ロシア旅行(ボルガの船旅中心)とその後知った事

1.はじめに ロシアは近くて遠い国だった。高校迄新潟で育ったので対岸のナホトカはいずれ行けるだろうと思っていたが縁が遠く、効率の悪い共産主義が残れる時代でも無かったしロシア国家破産危機もあり、興味が湧かなかった。66歳の最近になってようやく天然ガスを巡るオルガルヒの活動やプーチン率いるロシアの利権拡大・興隆ぶりを聞き、一度見てみたくなった。今回はモスクワからサンクトペテルブルグまで、途中キジ島等に立ち寄り乍らのボルガ川下り1800kmの旅を選び楽しむ事が出来た。折しもウクライナ(ロシアにとって中心的存在の一つだった旧ソ連の国。国家形成期はキエフの方が中心だった)を巡り、一極覇権の崩壊(ドル暴落)を食い止める為軍事力でロシアを抑えつけ逆に強化(ドル防衛)したい米国とこれに対抗してもう一方の極BRICSの連携を強化拡大させようというロシアとの大戦直前の軍事・経済の角逐が展開されているので、ロシア国内にも緊張が漂っているのかと思っていた。しかし少なくとも一観光客の眼から見る限りロシアは全くのんびりしたもので、道中ずっとどこでも観光客で賑わっていてかなり拍子抜けだった。お陰でロシアの豊かな自然・文化・芸術を堪能して充実した心が潤う旅を味わう事が出来た。今回ロシアの現状を見て感じた様々な事を、ロシア関連の世界史の基礎知識部分を確認し照らし合わせながら纏めておきたい。 2.旅の概要 (1)スケジュールと内容のあらまし 旅程は2014.6.20~7.2迄の13日間。テーマは「ショーロホフ号で行く世界遺産キジ島とロシアの母なる大河ボルガの船旅」であった。モスクワやサンクトペテルブルグ観光にも最低限必要な日程は確保されており、見るべき所は観て来れたと思う。 ・大韓航空でソウル経由モスクワへ。空港の入国審査は行列は長かったが緩かった。市内で3泊(ホテル1泊・船中2泊)し観光した後、夕刻ボルガ川クルーズに出発した。ドイツ建造の船で乗客は200名余、日本人21名を除き大半がドイツ人だった。 ・ボルガ川は両岸とも白樺やアカマツ等がずっと延々とほぼ同じ高さで綺麗に立ち並び、偶に森の中にダーチャと呼ばれる別荘や教会が点在して見えていた。途中ウグリチ、ヤロスラビ、ゴリツィー、キジ島、マンドロギーに立ち寄り観光ながら、川下りを存分に楽しんだ。船室は狭くシャワーと手洗いが一緒でちょっと驚いたが、慣れれば特段問題も無く、食事も昼夜ともコースメニューでおいしかったのでつい食べ過ぎ・飲み過ぎがちになった。船旅なので日本人の同行の方々から多くの旅行や人生の体験談を聞くことが出来て楽しかった。又イベントでドイツ人乗客との歌の交歓会で俄か合唱団員になり「百万本のバラ」や「故郷」を合唱したり折り紙を通じた交流の企画もあって、原生林の中をボッーとする暇もあまりないまま開始7日目の朝にサンクトペテルブルグに到着した。 ・サンクトぺテルブルグではそのまま船中で2泊した。お目当てのエルミタージュ美術館やピョートル宮殿等の観光はいずれも期待に違わぬものであった。サンクトペテルブルク国際白夜マラソン?に出くわしたせいもあり、バスがかなりの渋滞に巻き込まれたしどこも観光客の行列が凄かった。本当に満足しきって3日目の夜、再び大韓航空でソウル経由関空へ帰国した。 (2)旅の見所 <モスクワ観光> ・初日 ロシアの歴史や文化の原点となった郊外の都市群「黄金の環」の代表格セルギエフ・ボザードへ。ロシア正教最大の聖地で世界遺産のトロイツェ・セルギエフ大修道院(モンゴルが支配した14世紀初めに建立)は、モンゴル支配に対抗するロシア諸公のまとめ役を果たした所。