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「次なる経済大国」 ジム・オニール氏著 北川知子氏訳を読み乍ら感ずる事
<始めに>
世界最大級の投資銀行のゴールドマンサックス(以下GS)、リーマン ショックの嵐にも生き残った。そのグループ会社GSアセット・マネジメント会長のジム・オニール氏の2012年2月の著書。「BRICs」の造語を生みだ し、2001年にチームで分析レポートを発表した事で有名な人物の新著は注目に値する。
世界で起きる重大な出来事に関与している度合が高 く、むしろいつも引き金を弾いていると言ってもいいGS。ギリシャ危機も発端はGSだ。その真実を知る一人なので、一般人として抱く嫌悪の感情は別にし て、真相の核の部分は触れられていないにしても大きな流れについての見方を知っておく事は実に重要だ。大きく言えば大阪の橋下市長の背後にも関与の翳があ るのは当然だろう。
<テーマの概要>
「次なる経済大国」の帯に書かれている事が重要だ。→「日米欧の時代は終わった」。
日本が低迷する20年間、世界経済の勢力図は一変しつつある。いまや世界は成長の時代。驚愕すべき新たな現実が幕を開けようとしている。…我々がこれらの台頭しつつある国々を全く異質な新興国市場と考えるのを止めるならリスクと機会のバランスを良く理解出来るに違いない。
私はBRICs諸国とインドネシア、韓国、メキシコ、トルコの8カ国を「成長国市場」と呼ぶ。これはマーケティングの戦略でもなければ、新しい投資ファンドを売る手段でもない。
誰もが、世界的視野に立って考える為の方法なのだ。
(私の意見)
上記の見解は本当に共感を覚える。特に日本人の比較的多くの人達には受け入れたくない現 実だからだ。それが日本企業のライバルに成長した中国・韓国への極度の反感になったり、今後両国の成長が止まる事を喜んだり望んだりする狭い料簡に通じて いて、つまらない感情的な予測本も多いのが現状だ。
それを米国産軍複合体とその手先達にいいように利用され、マスコミ等に何も知らない癖に 好戦的言辞を吐いている連中が多いのも困ったものだ。米国の国益の為に、前原のように嗾けられて喧嘩する(フリだけでも)愚は絶対に避けなければならな い。こういう場合のマスコミの報道は煽るだけ煽る酷いものだ。(中国が強大になって今の経済優先で無くなり侵略的姿勢が顕著になった場合はどんなに不利で も断固戦う姿勢は必要だが)
日米同盟を盲信し米軍が日本防衛の為に戦う事をアテにしている人達が多いのには驚く。こんなにも多くの米軍基地 が無ければ国を守れないのだろうか?米国の軍事基地のままいつまで占領され無理な事(郵政完全民営化も消費税増税もTPP加入も)を指示されていいなりに なっていたら気が済むのか?
今や大金持ちになった中国資本が日本に投資する事を嫌悪する人達は、米国欧州資本の投資との違いは何だと言うのだろうか?貿易がどれだけお互いの為になっているか何故もっと取り上げないのか?
