難の時代を経て完全に復活していて大盛況である事を目の当たりにする旅だった。ロシア旅行中毎日のように教会を訪れ、昔から表現様式が殆ど変わらないという美しいイコン画を観て、主要教会では聖歌の素晴らしい合唱を聴く日々が続いた。ソビエト時代の弾圧の跡は殆ど窺えないし、国民の日常生活に横3本のロシア十字架やイコン画が深く根付いているように感じられた。 <ロシア正教の歩み(概要)とロシアの歴史> ・988年  キエフ公国のウラジミール大公が正式にキリスト教を受け入れる。妃の出身国ビザンティン帝国の国教であったギリシャ正教を選んだ。当初はコンスタンティノープル総主教の管轄下だったが、その後ギリシャ正教が次第にロシア独自に発展していく。 ・1236年 キプチャク・ハーン国の侵略が度重なり中心都市キエフは荒廃していった。ウラジミール大公没後は強力な支配者があらわれずモンゴルの襲来を受け支配されたのだ。 ・1345年 モンゴル支配は教会には寛容で、荒野修道院運動でモスクワ郊外にトロイツェ・セルギエフ大修道院が建立される。 ・1453年 ビザンチン帝国が終焉しモスクワ・ロシアが出現した。紋章を双頭の鷲に。1480年にはモスクワ大公イワン3世がモンゴル軍を撃退し250年以上続いた「タタールのくびき」が終りを告げた。 ・1547年 イワン4世(雷帝)がロシア統一し皇帝に。しかしバルト海進出を狙ったがポーランド等との戦いに疲弊しその後も安定せず混乱の時代(スムータ)が続く。 ・1589年 モスクワ府主教が総主教に昇格。ローマ帝国、ビザンティン帝国亡き後モスクワ大公国こそ「世界を支配するキリスト教世界帝国=第3のローマ」との思想も登場。文化・芸術の隆盛が始まる。 (17世紀~ロマノフ王朝時代 典礼の改革を巡り正教会は分裂。又、皇帝より教会が上位にあると主張した為正教会の力は弱まっていく) ・1721年 ピョートル1世(大帝)は総主教の地位を廃止。替りに宗務院を設置し皇帝の管理下に。美術と宗教を切り離させた。1712年サンクトペテルブルグをしロシア革命迄続いた新首都に。 (1762年即位のエカテリーナ2世と共に西欧の政治制度を吸収し侵略と併合で列強入り。文化・芸術も発展させコレクションはエルミタージュ美術館の母体になった。ボリショイ劇場も建立した。 18世紀末からはツルゲーネフ、ドストエフスキー、トルストイ、プーシキン等の文豪を輩出した。1812年ナポレオンとの大祖国戦争に終止符、1904年の日露戦争、第1次世界大戦で食料・燃料難となりロシア革命勃発) ・1917年 帝政が崩壊し、教会は2世紀ぶりに総主教制を復活させるが、それも束の間で、今度は「無神論」を掲げるソビエト政権により厳しい弾圧を受ける。 ・1985年 ゴルバチョフのペレストロイカ政策で、再び最大の宗教団体として復活。 ・1988年 政府が全面的に支援して1000年祝賀祭を開催。教会の権威が急速に復活。 日本は明治新政府により1868年の神仏分離令、1870年の大教宣布で廃仏毀釈が進んだが、その後の市民生活に占める宗教(特に仏教)の密着度会いは低いままである事と対照的だと感じられた。 (2)美しく素朴さを感ずる広大な国であった事 モスクワは緑も豊富でゴミも無く道路清掃の散水車も頻繁に見かけ、赤の広場も街並みも教会を中心にしてカラフルで整然としていて、本当に美しい首都であった。勿論ボルガ川の両岸の原生林は期待通り美しく、船からボッーと眺め続けいても見飽きなかった。サンクトペテルブルグは中心部の美術館・宮殿・教会の華やかさは格別だが、一方で自動車も多く道路の渋滞がかなり酷かった。街外れにはコンテナ風のやや粗末な住宅?らしきものの一角もあり気になった。自然や街もそうだが、教会音楽、バレエ、民芸品等の文化度が高く、人々も素朴さを感じさせる人が多かった。ロシアが他国からの侵略や度重なる戦争を繰り返し撃退して来た歴史の概要を知った今、米国との大戦争の瀬戸際に立たされていても割と平然としていられる理由が何となく理解出来た気がした。日本へのお土産は、どこに行ってもマトリョーシカがあっていくつかは買ったが後半はもういいと思って他の品を探したが、帰国後定番だがやはりマトリョーシカがロシア土産らしいと好評だった。ホフロマ塗りの親しさを表すというスプーンも喜ばれた。ただ今回の旅行先はロシアの殆ど全てのように思っていたが、地図で見ると広いロシアの中のほんの西欧よりの一部に過ぎない事も再認識した。 4.番外編(緊迫する国際情勢関連) (1))欧米の経済制裁の影響は? 出発前に欧米によりロシアに経済制裁があった事は知っていたが関空で円をルーブルに替えていった。ところが少なくとも観光客への値付けは殆どがユーロであり、ルーブルで払うとレートに手数料がかかるのか割高になるので驚いた。ドイツとロシアの関係は表面上はともかく意外に密接な事の証左だろう。この問題で帰国後に大ニュースが待っていた。ブラジルでのBRICSの会合でBRICS開発銀行創設決定の報道である。これは戦後ずっと続いて来た米ドル・石油本位制への挑戦になるものであり米国経済にも大打撃を与える事になるので米国は絶対に座視し得ないだろう。欧米のロシア経済制裁の第2弾もあるようだし、今後どう展開していくのか経済に止まらず米国/NATOとロシアの軍事的衝突に至る事も充分あり得る大問題だ。100年前の第一次世界大戦、70年前の第二次世界大戦後初めての世界の覇権構造に大転換を齎す可能性が強い歴史的な出来事と思われる。小競り合い程度で辛うじて平和裏に進展していくのか本当に核戦争になるのか、世界は今瀬戸際に来ていると思う。 (2)ウクライナ政変はロシア攻撃の拠点作り 出発前に、ロシアの隣国ウクライナで暴動後のクーデター的政権交代で親米政権が誕生し、それに即座に対抗したロシアによるクリミア編入、東部ウクライナの親ロ派自治政府の発生、それを押し潰そうとするウクライナ政府軍の攻撃と、米国とロシアの間にかなり激しい角逐があった。旅行の間特にボルガ川クルーズ中は新情報も途絶えて久し振りにのんびりしたが、帰国後事態は緊迫度を増しとうとう7月17日にはウクライナ東部上空1万メートル超を飛行中のマレーシア航空機が撃墜されるに至った。攻撃したのがウクライナ政府か親ロシア側なのかまだ分からないが、私自身ははっきりした推論とその論拠は持っている。いずれにせよ、撃墜直前のイスラエルのガザ侵攻、マレーシア航空機撃墜、イラク北部のISISの攻勢は皆世界の覇権を巡る関連した動きである事は間違いないだろう。周辺国も全て各々多大な影響を受ける事は当然である。勿論日本の中国敵視策や集団的自衛権問題もこれらの動きと直結していて、米国ネオコンの指示に基づくものだろう。一般の日本人からすると信じ難いと思うが、米国は本気でロシアとの核戦争も辞さずの構えであり、中東ガザ攻撃やイラクの内戦やアフリカの資源争いに日本の自衛隊を下請けとして参戦させたいようである。米欧/NATOと連携して露中に対決し、米国から日本に対し一説では軍事費は20兆円、自衛隊員も沢山出すよう強い指示があるといわれている。本当はのんびりと川下りをしたり、こんな旅行記を書いていられるような平穏な場合では無いのだが。 (3)作家ミハイル・ショーロホフと手塚治虫 若い頃ドストエフスキーやトルストイ等の翻訳本を受験勉強そっちのけで読んだが、今回乗る船の船名のショーロホフは読んだ事が無かったので旅行前に短編を探し赤木かん子編の「戦争」(ポプラ社)に選ばれた「人の運命」という本を読んだ。ウクライナがソビエトの一員だった時代にドイツとの戦争(1941年~45年)に召集され人生を翻弄されるウクライナ出身の逞しく優しい兵士の物語で、戦争が人の運命を狂わす悲しみが心に響く名作品だった。ウクライナが地政学的にも本当に重要な位置にあるのは今も昔も変わらないようだ。同じ本に手塚治虫の「ぼくは戦争を忘れない/語り部になりたい」があり実際の被爆撃体験を基に人間狩り、大量虐殺、言論の弾圧という国家の暴力があった時代の事を語ってくれていた事も知った。昭和19年、勿論漫画は1冊も無かった時代、軍需工場への動員、空襲等について描かれていた。 4.終りに 大概どこの国に行っても一般の国民の多くは善良な人達の方が多い。ロシアはロシア正教会の影響なのか観光客の立場からなのか思っていたよりずっと純朴な人達しか会わなかった。しかしプーチンを支える人達の中にパミャーチと呼ばれる一団があるそうで、この存在があるので米欧/NATOの攻撃に曝されても今の所何とか対抗出来ているそうである。表面だけは自由な民主主義国の体面を装っているが、内実は昨今は特に隠しようも無くあからさまに米国のいいなりにさせられている日本の現状とは対照的だ。いくら天然ガスや北方領土の権利が欲しくても、米国と完全に敵対しているプーチン大統領との交渉が許される状況では無い筈だが、マレーシア航空機MH17の撃墜事故では米国の要請に拘わらずまだロシアの仕業と決めつけず非難をしていないのは注目される事だ。訪日の実現はもう無理と諦めざるを得なくなるのではないだろうかと思うが実現すると面白いのだが。私達も攻められてもかわす術を持って何度も復活する独立自尊の国になりたいものであるが、当面は軍事ではオスプレイの本土配備等本土の基地化進展、経済は消費税増税やTPPの多大な影響により弱者から順次脱落する社会が更に加速して、一層苦境に立たされていくだろう。しかしいずれの日かロシアの250年余続いた「タタールのくびき」ならぬ日本の「米国のくびき」から解き放たれる時が来るのだろうか。いずれにせよロシアは自然も宗教も音楽も文学もとても魅力的な国だった。その一端を見る事が出来て大変楽しく、心の糧になる旅行であった。… [more]

ロシア旅行(ボルガの船旅中心)とその後知った事 ロシア旅行(ボルガの船旅中心)とその後知った事

ギリシャ旅行(古代は神話と民主制国家の源、今は財政破綻のみ強調される国)で考えた事

1.はじめに ギリシャにはおよそ3000もの島があるというが、私は3つの目的でギリシャ旅行では人気のエーゲ海で無くペロポネソス半島主体の小旅行を選んで行って来た。 ①「若き日」に憧れていたがすっかり忘れていた古代ギリシャ文明・美術に直接触れる事。又、一時だが目指したオリンピックの発祥の地を見る事。 ②「民主主義」の淵源と言われる地で、そもそも古代ギリシャの民主主義とは本当はどんなものだったかを考え、現在の日本の「民主主義(もどき?)」の問題点を再認識し今後の参考にする事。 ③財務省は消費税増税の為に「ギリシャの財政破綻」を盛んにPRして一般の日本人を騙している。外国に多大な借金をしている財政困窮のギリシャと90数%が国内で消化される国債で賄う日本の財政の課題との関連性は全く希薄であるとの論点を強化する事。 (1)ペロポネソス半島とアテネ歴史の旅 最近のギリシャ旅行はエーゲ海巡りやメテオラネス修道院等の方が人気があるようだが、今回は古代ギリシャ神話や民主政治の発祥の地として輝かしかった歴史の舞台の中心地である「ペロポネソス半島とアテネを巡る旅」の企画は希望にぴったりだったので飛びついた。 ①オリンピア遺跡は今もオリンピックの採火をするヘラ神殿前の採火灯や2004年のギリシャ五輪の時も円盤投げ会場として使われた古代競技場もあるとの事で、一度は行って見たかった。 ②昔良く父に聞かされたが今は死語のようなスパルタ教育のスパルタは、アテネと拮抗して戦い続けて消耗した為双方共倒れとなり、その後長い間東ローマ帝国やオスマントルコ、ドイツ出身の国王等にずっと支配され続ける結果を招いてしまい、長い主権喪失期間を経てようやく1829年に独立した事や、独立後も2度の世界大戦、戦後の内戦等動乱続きで大変だった歴史の一端に触れる事。 ③何と言ってもアテネでパルテノン神殿を見て往時の勢威を偲びアクロポリス博物館、アテネ考古学博物館で古代ギリシャ文明や美のレベルの高さに触れる事。 ④バッセのアポロン神殿、ギリシャ正教会の聖堂、ティリンス遺跡、エピダウロス遺跡、ミケーネ遺跡、コリントス遺跡等でギリシャ神話の骨格となる舞台を見て、その後の争奪の歴史にも触れて、欧米の文明文化の起源の地がその後どのように展開していったのかに触れるのが目的だった。 (2)古代の民主制国家とはどんなものだったのか。現代にどんな影響を齎しているのか。 3年前のトルコ旅行でエフィソスに行った際ソクラテスも逗留した舞台でもあった話を聞き、昔読んだプラトンの「ソクラテスの弁明」を帰国後読み直して見てギリシャに行かなければと思った。又今回のギリシャ旅行ではプラトンの「国家」が今でも欧米の国家戦略立案者、特にネオコン思想の中心と言われるハーバード大学でも必須な基礎知識となっている事を知り、帰国後初めて読んで見た。昨今の日本の政治状況を見ると「民主主義は理想の制度では無い」という疑念が深まるが、約2500年も前のプラトンの「国家」では民主主義がファシズムを生み出し易い制度である事が語られていて、今の日本や世界各地の実状そのものであり、描かれていた事や人物像は現代にもそっくり通じるものであり自分のようなタイプの人間も批判の対象になっていたりして本当に驚いた。更に日頃日本には民主主義ですら実はちゃんと根付いていないし、むしろ後退している現状である事を再認識させられているのだが(司法・検察当局の権限が強大過ぎ、かつ恣意的運用も強過ぎて冤罪も多い)。日本でも地政学や国際関係論といった学問がもっと深く拡がって視野の広い人物がそれを政策に生かして国際協調を大切にしていかないと、折角アジアで唯一植民地化しなかった国なのに、時を経て「国家」に描かれたように権力者が劣化して政治(軍事)も経済も表向きはともかく実質的に完全に植民地化されてしまう危険性が強まって来ている。 (3)ギリシャと日本の財政事情は全く別物である 今日の一般の日本人には「ギリシャは財政破綻した国」であり「日本も消費税を増税しないとギリシャのように財政破綻してしまうから大変だ」という誤った認識が完全に刷り込まれて、ギリシャは財政破綻した貧しい気の毒な国と考えている人が多い(尤もそんな関心すらも無い人の方が多いが)。しかし、このプロパガンダは消費税増税を認めさせ権益を更に強化する為に財務省等がマスコミを動かし行われたものであり、全く関係もないギリシャにとっては引き合いにされて迷惑な話だろう。ギリシャは2010年にユーロ危機が叫ばれてから4年目を迎え予想通り破綻もせず今の所危機は沈静化している。ユーロ圏にとってギリシャは歴史のルーツであるという意味合いに加え、観光地・別荘地として無くてはならない存在であり、又オリーブやぶどう等の食料も豊富で、ドイツ等からの債務返済要求も当初の厳しい姿勢が徐々に緩やかなものになって来ているようである。ドイツ・フランス中心の欧州にとってギリシャは必要不可欠な国なので決して切り捨てられたりはしないだろう。 一方、貯蓄大国である日本の消費税増税の本当の目的は①消費税の輸出大企業への還付金により輸出大企業の輸出競争力を支援する事 ②法人税減税分に充てる事とが大半の目的である。この事は、これまでの消費税導入後の税収の推移等を調べれば明確に理解出来る事だ。又、「税と社会保障の一体改革」や「高齢化社会での社会保障費の増大に対処する為」という一見尤もらしい大嘘も消費税増税の決定と併せて年金制度等あらゆる社会保障制度の改悪が続く事で隠しきれなくなりつつある。アベノミクスは金融財政で無理やり株を急浮上させ少数の不動産・株式保有者は大いに潤い喜んだが、本当の成功である景気回復に必要な第3の矢の成長力・国際競争力の回復には繋がっていない。今後、経済特区で外国資本を誘致したり雇用条件を自由化して切り下げたりしても本格的な景気回復は困難である。遠からず(中国発になるか?)又々バブルが崩壊し、アベノミクスの失敗が明確になる確率は限りなく100%に近いと思う。一般国民も嘘を信じていたと皆気付く事になるだろうが、その時に後悔してももう遅いのだ。それにしても一般の日本人が同じ嘘に何回でも騙され続けるのも悪く、もう庇いようが無いと半ば呆れ半ば諦めて突き放して見ているしかない。 確かにギリシャの財政事情は悪くユーロの信認を崩しかねない存在のようだが、それとてドルの基軸通貨性を守る為に米国がゴールドマンサックスが中心になってユーロを相対的に弱体化さす為にギリシャを材料にして攻撃を仕組んだ事は知る人ぞ知る公然の事実だ。この状況を利用した日本の財務省は「消費税増税によって自らの権益を拡大する為」だけに、先進工業国で国民の貯蓄が著しく大きくリーマンショック時等も安全通貨としてドルも避難してくる程相対的にはまだ財政が健全な日本と、農業・観光国でドイツを始め他国からの借金比率の高くなりすぎた小国ギリシャでは他の条件は全く違う事を百も承知なのに「GDP対比の政府の債務比率の高さ」のみを取り出してマスコミを通じて多くの日本人の将来不安を煽り、「ギリシャのようにはなりたくないから何とか財政破綻を免れる為、辛かろうが増税に甘んじて社会保障制度を守ると共に子や孫の将来も守っていくべきだ」とマスコミを使って洗脳してしまっているのが実状だ。ギリシャの現状の一端を理解して、「日本の財政問題はギリシャとの関わりで無く独自な問題として考えるべき」という認識が必要である。本当に騙されるのもいい加減にして欲しいものだが、このまま国債増発と公的年金による株式買い支えだけで株高を演出しているとインフレリスクが高まり年金世代を中心に大きな負担増に繋がっていき弱者の脱落が消費支出の縮小、社会の不安定化に繋がっていくだろう。一部で喧伝されているが本来は遠い筈の、ヘッジファンドの狙う国債の暴落や金利急騰等の最悪の事態も視野に入りだして来るかも知れない。 2.旅行日程(2/23~3/3) 第1日目 関空~イスタンブール経由アテネへ 乗り継ぎが慌ただしかった。 第2日目 アテネからコリントス経由オリンピアへ 今回の旅はゆったりとした大型のバスでペロポネソス半島中に麓から山上まで連なるオリーブ畑とぶどう畑を見ながら走り回る旅だった。2004年のアテネオリンピックの時に作られたと舗装道路は驚く程整備されており、トンネルも片側通行で2本ずつ作られておりオリーブが美しいので快適だった。見所は1893年に掘られたコリントス運河だった(現在は小さな観光船が通れる程度)。 第3日目 オリンピア遺跡、考古学博物館見学後ギティオへ ・オリンピア遺跡はBC776年~AD392年迄約1000年間ゼウスへの奉納競技が行われた場所。遺跡中が野生の花々とオリーブ等の木々に彩られレスリングや競技場(2004年のアテネ五輪でも投擲競技が行われた)等各施設が古代そのままに残っていた。ゼウスの神殿や今も2020年の東京五輪でも聖火を採るヘラの神殿も時空を超えて厳かに存在していた。 … [more]