ロシアで最も尊敬される聖人セルギイが整備されたモスクワで無く、原生林でクマ・狼や冬は零下20~30度の中で貧苦に耐えながら聖書の教えをひたむきに求めて信仰生活を送った所だ。その聖セルギイの祝福を受けたモスクワ大公ドミトリー将軍率いるロシア軍がモンゴルに勝利した。ロシア軍の勝利を神に感謝しイワン雷帝が建て、代々の皇帝が戴冠式を行ったという白亜のウスペンスキー聖堂等を見学した。今回「黄金の環」の言葉自体も初めて知ったが、それぞれがロシア諸公国の首都として、最終的にモスクワが中心になっていった源流となった地域の事だったのだ。ソ連崩壊後、大修道院、モスクワ神学大学、聖歌隊指揮者、イコン画家等正教文化の中心地となっている。 ・2日目 雀ガ丘から市街を一望後、チャイコフスキーが「白鳥の湖」を構想したという湖の近くのノボディヴィチ女子修道院や、エリツインやゴルバチョフの妻等の様々なレリーフの墓がある隣接の墓地を見たり、多くの壁画で有名な地下鉄(最近事故があったようだ)に入場して大混雑の中を皆ではぐれない様にしながらキエフ駅(ロシアは行き先が駅名になっている)等の多くの壁画を鑑賞した。又、1856年に豪商トレチャコフが創設したイコン画等の古代ロシア民族画を集めたトレチャコフ美術館を見た後、広大な赤(美しいの意あり)の広場を聖ワシリー寺院等を眺めながらゆっくり散策した。ここがソビエト時代以降毎年11月7日に革命記念軍事パレードが開かれている所なのか。 ・3日目 雨の日に時間指定でクレムリン(城塞)見学。12世紀に木造の要塞で始まった。15~16世紀に現在の形になり、この時点でロシア正教の総本山ウスペンスキー聖堂等を建立した。プーチンの大統領府があるとは思えない程警備が手薄のように見えた。ロシア最古の博物館である「武器庫博物館」には1613年~1917年迄続いたロシア最後の王朝のロマノフ王朝の宝物等12世紀以来ロシアの皇帝が収集して来た世界の美術工芸品が沢山展示されていた。     <ボルガ川の船旅> ・4日目 古都ウグリチに夕刻着。イワン雷帝の死後流された息子ドミトリー・ナ・クラヴィーの名の付いた聖堂を見学した。 ・5日目 ヤロスラヴリ 2010年に建都1000年を迎えた世界遺産(2005年)「黄金の環」最大の街。15世紀にはボルガ川を伝って、カスピ海、黒海、バルト海、北海を通じる一大交易都市として発展した。13世紀に創建された中世建築の傑作スパソ・プレオブラジェンスキー修道院へ。5千ルーブル札にある小礼拝堂を見て、修道院内の庭では鐘を使った生演奏を聴き、教会内で聖歌と民謡のアカペラを聴く。実力も音響も素晴らしかった。預言者イリヤ聖堂前を行く人。この聖堂はフレスコ画で名高くユネスコの世界遺産に登録されている。 ・6日目 ゴリツィー キリルベロゼスキー修道院を見学。夜10時でも明るい白夜は初体験です。 ・7日目 キジ島 欧州第2の湖オネガ湖に浮かぶ緑の世界遺産キジ島散策。幅500m、長さ7キロの細長い小島だ。木造のプレオプラジェンスカヤ教会は修復中だったが、緑の小道を歩みながら徐々に近づくと想像を上回る大きさを持った美しい教会だった。特に木製で作られた22個の玉ねぎと言われる部分はじっと見上げ続けても見飽きない美しい曲線をなしていた。補強工事中だったが中のイコノスタシスは鮮明で、中には曼荼羅風のものもあって驚いた.売店のお嬢さんは純朴そのもの。他の冬の教会や、ベル・タワー等の木造建築群も自然にマッチして美しく、先住民にノブゴロドからの移住者がキリスト教を伝えロシア正教会の教会を建設したのだ。ボルガ川の北のはずれなので流石にここまでは争乱が及ばなかったので残ったのであろうこの島の風景と聴いたベルの音は心と耳に深く刻まれて残っています。 ・8日目 マンドロギ-- 素朴な森に生産者自身が直売する民芸品店が多くあり良い土産を沢山見つけた。