隣国中国との長い交流の歴史は隅に追いやり日中戦争の歴史のみ強調する。一方大東亜戦争で米軍のなした事は全て忘却さすよう必死で隠し、教育で米国・国際金融資本に従順な人間を量産しようという長い計画があるように思われる。これはあまりにも対照的過ぎないか。
衰退する欧米の仲間に入れて貰って、いつまでもG7だG8だと先進国気取りで特別会計から金を巻き上げられて喜んでいる場合では無いのだ。官僚はIMFや世界銀行やIAEAのポストを与えられ大喜びだ。しかし米国一国覇権の時代はもう終わりが近いのだ。
既 に中国・インド・韓国・インドネシア等の「成長国市場」が世界の景気動向を左右している事は、財務省や日本経済新聞等米国の支配下にあり発言の自由の乏し い人達以外の経済に関心のある人には誰でもわかる事だ。ベトナム・マレーシア・シンガポール等も含めこれからはアジア市場で活路を開いていく必要がある。
この当たり前な事の周知を妨害し、中国・アジア市場で日本企業の活躍を阻み、米国企業だけが進出しようとしていたのが田中角栄を潰 したキッシンジャーであり、小沢一郎を潰そうとしている米国の国策である。昔の政治家・官僚は日本の国益を大切にしたが、徐々に良識派官僚は排除されてい き、愛国派政治家に政治をさせず、米国の意のままになる官僚・マスコミのみが生き残り堕落政治家(国民無視・嘘が平気で自分の利益・地位保全しか考えない 連中)を操り官僚独裁をする異形の属国が今の日本の姿だ。
韓国は既に徹底的にコストカットされ現代グループは滅びサ ムソンの株も6割程は外国資本に握られ、いよいよ日本も韓国同様に完全支配しようとしているのがTPPである。(韓国の野党の必死の抵抗も今の所かき消さ れているがいつまでもいいなりでは済まないだろうと思うが激烈な競争社会で良く頑張っているが気の毒な位だ)
<序章 想像を絶する成長>
リーマンが破綻した3週間後、オニールは結婚25周年記念旅行で2週間のエベレスト山麓トレッキング旅行に行った。その結論は自分達が考えていた「グローバル」危機も、少しもグローバルで無く、西側諸国だけの問題だと気付いた。
BRICsを名付けて10年後の今日これらの国がいくつかの新星と共に現在から未来に向けての世界経済の成長エンジンである事をさらに強く主張しておきたい。
世界金融危機が起きると多くの人々がBRICsの成長物語は終わりだと考えた。直後BRICs株式市場も先進国以上に暴落した。しかしBRICsは世界経済 基盤の激震を乗り越え、これまで以上に逞しい姿を見せた。2001年4カ国合計GDPは約3兆ドル。今は約4倍の11~12兆ドルだ。(世界全体は2倍) これは日本とドイツが新たにもう一つずつ生まれたに等しい。
2005年バングラディシュ、エジプト、インドネシア、イラン、韓国、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナムを「ネクスト11(N-11)」と名付けた。このコンセプトも幅広く受け入れられたが、特に韓国、インドナシア、メキシコ、トルコの4カ国はBRICsと共に「成長国市場」だ。
BRICsの台頭とその後の成功は多くの人々を驚かせている。膨大な数の国民の生活を変え始め、貧困から脱出させ、大きな野心を抱かせ…後続する国々の明るい展望は、現代社会を彩る壮大な物語である。
(私の意見)
近年旅行で、中国(上海・深圳・北京・大連・厦門・成都・青島)・インド・トルコに行って感じた明るさ・発展の息吹きはまさにここに書かれている通り。イギ リス・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ・イタリア・チュニジア・スペイン・フランスの停滞も同様だ(ドイツは頑張っていると思う)。
日本の書店に並ぶアンチ中国のバブル・体制崩壊願望論の視野の狭さに呆れる他はない。昔見た韓国・メキシコの近年の発展振りも見たいし、まだ見ぬロシア・ブラジルの興隆振りも是非この眼で見、肌で感じたいものだ。
しかし、ここまではあくまでもGSという成長の果実の多くを奪い味わう立場の人の言う世界であり、現実では裏面で地下で苦しむ人達の翳も併せ見て行く必要はあるのだが。
<最後に>
この本の本番はこれから始まり1章~9章、終章とあり各章の表題に止めるが、是非ご一読をお勧めする。
第1章 BRICsの誕生
第2章「新興」から「発展」へ
第3章 BRICsーブラジル・ロシア・インド・中国
第4章 勃興する成長市場
第5章 成長に伴う資源は充分か
第6章 次なる消費大国
第7章 歴史を超える新たな同盟
第8章 世界経済の新たな秩序
第9章 塗り替わる世界経済地図。
終章 世界はよりよい時代に
ただ1つ付言したい事は、米国の金融資本の中核にいるGSAMのオニールの世界観はとっくにG2(米国と中国)時代である事、米国→中国へと徐々に覇権ウェイトが移行する(いずれ10年位でGDPが逆転する)事を前提にしており、かつ楽観的な事だ。
この事は米国の支配下でその手先と化した日本の官僚・マスコミ・堕落政治家の眼を通した世界観と、中国の将来についての見方はかなり異なったものである事だ。
日本は原発被曝問題やTPP・消費税問題を抱える今こそ、時間のゆとりと小金のある団塊以上の人達(どうも欧米崇拝から抜けきれぬが)や、金が無くても語学 が充分で無くても若さという最高の財産を持った人達はどんどん世界に飛び出し、この動きに触れ、息吹を直接感じ、活躍の場を切り拡げて欲しいものだ。
と にかく腐りきった視野の狭い官僚・マスコミ・堕落政治家(菅・仙谷・野田等の変節は政治屋以下)の支配下に入りつまらない人生を送るので無く、広い世界へ 飛翔を図るなり、太い繋がりを持つ事が普通の国民にとってこれほど重要な時期は無いだろうとつくづく思う。
世界の金融経済の動向について
<始めに>
今はまだ欧州危機が注目を浴び続けているが、これが今後日本にどう波及して来るのかについて、とても分かり易く面白い本があるので、その概要を纏めつつ日本の近未来について考えてみた。
私の基本認識は、本当の金融危機にある米国が日本崩しを狙っており、その一手段に「日本国債崩し」戦略がある。それに対しキチンと認識し、防禦体制を固める必要がある、という事です。
書名:「ブーメラン」マイケル・ルイス著、東江一紀訳、文芸春秋刊。
著者:1960年ニューオリンズ生れ。プリンストン大学→ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス
→ソロモン・ブラザーズ→作家
副題:欧州から恐慌が返ってくる、メルトダウン・ツアーにようこそ!!!