ギリシャ旅行(古代は神話と民主制国家の源、今は財政破綻のみ強調される国)で考えた事 ギリシャ旅行(古代は神話と民主制国家の源、今は財政破綻のみ強調される国)で考えた事

イスラエル旅行と、その後知った事

<はじめに> 今の世界情勢に多大な影響力を及ぼすイスラエルの実像を少しでも観たい、行けば何かが分かるだろうと思い、2013年2月末から10日間行って来た。旧約聖書も新約聖書も読んだ事は無いが、3つの宗教の聖地エルサレムに行きそのイロハも知りたかった。行って見ると思いがけなく美しい風景や、豊富美味な食事も良かったが、何といっても古代から現代に至る壮大な歴史・宗教の渦巻が強烈であった。旅行中やはり実力のある凄い国だと思うようになっていった。ただ他の旅行先の時は、帰国後1カ月程で旅行記も無邪気に纏める事が出来たが、イスラエルだけは何かまだ本質的な理解が足りな過ぎると感じ何も書けなかった。歴史・宗教についても知識不足だし、政治・軍事状況は錯綜しているので表面的知識だけでは不十分で、余程良く見極めないと安易に語れない問題も多く、帰国後に知識の確認や補充が必要でした。10か月経過してようやく最低限の情報の整理と自分なりの納得が出来たので現段階の到達点として纏めて、やっと辿り着いた基礎的判断材料としておきたい。 折しも、最近イスラエル中銀のフィッシャー前総裁が来年2月にFRBの副議長になるというニュースがあった。サマーズやバーナンキを指導した人らしいが、ユダヤ金融資本主義が裏で世界を支配しているという風説がまるでその通り表に現れたようなニュースだ。金融や政治についてちょっと知れば、世界は我々一般人の想像を超えたレベルで極く少数の権力者への集権化が進んでいる事が見えてくる。日本でも日銀の株主、日本の株式会社の株主構成や提携先を見ればおぼろげながら実態が分かってくるし、具体的事例を探して挙げる材料に事欠かない。又、日米欧のマスコミを支配していて僅かでもその実態への言及や批判を封じ込めようとしている。しかし、少人数の権力者集団が銀行、軍事力&検察・警察を握りながらマスコミを通じ情報統制を強化しようとしている実情を全て覆い隠す事は難しいだろう。現在米国ドル・石油本位制による単独覇権維持が難しい微妙な局面を迎え、激しい角逐が続いている事を知る人も少なくない。この問題の根底と今後の見通しを把握するのに良い考える材料を提供してくれる国がイスラエルだと思う。今回見た事・知りえた事を繋ぎ合せ、複雑極まりない世界の歴史・宗教・政治軍事状況に強い影響を与えているイスラエルが一体どんな国か、その一端でも正しく認識して、その力に圧倒されるだけでなく日本の美風・大切なものは何なのかを再確認して守っていく手掛かりにしていければ良いと考えている。 <旅程と概要> 第1日 関空→トルコ航空でイスタンブール経由テルアビブへ ・テルアビブ 空港は賑わっていた。玄関口にベン・グリオン初代首相の像がある。直ぐに空港から北へ走行したバスの両側はずっと菜の花が一面に群生していて、美しかった四万十川や宇佐神宮の川岸・指宿等の菜の花程鮮やかではないが、これだけ連綿と長く続く菜の花畑を見るのは初めてで、本当に綺麗な国に良い季節に来たものだと感激した。 第2日 テルアビブ着→アッコー→ハイファ泊 ・カイザリア テルアビブから北へ40kmの所にある紀元前後、初代ローマ皇帝アウグストゥスに従っていたユダヤのヘロデ大王が築いた街で、ここからペテロ・パウロがローマへ向かいキリスト教の布教を始めたとの事だ。美しい地中海が眩く目に飛び込んできて海岸の間近にある円形劇場跡や導水橋跡等を見ながら散策し、春風を楽しんだ。 ・アッコー  交通の要衝にあるこの街は歴史上十字軍とイスラム等の攻防・戦闘が繰り返された小高い眺望の開けた丘にある。十字軍の要塞も残っていた。現在は残存パレスチナ人が1/3居住しているが高い所はユダヤ人、低地がアラブ人と居住地が分かれているそうだ。オスマンの旧市街は世界遺産になっているが通過しただけだった。 ・ハイファ   … [more]

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イラン旅行と最近の中東情勢で感じた事

<はじめに> イランに9月26日から11日間旅して来た。「栄華を極めた古都と素朴な村を巡る古代ペルシャ・バスの旅」である。 一般的な日本人から見ると「イランは危ない国」のイメージが強い。確かに戦乱・動乱の続く中東は内戦・テロも多いだけでなく、比較的遠いし何故そういう状況になっているか分からないので敬遠するのは理解出来る。しかし、日本のマスコミ報道は欧米マスコミのキリスト教の立場を元にしてシオニズムで出来たイスラエルの影響を強く受けたプロパガンダ報道の追随が多く公平性に問題がある。マスコミ以外の情報も加味して見ると内戦の続くシリアを別にすれば、イランではこの旅行期間に本格的な戦争は起こらないしテロの危険も極小だと判断した。そして今後「イスラエル&欧米とイランの戦争が回避出来るのかどうか」を見守る上でより正確に理解する為に、自分の眼で本当のイランの現状も少し知っておきたかった。一時は米国の空爆の危険が高まったが、ロシアの介入や米国議会が慎重になった事等で回避された。そしてたまたま今回の旅行直前に、ローハニ新大統領とオバマ大統領の歴史的な電話会談があり、又11月初旬からジュネーブで開かれているイランの核開発問題協議が大詰めを迎えている。イスラエルやサウジアラビアの反対が強く協議成立迄に簡単にいく筈はないが、この成否は中東地域だけでなく世界情勢の安定に多大な影響を及ばすので協議の行方を固唾をのんで見守っています。 中東情勢についての基礎知識は、現政権の政策に批判的な元官僚の孫崎享氏(元イラン大使)や天木直人氏(元レバノン大使)の著作やメルマガ、JSRメルマガ他の情報がより公正で信頼性が高いと考えて参考にしている。又、小室直樹氏の「イスラム原論」や「アラブの逆襲」も読み直し、理解出来る範囲で(旧約聖書や新約聖書、コーラン等を読んでいないので充分な理解は難しい)それらも照らし合わせながら自分の感じた事を纏めてみた。日本の人達が国際情勢に多大な影響を及ぼすイラン問題やイスラム教を偏った情報だけでなく、少しでも公正な立場から考えイラン等イスラム圏の多くの善良な人達と友好関係を築いていけたら良いと考えています。イラン(ペルシャ)は決して侮れない実力を持ち世界をリードしてきた輝かしい歴史・文化・宗教が存在し理解を深める事でより心豊かになれると感じさせる旅でした。 <私の見たイランの現状と背景> 現在は人口7000万人余のイラン。豊か過ぎる親欧米産油国のカタール航空便でカタール経由まずは1260万人が住む首都テヘランへ。街はイラン高原の麓で海抜1500Mと高く、北に4000m級の山々が並んで聳えていて美しくホテルではエアコンを切って過ごした(空調は全館一律タイプだが)。山の向こうはカスピ海で南岸は緑も豊かで冬は雪も降るという。テヘラン市内は鉄道や地下鉄の整備が充分でなく南北のメインストリートは酷い渋滞(ガソリン不足の筈だが)で悩まされていた。今は欧米主導で日本も追随した経済制裁で、飛行機の部品が供給されず運行が不安定な為バスで国を縦断しようという企画の旅であったが、却ってよりイランの魅力に浸れる旅だったと思う。 1.宗教=イスラム教関連について ・イスラム教の教義と一般イラン人のイスラム教&現指導者層への思い 使徒モハメットが西暦610年メッカ郊外でアッラーの神の啓示を受けたとして始めたイスラム教の教義に六信(神・天使・啓典・使徒・来世・定命)五行(信仰告白・礼拝・喜捨・断食・巡礼)があるようだ。異郷・異教の私だが、トルコやエルサレム、イラン等を旅して訪れるイスラムのモスクはどれもとても好きな空間です。礼拝は他のイスラム教国では決められた通り5回行う人が多いが、イランでは3回で簡便に済ます人も多いそうで全く行わない人も3割程度らしい。今回のツアーガイドは日本に6年間暮らしたイラン人だったが、預言者モハメッド布教以前のアケメネス朝ペルシャやササン朝ペルシャ時代等古代の非イスラムの歴史・文化の豊かさを誇りにしていてイスラム一色ではないようだった。前回の大統領選挙では投票で下位だったにも拘わらず、イスラム教指導者達の推薦で強硬派のアフマディネジャドが就任したいきさつがあったらしく当時も反対のデモがあり、今回選挙では自分達の選んだローハニが新大統領に選ばれたので米国との関係が改善されそうだと皆大歓迎だったそうだ。 ・偶像崇拝禁止の意義 各地に大小いろいろなモスクがあったがテヘランは少ないと感じた。モスクの中はどこも偶像は何も無く、ただ壁面や天井は美しく床に絨毯やゴザも敷き詰められた心休まる空間でした。イスラム教の偶像崇拝禁止は、バーミヤーン遺跡(アフガニスタン)の大仏の破壊等何であんな乱暴な事をするのかと思っていたが、アッラーの神(神だがヤハウェと同一ではない)を唯一絶対の神としモハメットですら最後の使徒で最大の預言者として位置づけられていて偶像化していない。又イスラム教の信徒間は平等で王様も貧民も神の前では同列だそうで宗教指導者はいるが聖職者・僧侶階級を持たない事は、僧や神官を別格扱いしている日本人には理解しにくい所だ。それでも異教徒の私でも、モスク構内に入ると何とはなしに漂う温かさや優しさに共感や安らぎを感じて心が伸びやかになるのが嬉しい事です。 ・ハラール(食べて良いもの)とハラーム(食べてはいけないもの) テヘラン市内のバザールの中の食料店に質量とも豊富な食材が並んでいるのに驚いた。くるみ・ピスタチオ・ピーナッツがあまりに安くておいしかったので、大量に買って来てお土産にしたが、友人・知人から好評しきりでした。欧米日等の経済制裁により4年間年率30%のインフレに苦しめられているが、それでも食料自給率は100%で輸出もしていて食料問題はないとの事(但しテヘランは家賃が高く、殆どの人が仕事を2つ掛け持ちで働いていて、医師が夜タクシーの運転手をやる位との事だった)。アルコール厳禁なのでノンアルコールビール(但しレモン味等)で過ごしたが痛痒は感じなかった。ケバブも美味だが、ホテル・レストランはどこへ行ってもほぼ同じパターンのてんこ盛りでとても食べ切れなかった。豚だけでなく牙や爪がある動物が禁止されている(ハラーム)が制限は複雑で(意外に解釈は柔軟らしい)、食べて良いものはハラール表示のあるものに限定されているとの事。いずれにせよ食べ物はふんだんで果物も何でもあって皆とてもおいしいし、スイーツはアルコールが飲めないので発達していて、日本に負けず劣らずのおいしいお菓子が豊富でお土産にしたら大変喜ばれました。 ・イスラム教シーア派の国 イランは世界のイスラム人口16億人のうち約1割という少数派のシーア派が殆どの国だ。スンニ派と元々の教義に大差は無さそうだが、モハメッドの血統を継ぐイマームをいだくか、血統にとらわれないカリフを信者代表とするかの違いがある以上の事はまだ理解していないのでこれ以上触れない。イスラム教第一の聖地メッカのある多数派のスンニ派の国サウジアラビアとは関係が悪く、シリア内戦でもイスラム少数派のアラウィー派のアサド政権支持のイランと反政府軍支持のサウジアラビアとは敵対して主導権争いをしているようだ。勿論イスラエルや欧米の諜報組織も深く絡み石油利権を巡って争っているようだが、中東のより根本的な問題はパレスチナ問題だ。それにカダフィーやムバラク等独裁的政権が倒れた現在、サウジやカタール等湾岸国の王家の存在はまだ盤石だろうが微妙でに複雑に絡み合っているので正確な把握は難しいが、出来るだけ正確に知ろうとしている所です。 今回はイスラム教シーア派第2の聖地ゴムでマスアーメ廟を見学。ここはイスラム革命の発端となった地でホメイニ師もここで学んでいた人口78万人の宗教保守派の牙城。多数の参拝者と教学者達がいたが、皆ホメイニ師の怖いイメージとはほど遠くにこやかでゆったりとしていて教学者に声を掛けたらきさくで一緒に撮影に応じてくれた。ゴムを本拠にする現指導者のハーメネイ師達はローハニ以外を選びたかったようだが、52%の選挙結果には抗えなかったようだ。 2.政治&軍事関連 ・原子力 イランは医療用アンソトープの生産を行うテヘラン原子炉の稼働の為20%高濃縮ウランの自国製造を進めていると主張しているが、核保有に繋がる90%以上の高濃縮ウラン製造に繋がると警戒されてきた。そこでイランはIAEAの査察受け入れをするので経済制裁を大幅に緩和するよう主張している。それでも今回協議成立迄至らず20日に再協議となったようだ。イスラエルは自国の安全の為に核武装していて米欧も暗黙で認めている事は公然の秘密だが、中東の他の国の核武装はイスラエルが絶対に認めないので米欧・IAEAも認めない。今回イランがIAEAの査察を認めてもイスラエルが協議成立に反対なのは、核保有せずともイランの影響力の強大化を警戒しているのだろう。イスラエルは経済制裁の緩和を極小にすべく強硬に主張していて大詰めの段階だ。今回旅行時テヘランからイスファハンへバスで南に向かう道中に2か所核関連施設が遠望できる所があったが、走行中の車中からの撮影すら禁止されていました。 ・パフレヴィー時代と(ホメイニ師らの)イラン革命の見方 モハンマド・レザー・シャー・パフラヴィー(パーレビ国王)は父の開いたパハラヴィー王朝の2代目。1970年代は米国との関係は良好で最恵国待遇を得て最新鋭の戦闘機や旅客機を供与される等イラン近代化(開発独裁)を推進した。又ヒジャブの着用禁止等の女性解放も推進したが、近代化を嫌うホメイニ師らのイスラム法学者や傀儡政権への国民の反発等でアメリカ大使館人質事件等が立て続けて起こり、最終的に国王は国外追放となった。以降米国との敵対関係が続いて来ていた。今回の旅ではテヘランのサーダバード宮殿で当時のペルシャ絨毯等の宝物を見たが実に華やかであったがイランの人達は敬遠しているとの事で、近代化の時代はたった2代だけで元のイスラム教国に戻っていった事が分かった。ちなみに現在は旅行者もヒジャブ着用が義務付けられていたので妻達も滞在中ずっと着用していた。女性の社会進出はまだまだとはいえ、学生も多いテヘランで大学生の7割が女性だそうです。 3・主に古代を偲ぶ旅行内容 ・テヘラン 考古学博物館では古代ペルシャの展示物が多かったがゆっくり鑑賞する時間不足でした。宝石博物館(イラン中央銀行の地下)では歴代王家のまばゆいばかりの財宝を見学した。 ・カシャーン 人口27万人の王の道(スーサ~ペルセポリス)沿いにテヘランから南へ約3時間のオアシス都市。欧米列強の圧迫下にあったカージャール朝の宰相アミール・カビールが更迭後に暮らし暗殺された世界遺産のフィーン庭園は噴水・池が美しくまだ眼に浮かぶ。バラの花も綺麗だった(バラはイランからイギリス等に拡がったとの事)し散歩は実に快適であった。有名なカシャーンの絹の絨毯は懐具合に関わらず見ると買いたくなるのが必定なので眼を瞑ってパスしました(トルコ絨毯よりこちらが本場だそうです)。 ・イスファハン 途中ピンクの石作りの家や石畳の続く素朴なアブヤーネ村に立ち寄り。おばあさん達が、凄い田舎なのに素敵なピンクのバラ模様のスカーフをしていて似合っていて土産にしようと見たらメイド・イン・ジャパンだったのでパス。この人口僅か数百人程度と思われる田舎村の洞に数名の若者の写真が飾ってあったので何か聞くと、皆1980年~88年迄続いたイラン・イラク戦争の戦死者を祀っているとの事で驚いた。 イスファハンはテヘランから南へ40km。古くから政治・文化・交通の中心の街だったが、16世紀末はイスラムのサファヴィー朝の首都として世界の半分と言われる程栄えた都市。まず創建8世紀のの精密なタイルの美しい金曜モスクから、広大なイマーム公園を一望出来るアリパク宮殿へ。素晴らしい細工を観ながら急な階段を上り、室内楽団もいた所を更に上るとテラスからの眺望は素晴らしかった。広大なイマーム公園は夕方には家族連れが芝生の上に輪になってゆっくり歓談を楽しむ光景が実にのどかでした。人々の日本人旅行者への好意も随所で感じられました。翌日もイマーム広場をゆっくり堪能。本当に広大で周囲にはトルコ石(本当はイラン産)やタイル、ラクダの骨に書いた細密画等多種類の伝統工芸品店が立ち並び時間を忘れて見入って回り何点か購入。決済はドバイ経由であまり歓迎されなかったがクレジットカードも使えました。イマームモスクの細工は素晴らしかったし、公園を一周する馬車も楽しんだり。イギリスのものと思っていたポロ競技も発祥の地はここイスファハンだったようです。是非再訪したい所です。 ・アクダ&ヤズド ゾロアスター教の街アクダ経由ヤズドへ。高いミナレットの金曜モスクを望んだあと、アーテシュキデで拝火教神殿で1000年以上燃え続けているという神秘的な”永遠の火”を観た後、鳥葬が行われていた沈黙の塔という丘を歩いた。イスラム教は本当は異教徒に寛容で共存してきたのが事実のようです。 ・パサルガダエ パサルガダエへ向かう途中のアバルクで樹齢4500年前の糸杉の周囲を散策。糸の名前が全く似合わない巨木ですが、掘り出したものでまだ半分は埋まっている状態との事で、実に若々しく感じる樹でその姿は眼に焼きつき忘れられません。 ペルセポリスの北東87kmにあるパサルガダエ。アケメネス朝・ペルシャ帝国の最初の首都であり、紀元前546年に、キュロス2世の手によって建設が開始された場所。大昔のキュロス2世のものと伝えられる墓には強い存在感があった。。 ・ペルセポリス 史上最初の帝国と言われるアケメネス朝ペルシア帝国の都。最盛期(リビアから中央アジア迄またがる大帝国)を迎えたダレイオス1世(ダーラヤーウ1世)が建設した宮殿群。クセルクセス1世、アルタクセルクセス1世等が実際に行政をした場所と言われている。山裾に自然の岩盤を利用して作られている広大な宮殿跡だ。今回は間近な森の中の大臣達も泊ったコテージ型ホテルだったので、初日はクセルクセス門から夕日が沈みゆく日没前と、翌日は早朝から大階段、クセルクセス門、百柱の間、謁見の間、東階段、ハディーシュと全体をゆっくり歩くのと2回も訪れる事が出来て史跡を満喫した。東階段の壁に描かれた当時の多くの属国群の民族毎に特徴あるレリーフが興味深く、往時の権勢が偲ばれました。 ・シラーズ 最後が南端にあり、詩人の街と言われるシラーズ。紀元前700年頃からの街だが、13世紀以降学問の中心地となり、詩人サアディーやハーフィズ、哲学者モッサー・マドラーらを輩出し芸術や文学が花開いた。一時衰退したが1750年、ザンド朝が起こると1762年にシラーズはその都となり、カリーム・ハーンは要塞や城壁、バザールなどを改修再建し繁栄を取り戻した。今回の旅行ではローズモスクに立ち寄った。小さいモスクだが名の通りピンクのモスクで内部もステンドグラスも風情があり印象に残った。 4.カタール シラーズからドーハへ飛び、夕方まで市内観光。ラクダ市場やパー・アイランド、ゴールドスーク、スーク・ワキーフ、イスラム芸術館、カタールアルジャジーラの本社前等を慌ただしく見物した。イランの古い歴史建造物とは一転して対照的過ぎる豪華な街が続く。7人に1人は億万長者という国だけあって物凄い繁栄ぶりだったが、ここは日中39℃と暑かったのと巨大なビル群や豪華なヨットが多数等別世界なのでちょっと馴染みにくいと感じた。夜ドーハを発って関空へ。 4.最後に 今年は2月にイスラエル旅行し今回のイラン旅行と併せ、あまり知らなかった世界に首を突っ込んだ1年でした。やっとイラン旅行について纏めたので次にまだ書けなかったイスラエルについて纏めてみます。私は数年前まで政治と宗教についてあまり深く関心も関わりも持たず過ごして来たが、この2つについて皆が少し真剣に向かい合う事が必要な時期に来ていると思う。 ・政治 湾岸戦争、イラク戦争、各国のアラブの春、シリア大内戦、イラン核開発問題は根底にパレスチナ問題と深く繋がっている事が見えてきた。湾岸戦争やイラク戦争で多額の資金を出して米国を支えた日本。戦争が続き財政難に喘ぎ出した米国。日本人の生計にも大きな影響を及ぼして来た。今後更に大きな動きが予想される。目先の利害にのみ捉われず、国際情勢も踏まえてキチンと正しく見て他人任せにせず関与していく必要がある。 ・宗教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。いずれも1神教で元々の神を共有しているようだ。それら同志の骨肉の争いの歴史と論理は今後も少しずつ理解を深めていきたい。八百万の神を祀る日本、靖国神社だけを特別大切にする人達もいて有力だ。仏教も葬式主体で僧の在り方にも疑問もある。宗教は無宗教も含め価値観の根底にあるもので、狭い道徳を一律に押し付けるのでなく、各個人が比較宗教学的に見比べて考えていく必要がある。 権力を握っている人達の専横で全てが決められるのでない、空気を読んで従うだけで無く、しっかりした考え方で草の根で繋がっていく時代にしていきたいものだとつくづく感じています。… [more]