又ウオッカ博物館、馬術ショ-、民族音楽ショー等を楽しみながらのバーベキューは格別の味であった。 <サンクトペテルブルグ観光> ・9日目 聖ニコライ聖堂を撮影し、エミルタージュ美術館「冬の宮殿」へ。大混雑で並んで順番を待ちやっと印象派のゴッホ、モネ、シスレー等や、レンブラント、ダ・ヴィンチの作品のみを中国人観光客の行列割り込みの酷さに憤慨しながら慌ただしく見学できた。帰国後美術館で買った「エルミタージュ」を眺めて見たが、見ていないものがあまりにも多く、いずれ又ゆっくり鑑賞したいものだ。その後水中翼船で郊外のピョートル夏の宮殿で大噴水を見た。夜はパレスシアターで本場のバレエ「白鳥の湖」を鑑賞出来た。時代の変化からか原作の悲劇をハッピーエンドに変えていた。 ・10日目 翌日はエカテリーナ宮殿へ。金箔の大きな部屋が続き勢威が窺えたが、順番待ちの観光客でごった返し、ゆっくりは見れなかった。1960年代に戦争の破壊から修復されたという豪華な大理石の階段からレリーフを見ながら入った。陶器のコレクションや美術品は戦乱を避けウラル地方に逃れていたという。「明るい回廊」の雰囲気を味わい大広間天井の「ロシアの勝利」も見上げ豪華な「食事の間」を見ながら行った「黄金のアンフィラーダ(続き部屋)」のハイライトの「琥珀の間」は写真撮影禁止だったが天井から壁まで美しい琥珀で埋め尽くされていた。「緑の食堂」も一度はこんな場所で食事をして見たいと思わせる空間だった。まだまだキリが無いので一度は行って見て下さい。今回は行けなかったエカテリーナ公園等も再訪して見たいものです。午後はイサク寺院に。帰途にネギ坊主が派手な「血の上の教会」を撮影した。夜は船内で有志のカクテル&ウオッカパーティーで名残りを惜しんだ。 ・11日目 18世紀にスウェーデンの攻撃から守る為作られたというペテロパブロフスク要塞を見学。中央の大聖堂にはピョートル大帝やエカテリーナ2世等の皇帝達の棺が華やかに並べられていた(お骨は地下との事)。端の方にはレーニンやドストエフスキーを収容した獄もあった。いつかドストエフスキー「罪と罰」の舞台も歩いてみたいものだ。 3.ロシア旅行の感想 (1)ロシア正教の著しい復活盛況ぶり ロシア正教はピョートル1世やソビエトによる受難の時代を経て完全に復活していて大盛況である事を目の当たりにする旅だった。ロシア旅行中毎日のように教会を訪れ、昔から表現様式が殆ど変わらないという美しいイコン画を観て、主要教会では聖歌の素晴らしい合唱を聴く日々が続いた。ソビエト時代の弾圧の跡は殆ど窺えないし、国民の日常生活に横3本のロシア十字架やイコン画が深く根付いているように感じられた。 <ロシア正教の歩み(概要)とロシアの歴史> ・988年  キエフ公国のウラジミール大公が正式にキリスト教を受け入れる。妃の出身国ビザンティン帝国の国教であったギリシャ正教を選んだ。当初はコンスタンティノープル総主教の管轄下だったが、その後ギリシャ正教が次第にロシア独自に発展していく。 ・1236年 キプチャク・ハーン国の侵略が度重なり中心都市キエフは荒廃していった。ウラジミール大公没後は強力な支配者があらわれずモンゴルの襲来を受け支配されたのだ。 ・1345年 モンゴル支配は教会には寛容で、荒野修道院運動でモスクワ郊外にトロイツェ・セルギエフ大修道院が建立される。 ・1453年 ビザンチン帝国が終焉しモスクワ・ロシアが出現した。紋章を双頭の鷲に。1480年にはモスクワ大公イワン3世がモンゴル軍を撃退し250年以上続いた「タタールのくびき」が終りを告げた。 ・1547年 イワン4世(雷帝)がロシア統一し皇帝に。