内容:
序章 欧州危機を見通していた男
第1章 漁師たちは投資銀行家になった
第2章 公務員が民間企業の三倍の給料をとる国
第3章 アイルランド人は耐え忍ぶ
第4章 ドイツ人の秘密の本性
第5章 あなたの中の内なるギリシャ
解説 藤沢数希
【序章の概要】
サブプライム危機の最中の2008年末、大儲けしたその男(カイル・バス)の関心は、遠い外国にあった。「これはもっと大きな危機の兆候にすぎない。ギリシャは2年以内に破綻する」
アメリカの住宅ブームが長続きしないだろうと思っていた人々は大勢いたが、CDS市場でアメリカ金融界が広範囲にわたって焼け落ちるほうに賭けた人間は、ほ んの15人程で、そのほとんどがロンドンかニューヨークにあるヘッジファンドの経営者。そのうち著者の取材に応じたのがヘイマン・キャピタルのカイル・バ ス一人だけだった。
カイル・バスはベア・スターンズで債権セールスを7年。貯めたおカネと集めたおカネをサブプライム・モーゲージ債市場崩れに賭け、ベア・スターンズも含め崩壊したが、カイル・バスは財をなした。
バスが新たに夢中になったのは、国家。ウォール街の投資銀行が組んだ怪しげな有価証券絡みのリスクをFRBが吸収。他の裕福な先進諸国の政府も、アメリカと同じような対応をしていた。
豊かな国々の公的債務は急速に膨らんだが、そこには各国の銀行システム内部の債務も含まれていて、新たな危機を迎えると政府に転嫁される事になる。
バスは独自に4カ月かけデータを収集。アイルランドは1年あたりの税収の25倍の債務を貯め込んでいた。スペインとフランスは歳入の10倍。歴史上はデフォ ルト水準だ。→国のバランス・シートについての第一人者ケネス・ロゴフ(ハーバード教授)も情報を持たずこんな酷いとは信じ難いとしていた。
ギリシャ、アイルランド、日本等では金利が少し上がっただけで、国家予算がそっくり債務の金利支払いに費やされる事態に立ち至ってしまう。その事に市場が気付いたら投資家の心理に変化が訪れる・・・
恐らくギリシャが真っ先に潰れて、もしかするとユーロ崩壊の引き金になるかも知れない・・・いつになるか迷うが早く安いうちにCDSを買っておこう・・・その通りだとして一般の人間に何が出来るか・・・銃と金の現物を買いなさい
2 年半経った2011年夏・・・ギリシャはまさに債務不履行の瀬戸際に、アイルランドとポルトガルは大々的な救済措置を求めている、日本の財務相は代表団を 米国に派遣して10年物国債5千億ドル分の買手探しにピムコやブラックロック等の大手債権ファンド巡りをしていた。・・・カイル・バスは日本とフランスの 破綻に賭けている・・・2度に亘り正しかったカイル・ボスの原点はアイスランドを巡るボードゲームが基点のようだ。
【第1章の概要=アイスランド】
人口32万人余の漁師の国に2003年突然アメリカの投資銀行家が押し寄せ「重要なのは金を借りて買って値段を上げること」と煽られ、漁師たちがぼろ資産を 買い漁るにわか投資銀行家になり金融国が誕生したが2008年破綻。悲惨な状況になっている顛末が滑稽で、失礼だが面白い。
→東大をトップで卒業した(聡明な筈の)著名な元官僚の一流経済学者?野口悠紀夫氏は破綻前アイスランドを日本も見習い金融立国を目指すべきと絶賛していた。今でも何故か権威?です。
(今の公的年金制度の矛盾の分析・指摘も正しそうだが、この見解も盲信は出来ません)
【第2章の概要=ギリシャ】