イラン旅行と最近の中東情勢で感じた事 イラン旅行と最近の中東情勢で感じた事

ドルの弱まる時代。どう対応する?

<はじめに> 新聞・TVでも、アメリカの「債務上限問題」を報道したので、一般の日本国民もやっと「アメリカは大丈夫なの?」と感じ始めた。殆ど多くの人が「それでもアメリカは大丈夫」「債務上限額はこれまでもずっと何十回も上げられてきたので今度も問題ない」と考えそこで思考を停止し、これまで通りにその枠内で行動する。だが米国単独覇権が終わりに近づいていてサインが色々と出だしている事には無頓着だ。今の国際金融制度に代替する制度が明確化するにはまだまだ時間を要するが、近い将来大きな変革が起こる歴史的時代を迎えている事は確かだと思う。この事を指摘する著作・報道も少しずつ増えて来たが、今回はまず「オバマ発金融危機は必ず起きる」山広恒夫(ブルームバーグ・ワシントン支局)著に沿ってその骨格を主体に纏めて見た。 <今、草の根の日本人が認識すべき事> 米国ドル基軸体制に絡めとられた日本は米国の植民地同然になりつつある。どう対応すれば良いのか名案は無いが、まずは現状を的確に把握する事から始め自分の出来る範囲で対抗するしか無い。   1.大きな流れの基本認識 米国は「建国以来の第1合衆国銀行が創設された18世紀末を起点とする経済発展の長期波動の転換点に達して来ている」との認識が必要。 ①1971年・ニクソンショック=金ドルの交換停止でドルが現実の価値を失い、米国は基軸通貨国としての矜持をホントは40年余前で既に失っている。 ②1985年・プラザ合意。この時も日本を犠牲にして危機を脱出した。日本は失われた10年の時代に突入し、以来ジリ貧に。 ③2008年・リーマンショック(住宅金融のバブル化とその破裂)は「100年に1度」でもなければ、既に克服されたものでもなく、今後のオバマ発の本格的な金融危機の序曲に過ぎない事。 2.QE(FRBのニューマネー供給)の現状 オバマが推進したリーマンショック対策の金融規制改革法は「偽りの金融改革」だった。オバマは「ヘッジファンドのお友達」。FRBも大量のマネーを投入して金融機関を救済した。金融機関はただ同然で資金を調達して利益を上げ新たなバブルのリスクを世界中にまき散らしただけで、本質的な問題は何も解決していない。FRBや金融当局者は「精神の無い専門人」。物価指数やGDPの伸びが下方に触れるとデフレ恐怖症にかかり、ガソリン価格・教育費・医療費・交通費・食品・自動車&家屋の修理費等の大変なインフレを実感出来ず、一般の米国民や他国への配慮は全く無い人達です。 ①QE1(09.3~6ヶ月間)→FRBが米国債3000億ドル購入&住宅ローン担保証券MBSを1兆2500億ドル他、合計1兆7250ドルで金融機関を救済しリーマン危機をひとまず先送りし切り抜けた。 ②QE2(10.11月~11・6月まで)→FRBは6000億ドル購入&MBS償還金3000ドル購入。米国では豪華客船クイーン・エリザベス2世号だと大歓迎されたが、R.マンデルコロンビア大教授は本当は「世界経済へのテロ行為である」と言及した。バーナンキは「実態は米国の金融システム=ウォール街を力強くするウォール街限定の振興券」である事を認めていた。 ③QE3(12.9月~)→月額400億ドル購入。雇用市場が改善する迄。既に開始後1年以上経過しており、縮小観測もあったが縮小出来ず。取りあえず当面半年程度の延期と見る向きが多い状況。中国は米国債の持ち分を縮小する傾向である。サウジアラビアですらシリア空爆問題を契機に米国と距離を置き始めたようだ。もうどこも買い支えるのが難しくなりつつある米国債を日本だけがアベノミクスで買い増ししている異常な事態になっている。これは「基軸通貨の緩やかな減価政策」であり、21世紀の「米国版徳政令」であるといえる。この事を「長期的安定に沿ったインフレ」等と言って誤魔化して債務を帳消しにする構えでいる。しかも、この過剰流動性が世界経済を混乱させて来たし、今後も米国以外の国が混乱の影響を背負う事になるのであるが、米国は他国の痛み等我関せずの構え。 ニューマネーの供給だけで「最大限の雇用」を確保する等は夢物語に過ぎない。金融関係の雇用者が少し増え報酬が上がっても、利益至上主義に凝り固まった経営者は労働者の削減と賃金引き下げしか考えない。マンデル教授も「基軸通貨であるドル相場の下落は海外のドル保有者に税金を支払わせる事に繋がる」と警告している。 3.今後の展開予測の一例と日本の一般国民の対策 ワシントンのシンクタンクは債務上限問題は2014年2月7日まで引き上げられ今回はデフォルトを回避したが、この「非常手段は長続きしないだろう」。債務上限の新たな引き上げ期限が到来する時の債務上限は約6000億ドル増の17兆3000億ドルと予測。多額の税還付を行う時期と重なることもあり、次回の引き上げ期限は2014年3月頃迄しか延長出来ないのではないかとも言われている。ここを乗り越えるとフレディマックからの配当金の支払いも得て数4半期息がつけるとしているようだ。今後の展開について正しい情報を常に把握していく必要がある。 日本でも、金融当局に近い立場の人や既に優良な株式を保有している人達、それに自己資金を金融資産と投資資金とに厳格に区分管理出来てプロ顔負けの実力のある人はともかく、それ以外の一般人は日本政府&金融機関からのあの手この手の株式&債券購入への制度的誘いに負けず市場と距離を置き(今からの市場参入は、当面はまだ大丈夫でも、いずれバブル崩壊時に逃げ遅れて鴨葱の類になる公算が強い)価値観を問い直し物を大切にして、まだまだ多い無駄を省き、信頼出来る人達と連携して籠城するしかないだろうと考えています。… [more]

ドルの弱まる時代。どう対応する? ドルの弱まる時代。どう対応する?