しかしバルト海進出を狙ったがポーランド等との戦いに疲弊しその後も安定せず混乱の時代(スムータ)が続く。 ・1589年 モスクワ府主教が総主教に昇格。ローマ帝国、ビザンティン帝国亡き後モスクワ大公国こそ「世界を支配するキリスト教世界帝国=第3のローマ」との思想も登場。文化・芸術の隆盛が始まる。 (17世紀~ロマノフ王朝時代 典礼の改革を巡り正教会は分裂。又、皇帝より教会が上位にあると主張した為正教会の力は弱まっていく) ・1721年 ピョートル1世(大帝)は総主教の地位を廃止。替りに宗務院を設置し皇帝の管理下に。美術と宗教を切り離させた。1712年サンクトペテルブルグをしロシア革命迄続いた新首都に。 (1762年即位のエカテリーナ2世と共に西欧の政治制度を吸収し侵略と併合で列強入り。文化・芸術も発展させコレクションはエルミタージュ美術館の母体になった。ボリショイ劇場も建立した。 18世紀末からはツルゲーネフ、ドストエフスキー、トルストイ、プーシキン等の文豪を輩出した。1812年ナポレオンとの大祖国戦争に終止符、1904年の日露戦争、第1次世界大戦で食料・燃料難となりロシア革命勃発) ・1917年 帝政が崩壊し、教会は2世紀ぶりに総主教制を復活させるが、それも束の間で、今度は「無神論」を掲げるソビエト政権により厳しい弾圧を受ける。 ・1985年 ゴルバチョフのペレストロイカ政策で、再び最大の宗教団体として復活。 ・1988年 政府が全面的に支援して1000年祝賀祭を開催。教会の権威が急速に復活。 日本は明治新政府により1868年の神仏分離令、1870年の大教宣布で廃仏毀釈が進んだが、その後の市民生活に占める宗教(特に仏教)の密着度会いは低いままである事と対照的だと感じられた。 (2)美しく素朴さを感ずる広大な国であった事 モスクワは緑も豊富でゴミも無く道路清掃の散水車も頻繁に見かけ、赤の広場も街並みも教会を中心にしてカラフルで整然としていて、本当に美しい首都であった。勿論ボルガ川の両岸の原生林は期待通り美しく、船からボッーと眺め続けいても見飽きなかった。サンクトペテルブルグは中心部の美術館・宮殿・教会の華やかさは格別だが、一方で自動車も多く道路の渋滞がかなり酷かった。街外れにはコンテナ風のやや粗末な住宅?らしきものの一角もあり気になった。自然や街もそうだが、教会音楽、バレエ、民芸品等の文化度が高く、人々も素朴さを感じさせる人が多かった。ロシアが他国からの侵略や度重なる戦争を繰り返し撃退して来た歴史の概要を知った今、米国との大戦争の瀬戸際に立たされていても割と平然としていられる理由が何となく理解出来た気がした。日本へのお土産は、どこに行ってもマトリョーシカがあっていくつかは買ったが後半はもういいと思って他の品を探したが、帰国後定番だがやはりマトリョーシカがロシア土産らしいと好評だった。ホフロマ塗りの親しさを表すというスプーンも喜ばれた。ただ今回の旅行先はロシアの殆ど全てのように思っていたが、地図で見ると広いロシアの中のほんの西欧よりの一部に過ぎない事も再認識した。 4.番外編(緊迫する国際情勢関連) (1))欧米の経済制裁の影響は? 出発前に欧米によりロシアに経済制裁があった事は知っていたが関空で円をルーブルに替えていった。ところが少なくとも観光客への値付けは殆どがユーロであり、ルーブルで払うとレートに手数料がかかるのか割高になるので驚いた。ドイツとロシアの関係は表面上はともかく意外に密接な事の証左だろう。この問題で帰国後に大ニュースが待っていた。ブラジルでのBRICSの会合でBRICS開発銀行創設決定の報道である。これは戦後ずっと続いて来た米ドル・石油本位制への挑戦になるものであり米国経済にも大打撃を与える事になるので米国は絶対に座視し得ないだろう。