公務員が民間企業の三倍の給料をとる国。その上賄賂を受け取る公務員がゼネストをうつ!倒錯の国。徴税も選挙の年はまともに機能しないし、土地登記もないら しい・・・20年前当時の財務相が、ギリシャの鉄道利用者を全員タクシーに乗せたほうがまだ安上がりと言っていた・・・今回の破綻危機では男55歳女50 歳からの手厚い年金は世界中に有名になった。
ユーロに加盟する為には財政赤字をGDP比で3%以下にしなければなら なかったギリシャは国家支出を粉飾してユーロにもぐりこんだ。粉飾を演出指導したゴールドマン・サックスはギリシャが意のままに金を借り、使えるからくり を作り、宝くじ収益や高速道路料金、空港税、EUからの資金援助まで証券化した。
→経営の苦しいゴールドマン・サックスが今これを明らかにしたのは、米国の危機から眼を欧州に逸らす意義も大きいのではないか。まさに文字通りのマッチポンプです。
事態が一変したのは2009年10月ギリシャ政権がギリシャ正教の聖地アトス山のヴァトペディ修道院が資産価値の無い湖を政府に売り付け、価値の高い官有地 と変えたスキャンダル(恐らく贈賄)で倒れ、替ったパパコンスタンティヌ財務相が財政赤字を3.7%→2週間後12.5%→実際14%近い事が判明と発表 してからだ。・・・それにしても修道院のトップ2人は凄腕だったようだ。
減免して貰ったとはいえ、莫大な借金を抱えばらばらな私利を追求するのに馴れきったギリシャ人の生活の再構築は可能なのだろうか?
【第3章の概要=アイルランド】
人口450万人。1938年イギリスから独立し1949年英連邦からも脱退した国だ。
外国から資金と人が流れ込み、由緒ある三大銀行が不動産融資に狂奔。しかし、そのバブルが弾けると銀行の借金を政府が保証、納税者であるアイルランド人はじっと耐える事を強いられている。
アングロ・アイリッシュ銀行(世界広しと言えどこれ以上に酷い銀行はないらしい)。アイルランド銀行、アライド・アイリッシュ銀行と併せ、資本主義者が故意 に資本主義を破壊する時代とはいえ、この国の銀行家達ほどの記録的スピードで破壊した者は存在しない。金を借りた人達が自分達同士で土地を買い、一時は謎 の経済成長を果たし10年近く魔法にかけられたような暮らしを送った後に多額の損失を抱えたのだ。途中でモーガン・ケリー・ダブリン大教授が警告を発した が誰も聞かず、皆がソフト・ランディングする見こみ等と言いながら・・・今や政府・銀行はアメリカの投資銀行家と、豪の経営コンサルタントと、ドイツ人等 のEU幹部に占領されてしまった。
国民は大勢のポーランド人等の移民労働者と共に故国を離れようとしている。失業率も14%、政府の財政赤字はGDPの32%。誰もが落ちぶれてしまっても殆ど騒がず耐え忍んでいるのだ。
【第4章の概要=ドイツ】
ド イツ人の秘密の本性。危機に陥る欧州諸国の中でドイツだけが頼みの綱だ。ドイツ人がギリシャ人の放蕩の付けを自分達が払わなければならないのかという問い に直面している。ヨーロッパ金融の命運を握っているのはドイツで、本質的にドイツの通貨であるユーロの恩恵に与りたいならもっとドイツ人らしさを身につけ るしかない。
ドイツの特異性=他の国々は外貨を燃料にさまざまな愚行に走ろうとする。ドイツ人は銀行を通じて自分の 金を外国人に差し出し、愚行に走らせようとする。借入ブームの中、ドイツの銀行家は、わざわざ泥にまみれようとしたのだ。アメリカのサブプライムに、アイ ルランドの不動産貴族に、アイスランドのにわか金融業者に、ギリシャにも・・・金を貸して、ドイツ人が絶対しないような事をさせた・・・
国内では慎み深いのに・・・