脱原発カテゴリについて

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電気は足りているのに政府が原発再稼働を強行する理由は2つある。

1.核の原料プルトニウムを必要とする人達がいる事
2.稼働させないと資産扱い出来ず、電力会社の経営に大きなマイナスとなる事。

原発推進の原子力村の中核、内閣府原子力委員会(近藤駿介委員長)は原子力政策大綱の改定に当たり推進派5名だけで決定権を握り原子力推進体制を維持しようとしている。原子力の安全規制を担う新組織として9月に発足予定の「原子力規制委員会」の人事は近藤の右腕の田中俊一を委員長にしようとしている。この双方に反対である。10年後原発ゼロを目指す国民の生活が第一を支持して情報を整理していく。

ICRP〔国際放射線防護委員会)の勧告では年間被曝量は1m㏜が一般公衆の1年間の人工放射線の限度だったのに、福島原発以降は100m㏜以下なら安全という基準に変更してしまった。アメリカにおける汚染地区からの移住しきい値(初年度の年間総合被曝)は20m㏜、以降の年は5mSvであるのだが。100m㏜以下なら安全と論じる全ての論者に反対です。

政府は食べて応援とガレキ処理の拡散により被曝を全国にばら撒き、福島の被曝被害が突出して目立たないようにして、被曝との因果関係を曖昧にし認定を厳しくしようとしている。一方で移住をしにくくして住民を被曝被害の研究材料にしようとしているのか。

食べて応援とガレキ拡散を愚策の最たるものと位置付け、被曝回避の最良策は移住と考えて少しでも移住者が増えるよう情報を整理し拡散していく。



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原発問題を考える

2011年12月25日
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大阪市庁舎イルミネーション

はじめに

3.11の福島原発事故は本当に衝撃的な大事件であった。以降9カ月余が経過したがやっと今後の対応について政府・東電の方針が固まって来たようだ。その中で最小限把握した方が良いと思われる情報を纏めて見た。私は何故反原発・脱原発の気持ちがどんどん強くなって来たのか、今後具体的に何が出来るのかも考えて見た。

論点は、1.事故原因 2.賠償問題 3.責任問題 4.健康被害 5.原子力政策の5点。

皆、相互に絡みあっているが最大の問題は
内閣(背後の米国)・経産省・東電・裁判所の一糸乱れぬ連携で、損害賠償を極小にして東電を守り抜き今後も国策で原子力を推進するスキーム作りが強行された事である。
不条理過ぎるこのスキームは、「広範囲に存在する被災者や自主的避難者」だけでなく国民全体に厳しいものになっている。

これに対する抗議が全国各地で連日繰広げられているが、国のなりふり構わぬ推進姿勢は狂気と言って良い位である。これ程まで安全神話も安価神話も崩れたのに、未だに断固推進するのは軍事的要因と原発推進者達の人間的感性の欠如なのであろうか。しかしいくら軍事的要因も大切だとしても被曝被害は今後拡大が続き実態が明らかになっていくので、反・脱原発運動が途絶える事はなく、これからも年々活動が更に具体的になり分厚く継続していくのではないか。

1.事故原因

事故原因は政府・東電が必死に言い続ける「想定外の津波による」ものではないと思う。

(1)事故の原因は津波でなく地震で強度の弱い部分が損傷して発生した。
(2)地震の原因が人工である可能性はまだ完全に排除は出来ないと思う。
(3)福島第3・第4の爆発は政府・東電が隠蔽したい重大事実が隠されているという疑念がある。

原因を究明する為に政府と独立した形で国会に設置された「事故調査委員会(黒川委員長)」は12月19日福島市で初会合した段階。事故調査委員会の10人の委員に真相解明を期待したい。
4つの作業チームで▽事故原因の究明、▽健康や環境などへの被害状況の調査、▽これまでの国の原子力政策やエネルギー政策の検証、▽調査を踏まえた政策提言を行うという。

これとは別の「政府事故調査・検証委員会」が12月26日(月)に発表する中間報告は事前にマスコミと事前レクすると上杉氏が暴露する等、信憑性に強い疑問を感ずるものになりそうだ。

この問題を追及している個人・団体は多い。彼らの真摯な取り組みも含め事故原因の真相については私が充分確信した段階で別途論じたい。

2.賠償問題

(1原子力損害賠償紛争審査会(文科省・会長=能見善久・学習院大教授)
原子力損害の賠償に関する法律(以下“原賠法”と略称)第十八条に基づいて組織された。

http://www.env01.net/frommanager/2011/fm2011_26.htm (後半No693の部分)

既に19回会合開催。
12/6に指針をまとめた。骨子は避難指示区域外23市町村約150万人(うち子供・妊婦は30万人)を対象に原発賠償1人8万円、子供・妊婦は40万円とした。自主避難者と滞在者は同額である。福島県南地域の白河市や会津地域の会津若松市など26市町村は対象外となっている。
福島佐藤雄平知事が対象範囲について全県にするよう要望し、政府は検討を約している。
3月15日~4月22日に政府が屋内退避指示を出した、原発から20~30キロ圏内の住民への賠償額を、8月にまとめた中間指針で「1人10万円」としたことを踏まえたもの。
来年以降は今後協議していくとの事だ。
この内容では不十分過ぎる。私達普通の国民も論議を注視して、より納得のいくものにする為声を届けるチャレンジが必要だろう。

(2)原子力損害賠償支援機構法

http://ja.wikipedia.org/wiki/ (ウィキペディア)

8/10公布・施行の法律。原子力事業者(東電)の損害賠償のために必要な資金の交付等の業務を行うことにより原子力損害賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給等の確保を図ることを目的で9/12設立。(理事長杉山武彦前一橋大学学長)資本金140億円(政府・電事連12社折半)被害者からの損害賠償についての相談も応じるようだ。

本来あくまでも原子力損害賠償の迅速かつ適正な実施の為に出来た機構であり、東電を救済して貴族的待遇を続ける為でない事を折に触れ言い続ける必要があるだろう。

3.責任問題

(1)現状は殆ど責任を逃れ責任者達は安泰なままである
政府・東電は飽く迄も事故は「想定外の津波によるものなので東電に損害賠償義務は無い」という姿勢を貫くつもりのようだ。その象徴である清水元社長は数億円?の高額の一時金(退職金でないと主張)を受領後消息は一切聞こえて来ない。せめて被災者に高額の寄付でもしたらどうか。
12月社員には基準内給与の1ヶ月分のボーナス(一般職組合員平均37万4千円)を支給した。 例年のほぼ半分だが原発被災者達が継続して苦しんでおり先の見えない人も多い現状と対比すると支給する事自体考えられない無神経だ
電力料金の原価に社員保養所の維持管理費・年8.5%の高利の補助金付き
財形貯蓄も含まれているという。こんな制度を維持させてはいけない。東電は既に9千億円の公的資金が投入されており、更に150万人対象の損害賠償資金の6千億円が投入される予定との事。実質、皆国民の税金からの支払いなのだ。

普通の国民からすると原発被災者とのアンバランスは限度を超えているように見える。国策推進の中核・東電はかすり傷程度で安泰のままである。経産省・保安 院・原子力委員会等原子力村の住人も何の処分も無く、ほぼ同様に安泰のままだ。2012年4月に原子力安全庁を環境省下に設置すると言うが、官僚だけが何 があっても身分は安全で、問題を起こすと組織が拡大・焼け太りするようでは道理に著しく反しており、今後国民が納得し物事が円滑に進む筈はない。国民を舐 め過ぎてはいけないだろう。

(2)責任追及の動き・波及の現状
鋭く東電の責任を追及する植草氏ブログ
5月段階→ http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-4e52.html

12/20日経で西沢社長は経営責任は2012年3月の支援機構と作る「総合事業特別計画」で取るとの事だ。勝俣会長達当時の経営陣は辞めるとの情報もあるが彼らの一時金は清水元社長同様ほぼ満額支給されるのだろうか?キチンと眼に見えるような責任を取って頂きたい。

最近の被災者の怒りの矛先は経産省にも向かっている。それはそれで必要な事だが、東電のこのままの「実質国有化」の名の下の責任を取らないままでの税金による救済・生き残りは資本主義の本旨からも、人道上の見地からも許容出来るものではない。本来は経営者の刑事責任を厳しく追及すべきなのだ。弱者の小悪事には厳しく超大物は何をしても咎められない国で良いのだろうか。

こ れ程までに責任が曖昧なのに、マスコミは話題を他の出来ごとに逸らし責任には殆ど触れないのは本当に異常である。今でも事故当初日経記者が記者会見の質問 で「勝俣会長様」と言った言葉が耳に残る。これではこれからもネットや街頭での一層激しい東電指弾の嵐は止むことは無いと思われる。批判者の数が多く筋も 通っているので警察等の強権でいくら封じ込めようとしても到底難しいであろう。

4.健康被害

(1)これまで健康被害はどの程度あったのか。
こ れまではっきりしている死亡者は作業者等5名のようだが(上杉氏ツイート)、東電は吉田前所長の食道がんも今回の被曝との因果関係を否定している。これは 現在の医学でまだ直接の因果関係の存在を立証出来ないのをいい事に、完全に白を切ってしまう姿勢のようだ。大量被曝で死があり得るが、がんは全て数年後に しか発症しないから9ヶ月後のがん発症は被曝が原因で無いという話は本来は通用しないのではないか。大量被曝の場合は早い段階でがんの発生が起こり得ない のか?素人の私は医学的根拠は無いが、本当はほぼ100%近く因果関係があるだろうと推定している。

(2)その他の健康被害について現状必要な基礎知識
<核種>
・放射性ヨウ素
事故当初は大量の放射性物質が排出されたので放射性ヨウ素が話題を占めた。当時も今も喉の不調を訴える人は多いようだが発症が多発するのは数年後とされており今後要注意。
・セシウム137
最近は半減期30年のセシウム137が問題になっている。福島原発から放出されたセシウム137は広島型原爆168個分とされている(細野原発担当大臣・23日の衆院科学技術イノベーション推進特別委で)。
その影響は体内の慢性被曝により、細胞の発育と活力プロセスが歪められ、体内器官(心臓・肝臓・腎臓等)に悪影響を及ぼすとされている。(その毒性について茨城大・久保田護名誉教授の翻訳自費出版がある由)
今の所因果関係は全く不明であるが、急な心停止について等のtwitter情報は頻繁に眼に触れる。
・プルトニウムとストロンチウム(武田邦彦教授)
プルトニウムの毒性
http://takedanet.com/2011/03/32_f654.html
ストロンティウムの毒性
http://takedanet.com/2011/10/post_81fe.html

<海洋汚染のリスク>
NAVERまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2131829810240813801
この情報がどこまで信頼性が高いのかまだ確信していないが当たらずとも遠からずではないか。充分留意し正しく警戒すべきであろう。

<がれき焼却のリスク>
武田邦彦 (中部大学): しっかり反論:瓦礫引き受け・・・量と濃度の錯覚
http://takedanet.com/2011/10/post_5a76.html
現在のガレキ受け入れ自治体一覧
http://one-world.happy-net.jp/ukeire/

ガレキ焼却受け入れを巡って全国で激しい攻防が続いている。私は福島の方々には申し訳ないが福島の原発近辺等に閉じ込めるべき派なので全国バラマキ希釈作戦には反対です。しかし既に受け入れ済みの東京、受け入れ表明の大阪等ではどの程度危険か実態を充分承知した上で対応を考えていくしかない状況になっている。

5.原子力政策

(1)政府の原発収束宣言
信じられない事だが政府は12月16日に工程表の第2ステップ冷温停止状態を達成したと発表。これを受けてIAEAの天野事務局長はこれを支持。来年1月からストレステストの結果を評価するとの事。停止中の原発の全面的再開に向けて動き始めている。
12月20日→日経
又12月20日、米政府代表も日本政府の収束宣言を支持した。

しかし地下にメルトスルーした核燃料が地下水と反応して爆発しないか、地下水を通じて広範囲に汚染が拡大していると思われるのでこの発表への反発も強い。とにかく米国もその支配下のIAEAも日本の原発の再稼働を強く望んでいるようだ。

(2)高速増殖炉もんじゅ2012年度予算付けられず。(何が未来のエネルギーだ!)
核 リサイクルの要で夢の技術と言われながら欧米も断念して撤退、破綻した高速増殖炉にこだわり続ける日本。2010年には燃料交換装置の一部が落下し 2011年やっと取りだしたがナトリウム爆発、炉心溶融の危険等福島第一どころでない大惨事が懸念されている施設。すったもんだの末やっと次年度予算を凍 結。
http://www.asahi.com/politics/update/1213/TKY201112130222.html

(3)原発の稼働状況
12月16日現在日本で稼働中の原発はとうとう7機のみになっている!
北電・泊3号、東電・柏崎5、6号、関電・高浜3号、中国電・島根2号、伊方2号、九電・玄海4号。
それでも電力不足になる気配はありません。

(4)どうなる原子力政策。政府・電事連の思惑は?
内閣府原子力委員会(委員長近藤駿介東大名誉教授)
H22年11月「新大綱策定会議」を設置。3.11で中断していたが8月再開している。今後1年をかけて、原子力政策の問題点を検証し
高レベル放射性廃棄物の扱い、高速増殖炉の開発、使用済み核燃料の再処理、国際協力のあり方
などを盛り込んだ新大綱をまとめる。

会議では、震災後に原子力委に寄せられた意見の概要を事務局が報告。今後の原子力発電について意見を述べた4567人のうち67%が「直ちに廃止」31%が「段階的に廃止」を求めていた。委員からは、
「福島原発事故の責任は原子力政策を決定してきた原子力委員会にある」(伴英幸・原子力資料情報室共同代表)といった批判意見が相次いだ、との事。

この人達の人間性、判断力が私達の将来に大きく影響する。原子力村やメーカーや米国の利益のみに捉われずにこれまでの路線の転換、急旋回する事が可能なのだろうか?

(5)米国の政策転換等、外国への原発ビジネス
米国が34年ぶりに原発建設を認可すると言う。米原子力規制委員会は東芝傘下WHの改良型加圧水型炉AP1000を年内認可する。ジョージア州とサウスカロ ライナ州に各2機計、4機だそうだ。緊急時に電源や作業員の操作なしでも自動的に原子炉の冷却が維持され、航空機の衝突にも耐えられるそうだ。本当だろう か?
日立もリトアニアで計画の原発の2020年運転開始に向け仮合意を締結したという。この流れに棹はさせないのか?

最後に

(1)内部被曝回避
これまでペットボトルの水を購入するとか、野菜の産地を気にするとか、大好きな魚もさんまやあんこうを避けるとか、雨の時や側溝の近くは歩かないとか内部被曝を減らすよう心がけて来た。
小出助教ですら事故を起こした責任は自分達にもあるのだから子供達は守るが大人は福島産でも食べようと言っているのだが、無農薬食品に拘りのあった私は、やはり避けられるなら避けた方がいいと思う。

(2)移住者への共感
私 は64歳で東京在住だが、若い人達が、特に福島(一部を除く)は移住出来るのが一番だと思う。それぞれ故郷・家・職場等があり愛着も強く、多くの方は支援 がない限り離れる事は難しいだろう。それでもtwitter・Ust等で個別に移住を決めた方々の決意・苦境を沢山見聞きしてきた。
国・福島県の損害賠償額削減・地方財政維持優先の住民縛り付けのいじましい諸方策にはホトホト呆れている。
土地・故郷を愛する人達には申し訳ないが、私 も美しい自然、美味しい果物等が沢山あり頻繁に訪れた福島だが福島原発事故以降は会津や県南はともかくあまり訪れたくありません。除染しても特に子供達の 一部には悪影響が出てくるのではないかとの懸念が拭えません。又被曝リスクは累積で考えねばならないのではないかと認識しています。

(3)原発再稼働・新設の阻止活動
<中国電力の上関原発>
1982 年の計画から30年近く反対運動が続く中、2012年6月1号機着工を予定している。2011年3月15日から準備工事は延期されてはいるが山下社長は建 設の意志を変えてはいないと明言した。私は曾祖父の代まで佐渡の達者の海で漁師をしていたので尖閣湾等の海の美しさに強い愛着を抱いており、上関のまだ手 付かずの豊穣の海はかけがえのない価値を持っていると考えている。
鎌仲ひとみ監督の「ミツバチの羽音と地球の回転」等で見た漁師の方々の反対運動に海を愛する都会の若者達がカヤック隊等で守る運動に諸手を挙げて賛成しています。

<大間原子力発電所>
反対する動機は海への愛着だけでなくプルサーマル計画への疑問がある。大間原発はMOX燃料(ウラン235の替わりにプルトニウムを使う)を使用出来、核燃 料リサイクルの中核的担い手と期待されている。2008年5月に着工済みで運転開始予定は2012年3月から2014年11月に延期された。
炉心建設予定地の地権者熊谷あさ子さんは代々
マグロ漁師の家に育ち、「大間の海と土地をきれいなまま子や孫の世代に残す為に、大間原発に反対します」札束を積み上げられてもログハウス「あさこはうす」で頑張り土地を売らず建設計画を拒み続けて来た。あさ子さんが2年前に不慮の事故で死亡した後も、4人の兄妹が遺志を受け継いだ為、電源開発が建設計画の変更を余議なくさせられた。
最近は12月10日に函館市民ら170名が建設差し止めの訴訟を提起する等反対の動きも強くなっている。
http://www.youtube.com/watch?v=Z0CMb_pO-yo
http://actio.gr.jp/2008/12/09094527.html

10数年前に訪れて下北半島の先端で食べた有名な「大間のまぐろ」のおいしさは格別だった。
六ヶ所村と一連で困難だろうが
何とかこのまま建設を中止に追い込む事が出来ないものだろうか。

他 の多くの原発も大きな危険を孕んでいる。エネルギーシフトと節電を工夫していけばエネルギーは賄える筈だ。これだけ原発再稼働に拘るのは、原発は核兵器や 劣化ウラン弾作り、新型原子爆弾の開発に不可欠な為なのかという大きな疑念を拭えない。冷静に日本人・世界の人類の将来の為を考え原発全廃に向けての歩み を進めて欲しいものだ。

私の出来る事は限られているが、今後も正確に情報を得て、情報共有を促進し、丁寧に脱原発を言い続け、活動に部分的に参加していこうと考えています。



福島原発事故について-その7

2011年07月31日
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トルコ・アヤソフィア

「今抱えてしまった大きな問題点」のうち最後となる5番目についてです。

1.東電と政府の損害賠償責任について
2.福島原発放射線の影響と対策
3.福島原発事故の実態解明
4.日本の原発政策の本当の意義とは?
5.日本経済に与える影響と増税の可否

5.日本経済に与える影響と増税の可否

(政府は何故復興増税等という天下の愚策を強行しようとするのか?)