欧米のロシア経済制裁の第2弾もあるようだし、今後どう展開していくのか経済に止まらず米国/NATOとロシアの軍事的衝突に至る事も充分あり得る大問題だ。100年前の第一次世界大戦、70年前の第二次世界大戦後初めての世界の覇権構造に大転換を齎す可能性が強い歴史的な出来事と思われる。小競り合い程度で辛うじて平和裏に進展していくのか本当に核戦争になるのか、世界は今瀬戸際に来ていると思う。 (2)ウクライナ政変はロシア攻撃の拠点作り 出発前に、ロシアの隣国ウクライナで暴動後のクーデター的政権交代で親米政権が誕生し、それに即座に対抗したロシアによるクリミア編入、東部ウクライナの親ロ派自治政府の発生、それを押し潰そうとするウクライナ政府軍の攻撃と、米国とロシアの間にかなり激しい角逐があった。旅行の間特にボルガ川クルーズ中は新情報も途絶えて久し振りにのんびりしたが、帰国後事態は緊迫度を増しとうとう7月17日にはウクライナ東部上空1万メートル超を飛行中のマレーシア航空機が撃墜されるに至った。攻撃したのがウクライナ政府か親ロシア側なのかまだ分からないが、私自身ははっきりした推論とその論拠は持っている。いずれにせよ、撃墜直前のイスラエルのガザ侵攻、マレーシア航空機撃墜、イラク北部のISISの攻勢は皆世界の覇権を巡る関連した動きである事は間違いないだろう。周辺国も全て各々多大な影響を受ける事は当然である。勿論日本の中国敵視策や集団的自衛権問題もこれらの動きと直結していて、米国ネオコンの指示に基づくものだろう。一般の日本人からすると信じ難いと思うが、米国は本気でロシアとの核戦争も辞さずの構えであり、中東ガザ攻撃やイラクの内戦やアフリカの資源争いに日本の自衛隊を下請けとして参戦させたいようである。米欧/NATOと連携して露中に対決し、米国から日本に対し一説では軍事費は20兆円、自衛隊員も沢山出すよう強い指示があるといわれている。本当はのんびりと川下りをしたり、こんな旅行記を書いていられるような平穏な場合では無いのだが。 (3)作家ミハイル・ショーロホフと手塚治虫 若い頃ドストエフスキーやトルストイ等の翻訳本を受験勉強そっちのけで読んだが、今回乗る船の船名のショーロホフは読んだ事が無かったので旅行前に短編を探し赤木かん子編の「戦争」(ポプラ社)に選ばれた「人の運命」という本を読んだ。ウクライナがソビエトの一員だった時代にドイツとの戦争(1941年~45年)に召集され人生を翻弄されるウクライナ出身の逞しく優しい兵士の物語で、戦争が人の運命を狂わす悲しみが心に響く名作品だった。ウクライナが地政学的にも本当に重要な位置にあるのは今も昔も変わらないようだ。同じ本に手塚治虫の「ぼくは戦争を忘れない/語り部になりたい」があり実際の被爆撃体験を基に人間狩り、大量虐殺、言論の弾圧という国家の暴力があった時代の事を語ってくれていた事も知った。昭和19年、勿論漫画は1冊も無かった時代、軍需工場への動員、空襲等について描かれていた。 4.終りに 大概どこの国に行っても一般の国民の多くは善良な人達の方が多い。ロシアはロシア正教会の影響なのか観光客の立場からなのか思っていたよりずっと純朴な人達しか会わなかった。しかしプーチンを支える人達の中にパミャーチと呼ばれる一団があるそうで、この存在があるので米欧/NATOの攻撃に曝されても今の所何とか対抗出来ているそうである。表面だけは自由な民主主義国の体面を装っているが、内実は昨今は特に隠しようも無くあからさまに米国のいいなりにさせられている日本の現状とは対照的だ。いくら天然ガスや北方領土の権利が欲しくても、米国と完全に敵対しているプーチン大統領との交渉が許される状況では無い筈だが、マレーシア航空機MH17の撃墜事故では米国の要請に拘わらずまだロシアの仕業と決めつけず非難をしていないのは注目される事だ。