ド イツの銀行=ニューヨークほど金融機関に監視の眼が行き届いている所は無いと信じていた・・・一方ニューヨークでは「こんなくずを買う奴がいるもんか。待 てよ、ベルリン州立銀行がいる!」と言っていたのに・・・デュッセルドルフのIKBもロンドンの債権セールスから「汲めども尽きぬ現金の泉」と言われてい た・・・アメリカ人が公式ルール以外のものに則ってゲームをしている可能性に気付かなかったのだ。トリプルA債権の過去の実績を見てリスクは存在しないと鵜呑みにしたのだ・・・
反ユーロエコノミストはユーロを2種類発行し二線級はギリシャ、スペイン、イタリア等の踏み倒し国、一線級をドイツ、オーストリア、ベルギー、オランダ、フィンランド、迷ってフランスも入れてあげる案を言っている位だが、どう決着していくのだろうか。
→個人的には長い目でユーロの復権を信じている。
【第5章=カリフォルニア州】
ギリシャで起こった事は対岸の火事ではない。飽食の末に、立ち行かなくなった自治体があちこちで悲鳴をあげる。誰もが自分の事しか考えないとき、大事なものが失われる・・・
<アメリカの不思議な優越的立場>
格付け機関がアメリカの信用格付けを史上初めて引き下げた直後アメリカの国債が急騰し、新発の十年物国債の利回りが過去最低の2.04%に落ち込んだ・・・要するにアメリカ政府には白地の小切手が与えられているのだ。不安定さが臨界点を超えると反転するのだが・・・
→ドルの崩落は本当に起こり得ないのだろうか?
①アメリカの年金原資の深刻な状況
2010.12.19 米国ニュース番組「60ミニッツ」でウォール街の民間アナリストのメレディス・ホイットニーが、アメリカの地方自治体の赤字は年間五千億ドルを超えてお り、定年退職者に支払うべき金額と、実際に手元にある金額との間に一兆五千億ドルの開きがあり・・・この数字も楽観的な誤差を含んでいて・・・深刻度は変 わらない。支払いは不可能なのだ・・・しかし州が債務不履行になるのでなく押し付けられる郡や市に深刻な問題が発生する、と発言→翌日地方債市場が暴落。 →各州の経済の縮小が大きいのが原因のようだ。
1980年に州の年金原資のうち株式市場に投資されたのが23%だったのが、2008年には60%に拡大している。FRBが金利ゼロなのに年利8%を標榜、資金不足の医療保険制度、州への交付金の削減、景気の軟調が重なっているのだ。
②最も危ない州カリフォルニアと一番憐れむべき市ヴァレーホ
2004 年から7年間舵取りをしたシュワルツネッガー知事。就任2年目で州の支出に対する制限、自党に有利な選挙区改定の禁止、公務員組合の選挙費の制限、学校教 師の在職期間の延長の4案全て否決された。カリフォルニア政治制度は、選ばれても、制度の壁で阻まれ、失態を見て住民は愛想を尽かすという「悪魔の循環」 で、有権者が自分達の選んだ人間を見下し続ける可能性を最大化するように設計されている。10年間で職員の給与が65%上昇し、高等教育5%減、社会福祉費5%増、講演・保養施設費は同じだったそうだ。
→2010年9/13のシュワルツネッガー来日時前原国交相と面談の本当の目的は州債の購入依頼といわれている。(2兆円購入説もある)
2008年ヴァレーホは破産宣言。警察官・消防士は半分になり機能不全で市民との関係は最悪に。守らない、消せない状況らしい。
<終わりに=私の見解>
ユーロ危機は、壮絶な2回の世界大戦を経験した欧州が再度分裂するかどうかの危機だが、これからも小波乱は繰り返すだろうが、紆余曲折があっても乗り越えて結束強化に向かうと思う。
となるとカイル・バスのような獰猛なヘッジファンドの次なるターゲットは日本になるのか?