(1)根底にある増税の流れの背景

そもそも何故現在円高なのか?について簡単過ぎる理由を認めようとせず、国民に隠し通そうとしているのが財務省です。理由は只一つ米国財政が破綻の瀬戸際にあるという事実です。
(菅政権はほぼ100%官僚のいいなり政権で野田財務相等は知識も覚悟も足りな過ぎで問題外)

これは今ちょっとおカネが足りないという次元では無く、米国中心の「国際金融システムのシステミック・リスク」であり、リーマンショックで多くの金融機関が 破綻した後の深手がケタ違いに酷い事です。株式市場に大量の資金を投入して立ち直ったように見せかけて来たが、もうこれ以上の維持は難しく、本当の危機は これから始まるのだという事です。

リーマンショックで大きく傷ついたのは欧米であり、日本は比較的軽症だったのでもっと早い段階で円高になるのが当たり前だったが、欧米が一生懸命にお化粧をしていたので今頃顕在化しただけ。日本も苦しいが米国・欧州の方がより崖っぷちなのです。

日本が蓄えて来た1兆1378億ドル(2011.7.7財務省発表)の外貨準備高は中国に抜かれたとはいえ世界第2位の高い水準にある。この一部を売却し日 本の震災復興に充てれば良いと私達素人は皆そう思う。しかし米国の属国である日本の財政の実権はずっと財務省が握っており、彼らは米国に忠誠を誓っている 為か、決して米国債売却の検討を絶対に出来ない。このお金は既に米国に貢いだもので日本人はもう使えないと考えざるを得ないのだ。

888兆円もあっても使えないばかりか僅か10兆円程度の復興財源を全て増税で賄い公務員制度改革(公務員も身を切る)には一切手を付けさせないで国民に全て負担させようとしている。
こんな事は本来は許せないのだが隷米の自公政権やそれ以上に隷米を極める菅政権は米国の意向に決して逆らえないのでこの政権や亜流政権が続く限りやむを得ないのである。

(2)復興税→消費税増税への流れ作り

復興税の内訳は、まだ今後政府の税制協議会で詰めていく段階で詳細は未定。法人税と所得税の増税で広く薄く長くが基本方針のようだ。菅政権の言動を辿り、発 足当初から復興委員会の論議を見れば極めて明快だ。最初は消費税増税を自公と組んで強行しようとしていたが元々根強い党内の反発の上に、大震災に襲われ反 発が更に強まり復興委員会が当初予定していた消費税による復興増税の旗ををひとまず降ろし、当面は法人税と所得税増税で繋ぎ、2010年代半ばに消費税増 税に切り替える腹積もりのようだが今度は財界が反発しており予断を許さない状況が続いている。
日本は1990年代初頭のバブル崩壊以降、原材料の高騰や中国・韓国等手強い競争相手の出現等で貿易等の薄くなった利 幅をコスト削減により凌いで来た。とりわけ人件費を非正規雇用に切り替える事によりより圧縮して利益を拡大してきた。この為国内の貧富の格差が大幅に拡大 している。  ここにリーマショック、東北関東大震災と続いており、ただでさえ困窮しているのに更に消費税増税すれば多くの低所得者の生活困窮に止まら ず、消費減退→失業増大→大不況の到来→社会の大混乱→本格的衰退に繋がっていく可能性がある。

しかし増税が小規模に止まれば秋以降当面は震災復興需要により景気を持ちこたえる事が可能となろう。

(3)増税の前提条件=公務員制度改革先行が必要なのだが…

日本が官僚主権国家だという事はある程度言われて来たが、今回の福島原発事故発生以来その実像が次々に明らかになって来ている。皆が官・政・財・学・報複合 体の利権構造のあまりの強固さ、複雑な絡み合いを知る事となり、その力関係や仕組みが連日twitterやブログ、書籍でより詳細に多くの人達に知れ渡っ て来た。

とりわけ経産省と東電・学者・マスコミによる原発事故原因報道の隠蔽、放射能拡散状況の隠蔽、低線量被曝の危険性隠し、計画停電等電力供給不足煽り、反対者 への圧力強化等でひたすら原発稼働再開に繋げようとする強引さは、連日連夜全て多くの国民がはっきりと目にした事である。
あらゆる手段を総動員して現行体制を守ろうとする姿勢に、彼らに対する恐怖感・警戒感もさる事ながらある種の哀れさが漂うと言ってよい。もう何も見えずに権 限を振り回せばこれまで通り乗り切れると本当に思っているのだろうか。保安院のとかげの尻尾切りだけはやむを得ないと諦めたようであるが。

今や日本人でゆとりが残っている層は縮小しており各分野の一握りの成功者以外残っているのは公務員だけである。この人達が全く自分達の身を削らず、あらゆる利権は手離さず、国民のみに負担を強制する冷酷な人達である事も連日明らかになってきている。

年金原資の行方も話題になりだしている。少子高齢化で社会補償費の抑制も必要だ。制度改革や消費税増税もいずれは避けて通れない課題なのかも知れない。しか し財務省・マスコミの財政困窮キャンペーンは国の資産を無視し負債のみを強調したあまりに幼稚なPRである。もし財務省・マスコミのいうような危機的状況 ならもうとっくに円の暴落になっている筈なのだ。事態は全く逆な事はもう知る人ぞ知る状況で、騙しはもう効かないのである。
将来消費税増税が必要でも、その前に国家公務員の待遇切り下げが先決・必須条件なのでありこの問題を実行出来る内閣の実現が求められるのである。

(4)米国の日本支配進展の深刻さ

ソ連崩壊後米国のターゲットは日本になり、年次改革要望書によって日本経済を支配下におく戦略が続いてきた。2000年以降行き詰まった米国はイラク戦争等 で打開を図るが、逆に更に財政困窮が深まって来た。今は財政再建を福祉切り下げでやるか富裕層増税でやるかで揉めている。軍事費削減は二の次のようだ。

急増する米国債の買い手は中国と日本だけだったが中国も歯止めがかかり、米国財政の破綻を避けるため日本政府への圧力は私達の想像を絶するレベルである事だ けは想像がつく。これに軍事的面からの圧力もあるとしたら私達に対抗手段はあるのか?核の存在が噂される基地と潜水艦に国土を占拠され、日本の実権を握る 財務・外務・防衛・法務・経産官僚全てが日本の首相より米国の意向を重視して揺るがない事務次官に率いられているとすると事態は深刻を通り越しているのかも知れない。
福島原発事故の収拾が事故当初早い段階から米国高官によって指導(実質的には指揮?)されているという情報も人口に膾炙され始めている。

結局日本は米国債の買い支えとドル暴落・円高による債券の価値の大幅減少に見舞われる事は避けられない状況になって来ていると思う。

(5)今後の東電存続の形態と電気料金について

それにしても総括原価方式とは凄い制度だ。これが資本主義である訳がない。コストが高ければ高い程利益が上がる制度なのだから驚きだ。原発投資も大きければ 大きい程いいし、政府・マスコミ・地方自治体への各種支出も原価に入るので接待も広告も懐柔策も手厚くやればやる程利益が上がるようだ。東電も経産省も御 用学者もこんなうまい構造を手離すまいとしてあらゆる抵抗を繰り広げるのも当然だろう。この点はまだ改善論議の俎上にも上っていない。

原子力賠償責任法の修正案(原発の損害賠償支援機構法案)も損害賠償を国民に押し付け国費を無制限に投入して東電の存続を守る仕組みであり本当に許し難い内容だと思う。しかしこの内容はあまりに理不尽である為このまま成立してしまうと不公正過ぎ歪みが大き過ぎていずれ損害賠償や投入する税金の大きさに耐えかねるなど社会に混乱が起きるだろう。

個人的には電気料金を勝手に値上げすれば自衛手段を講ずるしかない。これ迄電力消費が贅沢過ぎたので節電余力は大きく、家計の健全性維持の為にも節電で電気料金を削減する動きが強まるだけだ。いずれ送受電分離や蓄電・自家発電・自然エネルギーへのシフト等で吸収可能で何とか負担増を避けていけるのではないか。

(6)終わりに

Twitter やブログの内容を監視して統制強化を図ろうという経産省・資源エネ庁の試みは失敗に終わるだろう。巨大利権構造と高待遇に安住して来た人達の知的レベル・ 総合的能力が相対的に低くなり過ぎているからだ。採用も偏差値と従順さ血縁でしているようだ。社会の前線で生存を掛けて闘っている人達や各分野で才能を必 死に磨いている人達、豊かでなくても生活確保に命懸けで努力している人達の研究心、身につけたスキルの方が遥かに貴重だと思う。この人達の力を甘く見て、 ただ税金や各種公共料金を絞り取る対象と考えているだけではそうはいかないだろう。

強権で統制・規制と分断を図る官僚達と実態に目覚めた多くの国民の力が結集されて対抗出来るのかどうか毎日見極め乍ら、結集に向け少しでも力になれるようにしていきたい。

尚、 ここではあまり触れなかったが日本のマスコミ情報では「米国経済・軍事・社会の実態について」正しい情報が不足し過ぎている。これからの一両年の米国の動 向は日本に多大な影響を及ばすので激動の方向性・その原因を正確に把握する事が本当に重要な局面になって来ているので心していきたい。

以上



福島原発事故について-その6

2011年07月06日
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「今抱えてしまった大きな問題点」のうち今回は4番目についてです。

1.東電と政府の損害賠償責任について
2.福島原発放射線の影響と対策
3.福島原発事故の実態解明
4.日本の原発政策の本当の意義とは?
5.日本経済に与える影響と増税の可否

 

4.日本の原発政策の本当の意義とは?

(政府は何故重大事故を起こしたのに原発推進を止めようとしないのか?)

(1)原子力の平和利用の本質と経緯
そもそも原子力=核であり、平和利用というが原発は核兵器の原料であるプルトニウムと劣化ウランを大量に作ってしまうもの。本来はあくまで大量殺傷兵器の技術と同一の技術を発電に使っている事が根底である事を忘れてはならない。

何故「平和利用」が推進されたのかの経緯の概要は以下の通り。
米国がビキニで水爆実験→第5福竜丸被曝→日本の世論が反米に(当時3000万人の反核署名)→反共対策に原子力平和利用で局面打開する事で日米が一致。背景に1953年ソ連が先に水爆実験成功、1954年に商業用原発(オプニンスク原発)も米国に先駆けて開発していた事もある。1953年アイゼンハワーが国連で平和利用を提唱。この動きに呼応して日本への原発の導入を図った中心人物が正力松太郎であった事は多くの人が知っている。

(2)日本は唯一の被爆国ではない。採掘・核実験・再処理・原発事故等世界各地で多くの被曝による健康被害がある。

第2次大戦後も、世界各地で多くの核実験が行われた。
米国=ネバダ砂漠、ビキニ・エニウェトク(マーシャル諸島)、アムチトカ
ソ連・ロシア=セミパラチンスク、ノヴァヤゼムュラ
イギリス=モンテ・ベロ諸島・マラリンガ・エミュ、クリスマス島
フランス=ムルロア、サハラ砂漠、仏領ポリネシア
中国=新疆ウイグル自治区
インド=ポカラン砂漠
パキスタン=チャガ
北朝鮮=咸鏡北道
イスラエル?=カラハリ砂漠?
この他にもウラン鉱山採掘現場、再処理工場で被爆した人達は常に弱い立場の住民であった。

(3)核実験禁止の動き
1963年に締結された部分的核実験禁止条約 (PTBT) で地下核実験以外は禁止された。
1976年には、地下核実験の最大核出力を150キロトンとする地下核実験制限条約 (TTBT) が米国とソ連の間で締結された。
包括的核実験禁止条約(CTBT)は未締結。臨界前核実験はCTBTでも禁止されていない。

(4)米国の核兵器の現状
2011年5月21日に米国核安全保障局(NNSA)は新型の未臨界核実験(昨年10月と今年3月)成功を発表。保有する核兵器の安全性と有効性を確認する目的という。臨界前核実験に比べ核実験場も必要とせず火薬も使用しない。
ロスアラモス研究所、ローレンスバークレー国立研究所とバークレーのカリフォルニア大学の同僚と研究。

勿論高度の軍事機密なので詳しい情報は多くなく、私も十分な調査能力もない。ただ1つだけ言える事は1945年の最初の原爆実験から既に66年が経過して、技術は飛躍的に進歩していて当然だし、米国は決してこの研究開発を止める筈がないだろうという事だ。

現在の核兵器は超小型化しているのだろうか?
実用化はされていないのだろうか?
又米国の原発の核燃料廃棄物プルトニウムや劣化ウラン・減損ウランの処理はどうなっているのだろうか?管理する場所は十分確保されているのか?
放射能漏れ等の事故はないのだろうか?
疑問点は尽きない。

(5)劣化ウランの毒性と劣化ウラン弾
濃縮ウランやプルトニウムを生みだす工程で核分裂性が減った劣化ウランと減損ウランが作られる。この2つから劣化ウラン弾(放射能兵器)が作られ、1991年湾岸戦争、1995年ボスニア・ヘルツエゴビナ、1996~99年コソボ、1999年旧ユーゴ空爆、2001年~アフガニスタン戦争、2003年イラク戦争、とずっと使われ続けて来た。日独の砲弾はタングステン弾で値段が高い。劣化ウラン弾は安い上に、処理に困っている核廃棄物を他国にばら撒けるのだ。米政府・軍はその危険性を兵隊にも知らせず使わせたので帰還兵は湾岸戦争症候群を起こして苦しんでいるようだ。

1991年の湾岸戦争の際、イラク・バスラで小型核兵器(広島の1/3)を投下したのではないかというイタリア報道もある。2002年にアフガニスタンでも使用の疑惑がある?
イラク戦争に自衛隊を派遣した日本は水の供給をしたがバスラやファルージャでは劣化ウラン弾が使用され?癌や白血病が急増している。

こういった米国の軍事作戦に共同行動の度合いを深めつつある防衛省の動きを見ていると、イラク戦争で使用された?劣化ウラン弾の原料は関電が供給したのでは?とか今回の福島原発の劣化ウランは何処へ?とかいう疑念を抱く向きが出てくるのも一概に否定出来ないと思う。

福田元首相が急に辞任した背景には洞爺湖サミットでアフガニスタン戦争への派兵要請を断ったからという話もあるのだ。
2005年に日米外交・防衛担当閣僚会ギ(2×2)以来国防上の重要な事は国会であまり論じられず、どんどん官僚が決めて2×2で追認してしまっているように見える。日米同盟の一体化(隷属化)は我々の知らない所で(核関連も)進展している懸念は拭えない。



福島原発事故について-その5

2011年06月23日
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成都パンダ

又々遅くなったが、「今抱えてしまった大きな問題点」のうち今回は3番目についてです。
1.東電と政府の損害賠償責任について
2.福島原発放射線の影響と対策
3.福島原発事故の実態解明
4.日本の原発政策の本当の意義とは?
5.日本経済に与える影響と増税の可否

3.福島原発事故の実態解明
IAEAの閣僚会議で事故の実態に触れた部分も多いのでその論議の内容を確認してみる。
元々IAEA(国際原子力機関)という組織の性格は核拡散防止の為の核の査察を担う「核の番人」で、原子力の平和利用の推進と軍事使用防止を図る目的の国際機関であり、本格的な事故の実態解明が期待できる組織ではない。その限界を踏まえた上でIAEAの原子力の安全に関する閣僚級会議に提出された、IAEAの現地(福島)視察調査報告書に関する報道は添付の通り。
http://jp.wsj.com/Japan/node_251746

これとは別に広瀬研吉・内閣府参与が日本政府の331ページにも及ぶ調査報告書を提出している。

http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2011/iaea_houkokusho.html

会議では加盟国から事業者責任の曖昧さを指摘する声が相次いだ。現場で判断出来る事(ベントや海水注入)を上に指示を仰ぎ時間がかかった、と指摘された。全体会議で原発の安全基準強化等を柱とする閣僚宣言を採択。安全基準や役割の強化、IAEA専門家による定期的な安全評価の活用、規制当局の独立性の確保、万一の原発事故に備えた国際的な損害賠償体制整備の必要性にも言及した。
天野事務局長からの各国の原発の安全性評価のための抜き打ち的な検査の導入提案も歓迎された。
この組織の原発の安全確保についての具体的活動があるのかどうか、今後も注目していきたい。

(1)日本政府のIAEA向けの調査報告書の概要(6月7日発表)
原子力災害本部が作った日本政府の調査報告書はⅠ~ⅩⅢ章に及ぶが今回は事故の実態に関連の強い箇所に絞って確認する。

1.はじめに
事故報告書としては暫定的なもので原子力安全と原子力防災に関する技術的事柄であり原子力損害賠償、社会的影響については取り上げていない、と断っている。

2.Ⅰ章 事故前の原子力安全規制等の仕組み
日本の原子力災害対応は1999年のJCOの臨界事故後に制定された「原子力災害対策特別措置法(原災法)」に基ずいて実施される事になっており今回はこの法律に基づいて対応した。
経産省の中にある原子力安全・保安院が安全規制を担当する一方、文科省が放射線のモニタリングを担当するなど、安全確保に関係する行政組織が分かれていたことは「事故に対応する上で問題があった」と指摘している。
その上で、原子力政策を進める立場の経産省から規制当局の保安院を独立させることや、原子力安全委員会などの関係組織を集約することを検討するとしている。

(私見)全くその通りであり早期に実効性のある組織に改変する必要がある。しかも非実働の名誉職で緊急時に全く役に立たない御用学者や経産省官僚の天下りの頭でっかちの組織は大幅にスリム化すべきだ。一方原発の危険性の管理・高濃度放射性廃棄物の管理・廃炉の管理等の堅実・真面目な技術者の組織にして大幅な権限を付与していくべきである。

3.Ⅱ章 東北地方太平洋沖地震とそれによる津波の被害
地震によって福島第一は外部電源6回線全てに被害。原子炉本体には大きな損壊は見当たらないが詳細は未明と保留している。

(私見)一体原子炉本体に大きな損壊がないとは何をもって言えるのか?本体とは安全容器だけを指しているのか?