1~2年前から日本の国債には多大の問題があるとされている。
・日本の銀行が日本人の預金で購入しているが、団塊世代の退職で今後預金の取り崩しが予想され、国債購入資金がショートするのではないかという懸念。
・そもそも日本の持つ米国絡みの債券の価値がまだ明らかにされていないが既に大きく毀損されているのではないかという疑いが強い。
・日本が米国に持つ金融資産は事実上凍結されており引き出す事は出来ないのではないかという懸念は深まり一般人にも浸透している。
・中韓の台頭等貿易の構造が大きく変化し日本の輸出産業の優位性が急激に失われている状況
・これに福島原発問題が重くのしかかっている。
財務省のTPPや消費税増税の断固たる強行突破姿勢や、米国資本の別働隊と思われる維新の会の活動を見ていると、米国は日本人の健全な勢力を力で押さえ込み、本気で日本の資産の殆どを奪って延命を図ろうとしているように見える。
カイル・バスのヘイマン・アドバイザーズが日本国債のCDSで大儲けして大富豪にならぬよう日本の財政を官僚連合体と子分だけに大甘で、米国の要求に屈し続ける財務省の思うままにさせていてはいけないと強く思います。
しかし、どういうシナリオになるか見続けなければいけないが、これまでの延長線で済む筈はなく、大激変に見舞われる時期が近付きつつある事だけは確かでしょう。
中国 中東 FRB
私達は今暮らしに直結する歴史の大転換点にいる。世界の大きな3つの動きについて大掴みに把握する事が大切である。
1.中国の脅威・中国の住宅バブル崩壊論
最近日本に帰化した石平氏の講演を聞いた。中国の海洋進出の日本への脅威と、住宅バブルの危うさが2大テーマだったと思う。説得力のある話が多かったので更に知る為に同氏の多くの著書の中で「中国大虐殺史」を読み、中国の脅威についても考えてみた。
【中国の脅威】
<「中国大虐殺史」の要旨の一部>
日中の歴史認識で争点になる「南京事件問題」の本質と、中国共産党政権の残忍な性格を理解出来る好著である。それにしても歴史上の真実の惨劇に正面から向かい合うのは中々辛かった。
毛沢東の革命は本当に多くの人達の命を奪ってなされたものであった事が良くわかる。中国共産党は1921年7月上海で第1回党大会を開き、コミンテルンの中 国支部として発足以来中国史上最長の大規模な暴力・殺戮の時代が続けて来た。革命とは「破落戸というならず者達との共謀殺人」だとの事。「北伐」に始まり 「一村一焼一殺」「紅軍大粛清」「長春兵糧攻め」「土地改革運動」「鎮反」「粛反」「反右派闘争」「文化大革命」と続き18年前の天安門事件に至る迄の歴 史は絶対的権力者の恐ろしさが私の想像力を遥かに超えたレベルのものであった事を教えてくれる。
石平氏によれば「南 京問題」は「天安門事件」等の本物の殺人者が日本に怨恨を転嫁させようとする口実に使っているとの事だ。又、上記の数々の暴虐をやり続けた中国共産党が、 その後ソ連やベトナムやインドと国境を巡って争ったが大きな成果を得る事が出来なかった為、今度は海洋に進出拡大していく戦略に舵を切ったので、今後はま ず台湾いずれ日本への侵略は必須であり、日本はそれに対して充分備える必要があると強調している。
自立した日本として、日中戦争に巻き込まれず日中友好を実現して生き抜いていく為にも、中国への厳しい視点と対抗策も必要である事は理解出来た。
【住宅バブル崩壊論】
人民元は小幅な変動幅を取り入れたものの、まだ米ドルとのペッグ制を基本としている。その幅の範囲で僅かな利上げが続いているが米国から見れば全く不十分で、この点で両国は折り合わないままだ。
又、 住宅バブルの現状が楽観出来る状態ではないのは確かだが、何せ中国の発展はまだ臨海部が主体で内陸部はまだまだ成長の余地が大きく、国際的な資源不足の時 代だが中国は資源確保競争で健闘しており、資源さえ確保出来れば今後の成長余力はまだ大きい。今後多少の調整局面はあっても致命的なものにはならないと見 てまず間違いがないと考える。
中国を語る人達の多くがまだまだ研究・情報不足のものが多く、見方が一面的で感情的な 偏狭なものが多過ぎる。より正確な実情の把握が必要で中国が悪くなる事を期待するのではなく、どう友好を維持しつつ飲み込まれないように対抗していくのか という基本的立場・意志の確立が必要である。
2.中東
中 東の政変・政争が繰り広げられている。各国毎にそれぞれ事情があるようで、正確な所は把握が難しくじっくり推移を見守るしかないが、いくつか見えて来た事 がある。一つはサウジやカタールやUAE等日本が約8割原油を依存している国々は巨大な原油の収入により、豊かで貧富の格差はあっても一般の国民も生活は 充分可能で大きな不満があって王政の転覆を求める勢力は弱い事である。又国民を監視する体制も万全で情報統制も進んでいるようで、これ以上のドミノ現象に は至らないようだ。
ここでも一つだけはっきりしている事は、今後原油価格も他の資源同様高騰していくので、只でさえ高まっていた産油国の経 済的優位さが今後ますます高まっていくだろうという事である。それは日本のような原油輸入国にとっては今より更に恐ろしく辛い局面になっていくという事で もあるのだ。
チュニジアやエジプトは中東の中では比較的貧しい国々であった事が政変に至った要因のようだ。リビアは 内戦の様相を呈しているが、いずれの国もTwitterやフェイスブック等が一役買ったようだが欧米の関与の真実は諸説あるのでどれが本当か今後徐々に明 らかになっていくだろう。現段階ではっきり言える事は米国の指導力の低下が顕著であったという事だ。
いずれにせよイ ランや各国内のイスラム同胞団の力が拡大してイスラエルへの脅威が増え、近い将来の限定核戦争の危険が増していくという見方も根強く存在する。しかしこん なにイスラエルには不利と見える情勢下でも、彼らの入植地ではパレスチナ人に対し攻撃を強化している実態もあるようでその強靭さには驚くしかないのだ。
3.FRB
リー マンショック以降世界の金融情勢は米国のFRBがドルを刷りまくりそのカネで世界のマーケットに影響を及ぼしてきた。一つだけはっきり言える事はリーマン 後ますます巨大化したGS等の巨大金融資本は更に権益を拡大しており、巨大コンピューター取引を駆使し日本の金融資産を騙し取り続ける仕掛け作りに余念が ないという事なのである。
ギリシャ危機を出発点としてユーロ危機を演出したGS達は、ギリシャの国家破綻からユーロ 崩壊が起こりかねないと演出して、底値で日本に手離させユーロ買いに転じそこでも大儲けした。次は日米欧の債券バブルを崩壊させて大儲けをしようとしてい る。これだけドルを刷れば大幅円高必至なのだが一筋縄にはいかないようだ。途中一時的円安を演出するかも知れないが、大きくは円高にしてTPPや消費税増 税により日本経済を困窮させた後、債券バブルを崩壊させ急激なインフレを起こし日本を財政破綻に導き日本の資産を纂脱をして最後の大博打で史上を崩壊させ 大儲けしようと企んでいると思われるがどう展開するか。日米欧共何が起こってもおかしくない崖っぷちに立っているのである。
FRB 東京支店と言われる日銀は今はそれ程積極的共犯ではないようだし、これ以上の打つ手に乏しいが問題は財務省である。藤井氏や与謝野氏等高齢の政治家・高級 財務官僚は大きく変貌した世界の金融経済の実態を理解出来ないようだ。彼らを隠れ蓑にしてFRBが取り仕切る巨大金融資本の方針通り忠実に動く機関に成り 下がっているのが最大の問題なのである。
日経や朝日も全く同罪であり、GS等の巨大金融機関や今や債券市場の崩壊に 賭けたピムコの作戦通りに乗せられてカモになっていく公算が強い。リーマンの時に、あれだけ無能さが明らかになった格付け機関の格付けを未だに信じている 日本の金融機関や機関投資家は愚か過ぎる。彼らの資産はこれから1~2年で本当に毟り取られる事になるだろう。よくもまあこんな見え透いた騙しのテクニッ クに騙され続けるものか呆れる外はない。
今回も大き過ぎるテーマで、それぞれの専門家が多数 研究しているテーマを論じたが、この1~2年が決着の時期だと思う。いずれも明るくない内容であり国難のような事ばかり書いたが、ざっくり見れば当たらず とも遠からずだと思う。お金持ちには紙幣でなく現物を沢山持っておくという手があるが、そうでない私達に出来る事は困難に立ち向かえるように精神的に備え ておくしかないのである。