津波は7波に亘って襲来。最初は地震発生41分後、その6分後に次ぎの大きな波。2002年の原子力発電所の津波評価技術(土木学会)で最高水位が5.7Mとされていたが今回の津波は14~15Mに達した。全機の補機冷却用海水ポンプ施設が冠水して機能停止。
6号機を除き原子炉建屋やタービン建屋の地下階に設置されていた非常用ディーゼル発電機及び配電盤が冠水して機能を停止した。
このような大規模な津波の襲来に対する想定と対応がなされていなかった、としている。

(私見)6号機は非常用ディーゼル発電機が唯一最新の空冷式だったので無事だったのか?
4月27日の衆議院経済産業委員会で共産党の吉井議員は、この外部電源喪失は地震による夜の森線の受電鉄塔の倒壊が原因と追及。原子力安全保安院の寺坂院長はこの受電塔には津波が及んでいない地域にあった事を認め全電源喪失は津波が原因ではないと答えている。しかしこの重要な事を事故報告書では何気なくさらりと記述しており印象を曖昧にしてしまっているのは問題であろう。

4.Ⅲ章 福島原子力発電所等の事故の発生と進展
1992年から取り組み始めたアクシデントマネジメント対策の実施は安全規制の法律上の要求事項になっておらず事業者が自主的に実施し国がその報告を求めるという事になっていた。
福島原発の対策は原子炉停止機能、原子炉及び格納容器への注水機能、格納容器からの徐熱機能、安全機能へのサポート機能の4つであった。

(私見)結局の所、アクシデントマネジメントの大切さについては東電に委ねられていたが、経営陣は業績維持拡大しか関心がなく普段はむしろ安全コストの削減に動いて いた事が明らかになって来ている。事故が起きた時のうろたえようは正視に堪えず、その段階でも利益擁護策にのみかまけており日本のトップ企業の経営者の頽 廃ぶりを曝け出した。その後の経緯は多くの情報が流布されているので事故発生状況は省略する。

5.Ⅳ章 福島原発の各号機の状況
各号機毎に説明があるが、ここでは激しい爆発のあった3号機のみに焦点を絞って見てみる。3号機はMOX燃料を使用しており3号機爆発の映像を見ると本当に単なる水素爆発なのか?という疑念が拭えないからである。
①3月11日14時47分地震により原子炉がスクラム(緊急停止)。地震の為外部電源喪失。非常用ディーゼル発電機2台が起動。15時42分津波により非常用ディーゼル発電機2台が停止し、全電源喪失に至った。

(私見)いったんは起動して1時間近く動いていたのか!?

②15時5分原子炉隔離時冷却系(RCIC)を手動起動した。15時25分水位が高くなった為自動停止。16時3分手動起動し3月12日11時36分停止。

(私見)元々主電源と補助電源が喪失した時、原子炉内の崩壊熱で生成した蒸気による一時凌ぎのもの。

③3月12日12時35分高圧注水系(HPCI)が原子炉水位低で自動起動したが3月13日2時42分停止。原子炉圧力低下の為か、HPCI系統からの蒸気流出の為か?

(私見)この配管は津波の影響を受けにくい原子炉建屋内にあり、破損が事実なら地震の揺れが原因の可能性が強く全国の原発で耐震設計を見直す必要が出てくるもののようだ。

④保安院の評価結果は3月13日8時頃に原子炉水位低下により燃料が露出し、その後炉心溶融が開始したという見解。溶けた燃料の一部が原子炉圧力容器の底が損傷して(格納容器の底に)落下して堆積している可能性も考えられると、メルトスルー(溶融貫通)を認めている。

(私見)東電がこの見解を認め公表したのは5月25日になってから。あまりに遅すぎる。この隠匿は犯罪行為に近いのではないか。しかもいまは単なるメルトスルーどころでないチャイナシンドロームに近いような事態に進展しているようだが。

⑤3月14日5時20分格納容器ウエットウエルベント11時1分原子炉建屋で爆発。

(私見)この点についてはサラリと水素爆発としているがこの時の小さな核爆発のようなきのこ雲を見た多くの人は、単なる水素爆発とは次元の違うものだという印象は拭えないままだ。何か重要な事を隠匿しているのでは?と大きな疑念を抱いている。

6.Ⅴ章 原子力災害への対応、Ⅵ章 放射性物質の環境への放出、Ⅶ章 放射線被爆の状況、Ⅷ章 国際社会との協力、Ⅸ章 事故に関するコミュニケーション、Ⅹ章 今後の事故収束への取組み、ⅩⅠ章その他の原子力発電所における対応、ⅩⅡ章 現在までに得られた事故の教訓は今回は省略する。

<最後に>
6 月7日に事故調査・検証委員会がスタートしている。畑村洋太郎委員長ら10名で、関係者からの聞き取りや現地調査を行い年内に中間報告を出すという。又① 東電・政府の事故直後の対応、②原発の安全規制・体制を優先課題にするという。目先の小さな対応の適否や組織いじりに止まらず、原発の持つ環境破壊と生命 の危険の根本的問題を根底に据えて取り組んで欲しいものだ。この会にも期待はするが、それよりも一人一人の国民による具体的行動の方が放射線被爆を減殺す る為には必要だと考えている。
原発立地の県・市町村の特に首長の判断がこれ程注目され重要な時もなかっただろう。各原発の動きも丁寧にウオッチし、ささやかでも自身も行動していきたい。



福島原発事故についてーその4

2011年05月28日
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遅くなったが、前回提起した「今抱えてしまった大きな問題点」のうち今回は2番目についてです。

1.東電と政府の損害賠償責任について
2.福島原発放射線の影響と対策

3.福島原発事故の実態解明
4.日本の原発政策の本当の意義とは?
5.日本経済に与える影響と増税の可否

2.福島原発放射線の影響と対策

このテーマも政府・東電が実態を隠すのに必死なので見極めるのに手間取った。ここに来てようやく政府以外の組織・個人や外国メディアから情報が流れだし、実態を覆い隠せなくなって来ている。現段階ではっきりして来た事実を踏まえ考えて見た。

(1)最大の問題点

起こってしまった事があまりにも大き過ぎた為か他に理由があるのかは別に論議が必要だが、政府の方針は次の3つだと思う。言葉の言い回しの巧拙を別にすればある意味方針は一貫しており明確で分かり易い。

①事故が大き過ぎるので国際基準通りにすると退避すべき地区が厖大になり過ぎるのと、損害賠償額がどこまで拡大するか分からないので、事実を出来るだけ隠せる間は「なるべく長く隠蔽する」。後で隠蔽や嘘がバレテも構わない。何事も解決出来ないので誤魔化し曖昧に先延ばしするしかない。

②事故の進展中のリスクが確定出来ず幅がある場合は本当は最大になりそうな事を認識していても、必ず希望的に少なめに評価して発表する。後で過小評価であった事が判明する可能性も強いのだが、「その場さえ凌げれば良い」ので構わない。

③真面目で最低限因果関係が明確になった事しか認めない慎重な学者か、恥知らずの不勉強でおよそ学者とも言えないような人達も見境なく使い、安全でないのに「安全とは言い切れないが安心」だ と言う論理をとにかく押し通す事。広島・長崎・原水爆実験・米国の原発関連・チェルノブイリ等の被曝者の被曝の研究はかなりある筈だが、被曝と発症の因果 関係についてはグレーゾーンが幅広いので原発推進学者と脱原発・反原発学者とでは評価が分かれていて双方の見解に大きな開きがあるのだ。

この3つで事態を乗り切って行こうとしているが「現実に眼を背けた判断」である事が最大の問題だ。
つまり多くの日本人に「被曝の危険性を伝えない」で、被曝を受忍させ、いろいろな健康障害が出るのも先の事なのでその時になって「健康障害が発生してから対応すれば良い」という考え方である。
中でも許せないのはWHO総会で、今回の事故で多くの被曝者の疫学的調査が可能になり人類に貢献出来る等ととんでもない事を平気で言う大塚厚労副大臣だ。ある程度の発生の可能性を認めていながら避難する事は勧めていない。どう見ても大量人体実験である。やはりエリートの人権意識とはこんなものかという事を再認識させられてしまった。

この方針を死守しようとする意志は極めて強固で何があっても揺るがないようだ。絶対にそれ以外の意見は受け付けない様子を見ると「お粗末な方針を徹底して守り抜こうという意志の強さの源は何なんだろう?」と考えてしまう。

(2)今後のポイント

もう多くの方々が詳細に見解を出してくれているので、大きくは特段何も言う必要は無くなった。チェルノブイリに匹敵する放射能が飛散していて、「これからも長く出続ける事」ははっきりしており、福島や近県は言うに及ばず、東京の程度も酷い状態であることが分かって来たからである。その中で放射能と対峙する上でどう対処したら良いのか、主張したい事や追及が必要なのは次の3点である。

① 福島県の「計画的避難区域」の人達は故郷を去らざるを得なかった人達も信念で土地で生き抜く判断をした人達も、キチンと東電・政府に損害賠償請求して貰う べきだがその点がどうなっていくのだろうか?又、福島やそれ以外の地域で実際に被害があるのに風評被害として括られたり自主的に避難した人達の損害賠償は どうなっていくのだろう?→これらのケースに東電・政府は誠実に対応し適切な額を補償すべきであろう。
「警戒区域」の人達に対しても今後の見通しをより正確に判断して早く伝えるべきだ。ある程度の幅はやむを得ないが、なし崩し的にどんどん後ろにズレテいく事だけは避けるべきだ。原発推進の方針が常に楽観的過ぎてなかなか実現しない事例は枚挙に暇がないのだ。

②福島の他の場所(郡山市や福島市等放射能数値の高い場所は特に)の若者・子供達・乳幼児・胎児が本当に心配である。この中から一定の割合の人達が国策の原発の最大の被害者になる可能性が充分あると思う。
東大の中川教授や長崎大の山下教授は立派な学者だろうが、欠点は原発推進のPR役に忠実過ぎると思う。放射能と症状の因果関係を極めて制限的に完全に明確な場合のみ認める人達だと思う。
一方チェルノブイリ等の被害に向き合って来た人達は、因果関係を認められなかった多くの被曝の事例がある事を訴え続けている。ICRPでは認められていないが被曝との関連を窺わせる多くの事例があると思われる。
癌や白血病等の明確な症状には至らない体調不良が水面下で多数存在するのではないか?
国・自治体は少なくとも世界基準を緩和するのに反対の学者の見解を厄介者扱いにせず、謙虚に耳を傾け、住民の懸念を払拭する最大限の努力をすべきなのだ。この点高木大臣以下政務三役・文科省は完全に落第生だ。

③ 東京等の首都圏ですら放射能の飛散状況は酷いものだ。私は今の所辛うじて東京に踏みとどまっているが、今後の福島原発の状況次第では避難する可能性も念頭 に残っている。1~4号機ともいずれも安定にほど遠いが、今後あまり大きな再臨界・水蒸気爆発の危険性がないのであれば放射能を甘受して踏み止まるのだ が。
しかし新宿でも高さ18m?の所で計測するのは子供騙しが過ぎる。放射性物質は地上50センチ以内で90%位あると言う話もある。東京も各区毎に1m以内の高さで測定して毎日公表し続ける体制を作るべきだ。又、空気に漂う分の外部被曝は大体わかったが、食品による内部被曝については政府・自治体ともその把握・発表にあまりにも消極的過ぎる。内部被曝の可能性を除外・軽視せず、その危険性についての注意喚起をし対策を公表すべきである。

又、野菜だけでなく海産物の安全性についての情報があまりにも少な過ぎる。水産庁でやらないのであればグリーン・ピースにもっと自由に調査を許可すべきだ。そのうちパニックで東北・関東の魚を今以上に食べない事態になりかねないと思う。

【最後の疑問点】

ヨウ素やセシウムだけでなくストロンチウムやプルトニウム等の危険な核種も計測・発表する体制を作って欲しいが、放射能の放出が続いており数値がまだ増大傾向なのと再臨界の危険性がある時等で逆に公表を抑える動きが再び出始めている。初期のスピーディーの情報も、メルトダウンの情報も全て隠蔽して来たが一応現時点では公表された。しかし唯一プルトニウムについては公式には殆ど情報が出されていない。3号機・4号機の状況について写真・カメラによる内部の情報はまだ全くない状況が続いているし、プルトニウムの毒性についても軽視する発言が多いままだ。軍事機密との絡みもあるのか?本当に触れられたくない事のようだ。

こんな中で脱・反原発学者や市民・ジャーナリストが独自で計測して情報を発信するネットワークはどんどん拡大しているようだ。この動きの拡がりはかってない勢いがあり、これに制限を掛ける事はもはや無理だろう。やれば政権の命取りになるだろう。(やらなくてももう終わるだろうが〉

とにかくこんな隠蔽・嘘つき・逃げ腰・先送り政権は早く消えて無くなれ!

【参考リンク】以下の3つ以外にも多くのツイート等に教えて頂きました。
http://fukumitsu.xii.jp/syu_f/FukushimaGenpatsu_1.html
(福島原発事故)
http://kingo999.web.fc2.com/kizyun.html
(世界も驚く日本の基準値)
http://gendai.ismedia.jp/articles/print/5688
(あなたの町の「本当」の放射線量) 



福島原発事故について-その3

2011年05月03日
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3月11日の震災後1ヶ月と20日余が経過。今後の問題点について整理すべき時期だ。
今抱えてしまった大きな問題点は次の5点になろう。

1.東電と政府の損害賠償責任について
2.福島原発放射線の影響と対策
3.福島原発原発事故の実態解明
4.日本の原発政策の本当の意義とは?
5.日本経済に与える影響と増税の可否

どれも日本の根幹に関わる大問題であり政府や多くの専門家が論議している。私の力量の及ぶ範囲で上記5点について私の選んだ見解とその理由について1から順次5回に分けて述べてみたい。

1.東電と政府の損害賠償責任について

「原子力損害の賠償に関する法律」(1961年制定)の意義

今回の福島原発事故で特に問題になりそうな条文、基本的理解の為に押さえておくべき条文に絞ってみた。
原子力損害の賠償に関する法律】

http://www.houko.com/00/01/S36/147.HTM

第2章 原子力損害賠償責任
第3条(無過失責任と責任の集中等)

福島原発事故の社会的影響も大分明らかになりポイントも絞られてきている。第2章第3条(無過失責任と責任の集中等)の条文は納得のいくわかり易いものだ。事故が起こったら原子炉を作ったメーカーでなく各種下請けでなく核燃料物の輸送業者でなく、原子力事業者に集中している事は被害者にとっては損害賠償責任の追及が、たらいまわしにされなくても済むので良い事だ。(GEに製造物責任が及ばないように作らされたという別問題はあるようだがここでは触れない)

「・・・当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる」

ここまでは誰にも異存はない。問題はその後のただし以降だ。

「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない。」

この条文の解釈については国会での質疑の積み重ねはあるものの、巨大の定義が完全に明確にされておらず解釈の余地が残っている所だ。素直に読めば今回の震災は巨大地震・津波によるので免責ではないかと言う主張は荒唐無稽と簡単には片付けられない。

そこで4月29日の衆院予算委で自民の吉野議員はただし書きを理由に東電免責を主張した。しかし枝野官房長官は国会でも大津波によって事故に至る危険性があると指摘しており、「免責条項に当たる状態ではないと明確に言える」と一蹴している。2005年~07年にかけて共産党の吉井議員が今回の事故を予見するような質問をしていた事も指しているのだろう。今回の原発事故関連の枝野長官の言動で唯一評価出来る部分だと思う。

4月28日東電の社長は「免責という理解もありうる」等と未練たらしく言っているが、 流石にこの部分で免責を主張して裁判で争ったりしたら世間が許さないであろう。ちなみに「異常に巨大な」の例として、隕石の衝突が挙げられる(海江田大臣 も言及)程であり、このただし書きの適用は極めて制限的なものでなければ危険な原発の設置自体があり得ない事になってしまうと考えられる。

5 月1日の参院予算委で民主の森議員は昨年10年6月29日の福島原発2号機の外部電源喪失事故(30分2mも水位が下がったもの)を鋭く追及し、東電が今 回の事故を想定外等と言って逃れられる訳が無く免責主張等あり得ないと断じている。この根幹の部分を揺るがしては日本が完全に無責任社会となり大混乱に なってしまうので免責の主張は成り立たないであろう。

第3章 損害賠償措置
第1節 損害賠償措置 第7条(損害賠償措置の内容)

「…原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であって…一事業所当たり1200億円(…)を原子力損害の賠償にあてる事ができるものとして…」

 第2節 原子力損害賠償責任保険契約 第8条(原子力損害賠償責任保障契約)
「…損害保険会社がうめる事を約し、…」

と保険会社と損害賠償措置額をてん補する保険契約を保険料を払って締結する事を定めている。

 第3節 原子力損害賠償補償契約 第10条(原子力損害賠償補償契約)

「…責任保険契約…によってはうめることができない原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生じる損失を政府が補償することを約し、原子力事業者が補償料を納付する…」

これらの条文を素直に読む限り、東電の負担する損害賠償金は1基当たり1200億円までで済み、それ以上は政府が補償していると言って良いと思う。政府はいったん東電に支払わせそのうちほとぼりが冷めた頃合いを見て補填しようという事も法律的にはまだ十分あり得ると思う。
し かし現状でそれで済むとは到底思えない。政治的にも東電がこの条文を盾にして、ここから先は政府が補償するよう主張したら暴動が起きかねない位の非難の嵐 になるだろう。東電は世界的に見て高額の電気料金を徴収して膨大な資産を蓄えている。この条文を文字通り生かすなら第7条の賠償措置額の1200億円では 1桁~2桁低過ぎるのではないかと思われる。

現実的政治的解決策は東電を分離して賠償の為の機構を作る等専門家が検討していると思われるのでもう少し政府・東電の動きを見定める必要がある。

日 本人がもっと権利・自立意識が成熟していれば、こんな酷い放射線の放出事故に対してはもっと沢山の訴訟や仮処分申請が出て、供託の論議も出てくるのが普通 だろう。しかし従属・依存意識が強い人が多い上に東北人は人が良過ぎる人も多いので、次項の供託の項は多分不要だろう。

第4章 国の措置 第16条(国の措置)
「…損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、…必要があると認める時は…必要な援助を行うものとする。」

としている。
第3節第10条の規定と第16条の規定が併存することは何故なのか?現時点では私は分からないのでもう少し理解を深める必要がある。いずれにせよこの少し矛盾する?条文の併存が議論を分かりにくいものにしている事は確かだと思う。

第5章 原子力損害賠償紛争審査会 第18条
「…原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合…自主的な解決に資する一般的な指針の策定に関わる事務を行わせるため、…原子力損害賠償紛争審査会(…「審査会」…)を置く…。」

以 上の文言がこの法律の骨格をなす部分であろう。既に審査会のメンバーも決まり第1回の会合も持たれたようだ。どのような「一般的な指針」が作成されるのか 論議の方向を十分見守っていく必要がある。特に今回は計画的避難地域等わかりにくい決定がなされている。福島県の20mSvの設定も法律上の損害賠償の範 囲を狭める為の方策ではないかと言われている。実際の損害が発生した場合の大きな争点となるだろう。この決定は将来に大き過ぎる禍根を残したものと言える だろう。

とりあえず今後この問題を考える上でのスタートラインについた段階です。            以上



首都圏・関東圏の人達は放射能被害をどう考え対処したら良いか

2011年04月02日
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1.福島原発事故・今後の展開予測

「も はやこれまで。最悪の事態が来そうだ」と覚悟した方が良い。チェルノブイリより現時点での放射能放出量は少ないが、短期で大量に放出したチェルノブイリに 比べこちらは圧倒的に長い期間の放出が続くようだ。レベル6でなく7以上で、いずれチェルノブイリを上回る史上最大の原発事故に拡大していく公算が出て来 た。その場合は東京も仙台も大きな影響を免れない。その事態を踏まえた個々の生活設計が必要だ。
原発のしくみや事故の状況等詳しい纏め発見。概要を深く知りたいお暇な方はどうぞ。

http://www.asahi-net.or.jp/~pu4i-aok/cooldata2/politics/politics27.htm

2.放射能被害の危険を正しく理解しよう

既に放射能被害の大体の傾向は判明しつつあり、普通の国民は諦めて許容して生きていこうと腹を括っている人達も多い。どう対応していくにせよ、まだ問題が多いが大きくは3つの問題がある。

(1)最大の問題は政府・東電・原子力委員会・保安院・マスコミの情報の信頼性の欠如

http://www47.atwiki.jp/goyo-gakusha/pages/13.html(原発関連御用学者リスト)

彼 らがTV・新聞を通じて出す情報は本当に信頼に値しない事は今回多くの人が認識したと思う。ずっと大丈夫だと言い続けてきたが、ちっとも大丈夫でなかっ た。当初から危ないかも知れないと思っていなかったのか?正しい情報を隠蔽しているとしか思えないが何故そうするのか?理由は2つだろう。

一つは彼らの責任回避であり国・東電は損害賠償額が膨らまないように必死である。想定外の事態と認められれば損害賠償はしなくても良いという理屈に持っていこうとしているのだ。
もう一つは絶対に原発推進の国策を揺るがさない事だ。政府は明らかに東電を大切にしていて国民の安全は二の次にしている。原子力の平和利用と言っているがその気になればいつでも軍事に転用出来るのでこの技術は絶対失いたくないのだろうか?米国との軍事機密もあるのかも知れない。

そしてほとぼりをなるべく早く覚まして原発建設推進や外国への販売(これは流石に諦めた?)使用済み核燃料の廃棄場(最終処分場)確保に支障が出ないようにする事も重要な要素だ。だから連日情報統制に必死なのであろう。
しかしそろそろ隠蔽にも限界が出つつある。幸か不幸か今回の事故があまりにも巨大事故になりつつあるので放射能被害が日本一国の問題で済まなくなって来た事で逆に世界から正しい情報が入るようになって来ている。

http://j.mp/dUrfzg(共同通信:フランス放射線専門家グループの見方)

それでも菅政権・官僚・東電・マスコミは日本の学者・ジャーナリストが放射能被害を正しく伝える事を、風評被害を拡散する人達だとこれからも言い続け無視し続けるだろう。

http://ameblo.jp/aratakyo/(永田町異聞によるこの複合体の実状)

重要しかし政府側のOB達ですら遂にギブアップが始まっている!http://bit.ly/hpFYf3

(2)信頼すべき人達を探そう!

こ れに対し客観・公平に放射能の危険性や対応方法を教えてくれる人達が出す情報に沿って自分の生き方・住む場所・放射能への対応を決めていく必要がある。幸 いネットには優れた情報が多々あるので納得のいく情報を選別し、当面はその個人・組織の情報を毎日チェックしていけば良い。
(ブログ後部に羅列した。日本人の最後の良心・知性の持ち主達)

水道水の放射性ヨウ素の基準値は乳児の場合、東京都はもともと10ベクレルと定めていたものを、先週、緊急措置として100ベクレルに引き上げた。こんな大事な事を報道しているメディアは皆無。WHOの基準値は1ベクレル。下がっても数十ベクレルは高いレベル。水を買いに走る人々の気持ちは分かるし重要な事だ。ドイツでは0.5ベクレル、アメリカでは0.1ベクレルです。日本の暫定基準値では何故か300ベクレルと高過ぎる!日本人だけ放射能に特別強い筈はない。

(3)原発現場・周辺での大量被曝の危険性

現場作業員が命懸けでメルトダウンの防止・流出した放射能の処理の為に大量の放射能を被曝覚悟で作業してくれている。ここにも長年の大きな問題があるようだが、申し訳ないが今ここではこの原発現場での放射線被曝の方々の問題には触れない。

放射線障害防止規則による妊婦の被曝量の限界は毎時約0.5マイクロシーベルトですから、私達専門家は福島県の東部の多くの市町村において、妊婦等の避難を勧告する立場にあるのではないでしょうか。(武田邦彦氏)http://bit.ly/e1HD8aこの意見は極めて重く受け止めるべきだ。

チェルノブイリ被災児童の治療にあたり現地調査も行っていた医師「現在日本政府が発表している数値なら、直ちに健康被害にはつながらないというのは事実。ただし土壌汚染数値を見ると、原発周囲30km圏は今後居住不可能になる可能性は高い。政府はそれを国民に告知したのか政府にはそんな気は全くないようである。本当に福島等の野菜が健康に問題が無いなら枝野官房長官の双子の子供に毎日食べさせて見せて下さい。

(4)放射能(放射線を出す能力=ベクレル)と放射線(放出されるエネルギー=シーベルト)の基礎知識(前回ブログと重複あり。一部加筆した)

重要=累積放射能の脅威についてhttp://j.mp/glEHgF

TVで解説する学者や局員は放射線の規制値の解釈をごまかし、被曝する量があたかも少ないような事を言ってそれ程危険がないと強調し続けている。
しかも呆れた事に大量の放射能が長期的に排出される事が防げなくなった今になって規制値を緩和すると言う暴挙を行ったのである。

ここでは科学技術は人類に貢献する為に行うのであり、決して人類の健康を損なう事をやるべきでないとして連日原発緊急情報を出し続ける武田邦彦中部大学教授(元内閣府原子力安全委員会の専門委員)、飯山一郎氏のブログ、植草一秀氏のブログ等の情報を中心に纏めてみた。

①放射線の計測地点(原子力安全・保安院の公式サイト。東電が計測したもの)
・福島原発
2号機より北西0.5キロの事務本館北の数値が発表されなくなった。
・福島
原発の北西20キロ地点の福島県浪江町の数値が発表されなくなった。(15日330μSv/h)
発表しないのは高過ぎて公表出来ないと推測するのが常識的だろう。

②放射線の規制値の単位・危険度を正確に理解しよう。
今迄放射線はICRP(国際放射線防護委員会)食品はWHO(世界保健機構)の規制を使っていた。
・1,000μSv/y =日常生活で一般公衆(医療は除く)の線量限度(年間)
・2,400μSv/y =一人当たりの自然放射能(年間)
・ 50,000μSv/y =胸部X線コンピューター断層の作業者は年間一般人の50倍。
・100,000μSv/y=放射線業務従事者・防災に係る警察・消防従事者に認められている上限(年間)

生活比較でTV等で言われている単位は「Sv/y」発表しているのは「Sv/h」で8,640倍も違う。
TVを見ているだけでは、その事は認識出来ない人が多いだろう。騙しのテクニックである。

福島県浪江町
では原発事故発生後コンスタントに100~330μSv/hの高濃度放射能が観測され続けている。これを年間に換算すると1~3.3Svという恐ろしい高さなのだ。

・6,900μSv/回=CTスキャン1回等を例に出して比較するのは完全に間違っている。こういうごまかしは人道に対する犯罪に近い行為と言っても言い過ぎではないだろう。
この震災で規制の数値を上げる事にしたが、そんな事をすれば、外国は日本産の食品の輸入を禁止する事になろう。日本の国に対する信頼は食料品に限らず地に堕ちたと言う状況になりつつあるのに。

・1ベクレル(Bq)=1秒に1回の崩壊
・1シーベルト(Sv)=体重1g当たり10億回のウラン238の崩壊、或いは100億回のセシウム137の崩壊を吸収する事に相当する。
いずれも人体組織の化学結合がどれだけの割合でダメージを受けたかを示すもの。
・1Sv=1,000mSvを被曝する事は運転中に携帯メールを打つと同じ程度のリスク??

400㍉Sv=白血病の危険増大。

・5Sv以上=命の危険:逃げる。4Svの被曝で死亡率50%。

チェルノブイリ被害を知ろう!
・チェルノブイリ100ミリSvで甲状腺がん。チェルノブイリの放射能事故のレポートを見ると発症は4年後から顕著になり10年後には極めて高くなっていて20年後も続いている。かなり離れた地区の牛乳を飲んで育った子供の被害も大きいようだ。
http://bit.ly/fNLl5H

③放射線の種類
・ヨウ素131 半減期8日
・セシウム137 半減期30年。1950~60年代米・英・ソ連・仏・中国の大気中核実験を数100回繰り返し1960~1965年頃膨大な量の放射性物質が大気中に放出された。
・ストロンチウム90 同上。総量は少ないが骨に蓄積。

プルトニウムの恐ろしさ
・プルトニウム原子炉近くで影響大。化学的に安定していて比較的重く、遠くに飛散しにくいと言われるがナノの大きさなら当然飛散するだろう。除染が容易とも言われこれについても諸説ある。
要は自然界に存在しない地上最高の猛毒だが、この被害の実態の研究は米国がかつて僅かに人体実験をした事はあるが、大量の事例は初めてとなるので充分な研究は行われていないのが実状である。
今回の東北・東日本の人達が大量の人体実験の材料になってしまうのであろう。

http://diamond.jp/articles/-/11689?page=2(ダイヤモンドオンライン週刊上杉隆)

火災発生の場合粉塵が拡散する。
・ジルコニウム95、モリブデン99、ルテニウム103、セリウム141、バリウム140等。

④日常生活への影響
・外からの被曝と内部被曝がある。本来はそれを合計した数値を発表すべきだが「外から」の分だけ発表している可能性があり要確認。もしそうなら2倍にして判断する必要がある。
・皮膚は放射線に強く、飲むのに比べれば10倍で同じと見て良い。今の数値なら赤ちゃんをお風呂に入れても大丈夫です。

⑤放射線に関する情報の発信者(政府・東電側)
・原子力安全保安院
・首相官邸<東北地方太平洋沖地震への対応>放射線モニタリングデータについて
・東京電力ホームページ 環境放射線データの公開
・東京電力・電力館(渋谷)のデータ
・内閣府食品安全委員会は3月17日に決めた暫定食品安全基準を緩和する検討をすると3月25日発表。
原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」を用い、水や食品から1年間に摂取するヨウ素を50ミリシーベルト以下、セシウムを5ミリシーベルト以下としている。

放射線に関する情報の発信者(民間・信頼出来る情報)
・これら政府系の情報をチェックして評価を加えた
家族・自身を守る為のサイトが良いと思う。

放射能の恐怖から身を守るための情報リンク
ここには信頼出来る情報源が満載だ。

以下は私が特に信頼している情報です。
植草一秀氏ブログ http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/
飯山一郎氏ブログ http://grnba.com/iiyama/
武田邦彦教授    http://takedanet.com/ http://news.livedoor.com/article/detail/5460238/
広瀬隆氏動画   http://www.youtube.com/watch?v=ovv2__vc-Nk
後藤政志氏等動画(岩上氏IWJ) http://iwakamiyasumi.com/
田中龍作氏ブログhttp://tanakaryusaku.seesaa.net/
一市民が斬る!!     http://civilopinions.main.jp/
原子力資料情報室 http://cnic.jp/ http://bit.ly/gKtJyO(六ヶ所村について)
小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)

http://ameblo.jp/nijinokayaker/entry-10838706537.html
虹のカヤック隊

http://bit.ly/gH07kg(許容量はがまん量)

反原発学者・ジャーナリストのリス http://www47.atwiki.jp/goyo-gakusha/pages/16.html
広河隆一氏の初動調査もその後の発信も素晴らしい。

http://twitter.com/RyuichiHirokawa

原発第二弾はここで締め、また随時更新・修正していきます。                    以上



福島原発事故の危険度について

2011年03月26日
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先ずは今般の東北地方太平洋沖地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様そのご家族の方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。

今回の原発事故に関していろいろな情報がありますが、私なりに調べた内容を纏めてみました。

東 京電力福島第一原発の事故は、放出された放射線の推定量からみて、国際評価尺度で大事故にあたる「レベル6」に相当することがわかった。すでに米スリーマ イル島原発事故(レベル5)を上回る規模になった。局地的には、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に匹敵する土壌汚染も見つかっている。放出は今も続き周辺 の土地が長期間使えなくなる恐れがあるというのが基本認識で必要。
今回の東北関東大震災の3つの要素(地震・津波・原発事 故)のうち、今後も放射線被害の拡大の懸念の強い原発事故にだけ焦点を当てて、今後の危険度について考えて見たい。誰のどういう情報を注視したら良いの か?大掴みに、当面は「悲観的過ぎずに、それでも最悪の事態を常に想定するという立場」でまとめて見た。 

し かし原発開発の経緯を知るにつけ今回の大事故は起こるべくして起こった事故である事がわかってくる。日本中既に大変危険な状態になってしまっていて、今後 余程原発事故の危険を低減させる努力をしないと、将来今回を遥かに超える「原発の齎す放射能被害事故」が起きてしまう。その事を免れるのは奇跡的に近い程 の段階に来てしまっているのではないか、と思わざるを得ない。

今年から新大綱の策定作業がはじまっているが、いまのところ17年の大綱が生きており、すくなくともこれが現下における日本の原子力行政の基本的な考え方といえる。これによると「2020 年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を目指す。さらに、2030 年までに、少なくとも14 基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約90%を目指していく」(エネルギー基本計画)となっているのだ。

今回は将来の危険性の除去即ち原発推進路線の見直しの必要性の議論は入らず、当面浜岡原発等差し当たり危険性が特に高い原発の即時運転中止を求めるだけに止め、「東京の放射能汚染への対処策」に的を絞り情報を整理して見た。

1.福島原発事故・一体何が起こったのか?

(1)原子力平和利用の歴史

1954年3月米国のビキニ環礁水爆実験で被爆したマグロ漁船第五福竜丸の件で日本の原水爆の反対運動が盛り上がらぬよう日テレの柴田秀利常務(当時)が工作を展開。第三次鳩山一郎内閣の正力松太郎北海道開発庁長官・原子力委員長が原子力平和利用」を推進。原子力に対する日本人のアレルギーをエネルギー革命を待望する世論へと変えるよう原子炉の導入策を推進して来た。

福島第一・1号は1966年の茨城・東海1号(すでに廃炉)1970年の福井・敦賀1号、美浜1号に次いで1971年3月に運転開始した日本で4番目に古い原発である。

(2)福島第一原発・プール設置状況と事故の現状

原子炉はその後順次導入され福島第一が6機、福島第二が4機、合計で10機と膨れ上がってしまった。福井県の13機に次ぐ原発県となっている。(製造会社は福島第一の原子炉はGE製の導入で始まり、その後国産の東芝・日立もGEの技術を踏まえているらしいので5号機基本は殆ど同じ)。
だがそれ以外にも大きな問題がある。使用済み核燃料の処理が大変で、高速増殖炉もうまくいかず、再処理場設置もままならず、やむを得ず各原発敷地に隣接して作った冷却が必要な
「核燃料の巨大プールが存在する」事も大問題なのである。

事故の現状は各機毎に微妙に違う為、各々個別に問題点を把握する必要がある。いずれにしても1機の格納容器が破壊した場合は 放射能濃度が酷くなり、第一原発の他の5機・核燃料プールの管理も不能になり大惨事になる危険性を孕んでいる。その場合は少し離れた福島第二の4機・核燃 料プールも危なくなる。

①1号機 GE製(マークⅠ)。
40年経過している老朽施設で、元々米国で事故が多いと安全性が懸念されていた機種。

今回水素爆発?があり建屋上部が飛んでしまった。地震で格納容器の下の方の内部配管に損傷があって上部に水素が溜まって引火したからなのか?
今配電を再開すべく電源を繋げる工事が出来た段階。まだ冷却水をポンプで安定的に供給出来る状態ではないので炉心溶融が進む恐れがある。
24日又白煙が上がったが炉心(燃料棒)溶融が進んでしまったからなのか。ただ、
「1号機の原子炉に海水を注入中で、24日午後に約218度まで温度は下がったが、逆に格納容器の圧力は高くなった。注水した海水が蒸気になって圧力容器内の圧力が上昇し、外側の格納容器に蒸気が出たとみられる」と東電・政府筋は発表。

原子力安全委員会の班目春樹委員長は23日夜「
1号機の核燃料はかなり溶融している可能性がある。2、3号機に比べて、最も危険な状態が続いている」と指摘している。

②2号機 GE製。
1974年7月運転開始。1994年6月シュラウドにほぼ全面に亘るひび割れが発見され応急的処置がとられた事がある。初期の原発のステンレスは腐食しやすかったようだ。

今 回格納容器の一部損傷か圧力容器の損傷か不明だが、格納容器下部で爆発があったようだ。非常用炉心スプレー系がどうなっているのか?とっくに壊れていても おかしくないが何とか持っている。圧力が高くなった為このまま放っておくと爆発するのでベントを開け外部に放射線物質を放出させている状態が続いていて安 定からはほど遠い。

③3号機 東芝製。
1978年4月運転開始。1997年3月に危険なシュラウド交換工事を発表し年末から工事強行した経緯がある。

14日に1号機と同じ大爆発があり建屋は半分以上吹っ飛んだ。1.2号機と違う3号機の大問題は原料である。プルサーマル計画の一環でMOX原料(ウランと最も猛毒のプルトニウムを混合したもの)を使用しているのだ。そ して発表は水素爆発だが本当はそんな生易しいモノでないと思われる。黒煙まで出した爆発である。原子炉内で生成された全ての放射性物質を放出したのではな いか。(つまりNHKはセシウムとヨウ素だけしか発表しないが当然プルトニウムや他の放射性物質も放出されている筈であると思う。因みに原子力保安院に電 話照会したところ、検査結果数値は東電データに基づいてプルトニウム漏れは無いと発表しているだけとのことであった。)

ヘリや消防車による放水作業はこの3号機に対するのが主体になっていた。格納容器内の水量はどうなっているのか?冷却能力はもう壊れていないのか?

21 日朝格納容器の圧力上昇があった。3時55分爆発し使用済み燃料器付近から黒煙が上がる。その後23日も黒煙が上がった。仮に冷却が順調に行っても安定す るまでおおよそ2年程度はかかるらしい。そして24日遂に作業員3名が被爆、皮膚を損傷する事故が発生してしまった。放射能濃度は1万倍と言う。政府の発 表はまだ不明確だが格納容器か連結する配管の破損を認め始めた。そうなると管理は非常に困難で長期間の放射線・放射能の排出が続く事を覚悟する必要があ る。

④4号機 日立製。
1978年10月運転開始。1988年3月日立の元設計主任の内部告発により圧力容器の欠陥加工履歴が判明していた。

今回事故時は運転を休止していたのだが地震や津波のせいか燃料の温度上昇があったので推移を監視する必要がある。米国専門家は格納容器の斜め上にある核燃料プール(MOX燃料)の水は既に無くなっていて大変危険だと懸念している。

⑤5号機 東芝製。1978年4月運転開始。事故時運転休止中。
3月21日(月)電源回復、冷却可能になる筈だが。温度上昇しないか監視要。

⑥6号機 東芝製。1979年10月運転開始。事故時運転休止中。5号機とほぼ同じ状況か。

⑦使用済み核燃料プール建設。ここにも大量のMOX燃料があるが、現状は一切報道されていない。

1978年原子力委員会が原子炉の耐震性設置基準を初めて定める。この時点までに既に25基が建設着工済みであったのだ!1981年原子力安全委員会が耐震設計審査指針を決定。ここでは津波を軽視していて数メートルの高さしか想定していなかったのだ。

福島第二原発の4機にもそれぞれ問題はあるがここでは省略する。

(3)過去にもあった福島原発事故

1989 年1月福島第二原発3号機の再循環ポンプに大規模破壊事故があった。直径1メートルの鋼鉄製の円盤が二つに割れていた。大口径破断による冷却水喪失事故 で、メルトダウンに繋がりかねないものであった(4年前から最初の異常はあったのだが軽微として放置していたのだ)。

(4)使用済み核燃料の廃棄場所不在の為、各原発で保管している現状の恐ろしさ

①1998年10月福島原発から初の使用済み核燃料テスト搬出。六ヶ所村へ。各地の使用済み核燃料搬出容器に中性子遮蔽材のデータ捏造・改竄発覚。

②1999年6月国会で原子炉等規制の改正案通過。2000年6月施行。47都道府県で使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設が可能になった。最終処分場が無い為にやむを得ず各地の原発に置いているのである。

③2001年福島第2と美浜原発の使用済み核燃料プールが満杯に。

④2010年福島第一原発の使用済み核燃料プールが満杯になり全原発が運転不能状態に陥った。
(詳細要確認)

2.福島原発事故の今後の展開はどうなるのか?

24日現在、これで終息していくかのような話が出だしていたが流石に東京・金町の水源の放射能汚染は乳幼児を持つ母親達を不安に陥れた。飲料水の極く僅かな配給で収まる筈がない。ようやく東京の一般市民も「本当に大丈夫か?」という疑問を抱き始めている。

風車発電や太陽光発電等持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする政府や産業界から独立した第三者機関の環境エネルギー政策研究所飯田哲也所長の3月20日時点の「考えられる最悪のシナリオ」の要旨は以下の通り。

①再臨界と水蒸気爆発の可能性は否定できないが、核爆発やチェルノブイリ事故のような破滅的事象は恐らく起こらない。

②首都圏や仙台等の大都市は、避難勧告のような事態は避けられるのではないか。

③ それでも最悪シナリオで放出される放射能はこれまで一時的に放出された放射能よりも桁違いに多くなる可能性がある為、現状の避難範囲(避難20km屋内退 避30km)の再検討やヨウ素剤の配布計画、広範な地域での被曝を最小限に抑えるためのマニュアルの作成、周知徹底が必要である、としている。

概ね同意だが他の信頼出来る専門家の意見と常にひきくらべて確認・修正していく必要がある。
(長年原発の危険性を訴え続けて来た広瀬隆氏の見方はもう少し厳しいようである)。

3.放射能被害の危険をどう見たら良いのか?

既に放射能被害の大体の傾向は判明しつつあり、普通の国民は諦めて許容して生きていこうと腹を括っている人達が多い。どう対応していくにせよ、まだ問題が多いが大きくは3つの問題がある。

(1)最大の問題は政府・東電・原子力委員会・保安院・マスコミの情報の信頼性の欠如

彼らの出すTV・新聞情報は本当に信頼に値しない。何故正しい情報を隠蔽するのか?理由2つ。一つは彼らの責任回避であり国・東電 は損害賠償額が膨らまないように必死だ。もう一つは絶対に原発推進の国策を揺るがさない事にも必死なのである。政府は明らかに東電を大切にしていて国民の 安全は二の次にしている。
そしてほとぼりをなるべく早く覚まして原発建設推進や外国への販売、廃棄場(最終処分場)確保等に支障が出ないようにする事しか考えていない。だから連日情報統制に必死なのである。しかしそろそろ隠蔽にも限界が出つつある。

こ れに対し客観・公平に放射能の危険性や対応方法を教えてくれる人達を見つけ出し、その人達が出す情報に沿って自分の生き方・住む場所・放射能への対応を決 めていく必要がある。幸いネットには優れた情報が多々あるので納得のいく情報を選別し、当面はその個人・組織の情報を毎日チェックしていけば良い。

(2)原発現場・周辺での大量被曝の危険性

現場作業員が命懸けでメルトダウンの防止等の為大量の放射能被曝覚悟で作業してくれている。
申し訳ないが今ここではこの放射線被曝の方々の問題は触れない。

(3)放射能(放射線を出す能力=ベクレル)と放射線(放出されるエネルギー=シーベルト)の基礎知識

TVで解説する学者や局員は国・東電の利益の為しか考えていない傾向が強い。放射線の規制値の解釈をごまかし、被曝する量があたかも少ないような事を言ってそれ程危険がないと強調し続けている。
しかも呆れた事に大量の放射能が長期的に排出される事が防げなくなった今になって規制値を緩和すると言う暴挙を行ったのである。

ここでは科学技術は人類に貢献する為に行うのであり、決して人類の健康を損なう事をやるべきでないとして連日原発緊急情報を出し続ける武田邦彦中部大学教授(元内閣府原子力安全委員会の専門委員)、飯山一郎氏のブログ、植草一秀氏のブログ等の情報を中心に纏めてみた。

①放射線の計測地点(原子力安全・保安院の公式サイト。東電が計測したもの)
・福島原発2号機より北西0.5キロの事務本館北の数値が発表されなくなった。
・福島
原発の北西20キロ地点の福島県浪江町の数値が発表されなくなった。(15日330μSv/h)

②放射線の規制値の単位・危険度を正確に理解しよう。
今迄放射線はICRP(国際放射線防護委員会)食品はWHO(世界保健機構)の規制を使っていた。
・1,000μSv/y =日常生活で一般公衆(医療は除く)の線量限度(年間)
・2,400μSv/y =一人当たりの自然放射能(年間)
・50,000μSv/y =胸部X線コンピューター断層の作業者は年間一般人の50倍。
・100,000μSv/y=放射線業務従事者・防災に係る警察・消防従事者に認められている上限(年間)

生活比較でTV等で言われている単位は「Sv/y」、発表しているのは「Sv/h」で8,640倍も違う。
福島県浪江町
では、原発事故発生後コンスタントに100~330μSv/hの高濃度放射能が観測され続けている。これを年間に換算すると1~3.3Svという恐ろしい高さなのだ。

・6,900μSv/回=CTスキャン1回等を例に出して比較するのは完全に間違っている。
この震災で規制の数値を上げる事にしたが、外国は日本産の食品の輸入を禁止する事になろう。

・1ベクレル(Bq)=1秒に1回の崩壊
・1シーベルト(Sv)=体重1g当たり10億回のウラン238の崩壊、或いは100億回のセシウム137の崩壊を吸収する事に相当する。
いずれも人体組織の化学結合がどれだけの割合でダメージを受けたかを示すもの。
・1Sv=1,000mSvを被曝する事は運転中に携帯メールを打つと同じ程度のリスク??
400㍉Sv=白血病の危険増大。
・5Sv以上=命の危険:逃げる。4Svの被曝で死亡率50%。
・チェルノブイリ100ミリSvで甲状腺がん

③放射線の種類
・ヨウ素131 半減期8日
・セシウム137 半減期30年。1950~60年代米・英・ソ連・仏・中国の大気中核実験を数100回繰り返し1960~1965年頃膨大な量の放射性物質が大気中に放出された。
・ストロンチウム90 同上。総量は少ないが骨に蓄積。
・プルトニウム241 半減期14年。原子炉近くで影響大。化学的に安定していて遠くに飛散しにくい?除染が容易。

火災発生の場合粉塵が拡散する。
・ジルコニウム95、モリブデン99、ルテニウム103、セリウム141、バリウム140等。

④日常生活への影響
・外からの被曝と内部被曝がある。本来はそれを合計した数値を発表すべきだが「外から」の分だけ発表している可能性があり要確認。もしそうなら2倍にして判断する必要がある。
・皮膚は放射線に強く、飲むのに比べれば10倍で同じと見て良い。赤ちゃんをお風呂に入れても大丈夫です。

⑤放射線に関する情報の発信者
・原子力安全保安院
・首相官邸<東北地方太平洋沖地震への対応>放射線モニタリングデータについて
・東京電力ホームページ 環境放射線データの公開
・東京電力・電力館(渋谷)のデータ
・内閣府食品安全委員会は3月17日に決めた暫定食品安全基準を緩和する検討をすると3月25日発表。原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」を用い、水や食品から1年間に摂取するヨウ素を50ミリシーベルト以下、セシウムを5ミリシーベルト以下としている。
・これら政府系の情報をチェックして評価を加えた
家族・自身を守る為のサイトが良いと思う。

放射能の恐怖から身を守るための情報リンク

植草氏ブログ http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/
飯山氏ブログ http://grnba.com/iiyama/
武田教授    http://takedanet.com/
広瀬氏動画   http://www.youtube.com/watch?v=ovv2__vc-Nk
後藤氏等動画(岩上氏IWJ) http://iwakamiyasumi.com/

取り敢えずひとまずここで締め、随時更新、修正していきます。   以上




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