訪日の実現はもう無理と諦めざるを得なくなるのではないだろうかと思うが実現すると面白いのだが。私達も攻められてもかわす術を持って何度も復活する独立自尊の国になりたいものであるが、当面は軍事ではオスプレイの本土配備等本土の基地化進展、経済は消費税増税やTPPの多大な影響により弱者から順次脱落する社会が更に加速して、一層苦境に立たされていくだろう。しかしいずれの日かロシアの250年余続いた「タタールのくびき」ならぬ日本の「米国のくびき」から解き放たれる時が来るのだろうか。いずれにせよロシアは自然も宗教も音楽も文学もとても魅力的な国だった。その一端を見る事が出来て大変楽しく、心の糧になる旅行であった。… [more]

ロシア旅行(ボルガの船旅中心)とその後知った事 ロシア旅行(ボルガの船旅中心)とその後知った事

ギリシャ旅行(古代は神話と民主制国家の源、今は財政破綻のみ強調される国)で考えた事

1.はじめに ギリシャにはおよそ3000もの島があるというが、私は3つの目的でギリシャ旅行では人気のエーゲ海で無くペロポネソス半島主体の小旅行を選んで行って来た。 ①「若き日」に憧れていたがすっかり忘れていた古代ギリシャ文明・美術に直接触れる事。又、一時だが目指したオリンピックの発祥の地を見る事。 ②「民主主義」の淵源と言われる地で、そもそも古代ギリシャの民主主義とは本当はどんなものだったかを考え、現在の日本の「民主主義(もどき?)」の問題点を再認識し今後の参考にする事。 ③財務省は消費税増税の為に「ギリシャの財政破綻」を盛んにPRして一般の日本人を騙している。外国に多大な借金をしている財政困窮のギリシャと90数%が国内で消化される国債で賄う日本の財政の課題との関連性は全く希薄であるとの論点を強化する事。 (1)ペロポネソス半島とアテネ歴史の旅 最近のギリシャ旅行はエーゲ海巡りやメテオラネス修道院等の方が人気があるようだが、今回は古代ギリシャ神話や民主政治の発祥の地として輝かしかった歴史の舞台の中心地である「ペロポネソス半島とアテネを巡る旅」の企画は希望にぴったりだったので飛びついた。 ①オリンピア遺跡は今もオリンピックの採火をするヘラ神殿前の採火灯や2004年のギリシャ五輪の時も円盤投げ会場として使われた古代競技場もあるとの事で、一度は行って見たかった。 ②昔良く父に聞かされたが今は死語のようなスパルタ教育のスパルタは、アテネと拮抗して戦い続けて消耗した為双方共倒れとなり、その後長い間東ローマ帝国やオスマントルコ、ドイツ出身の国王等にずっと支配され続ける結果を招いてしまい、長い主権喪失期間を経てようやく1829年に独立した事や、独立後も2度の世界大戦、戦後の内戦等動乱続きで大変だった歴史の一端に触れる事。 ③何と言ってもアテネでパルテノン神殿を見て往時の勢威を偲びアクロポリス博物館、アテネ考古学博物館で古代ギリシャ文明や美のレベルの高さに触れる事。 ④バッセのアポロン神殿、ギリシャ正教会の聖堂、ティリンス遺跡、エピダウロス遺跡、ミケーネ遺跡、コリントス遺跡等でギリシャ神話の骨格となる舞台を見て、その後の争奪の歴史にも触れて、欧米の文明文化の起源の地がその後どのように展開していったのかに触れるのが目的だった。 (2)古代の民主制国家とはどんなものだったのか。現代にどんな影響を齎しているのか。 3年前のトルコ旅行でエフィソスに行った際ソクラテスも逗留した舞台でもあった話を聞き、昔読んだプラトンの「ソクラテスの弁明」を帰国後読み直して見てギリシャに行かなければと思った。又今回のギリシャ旅行ではプラトンの「国家」が今でも欧米の国家戦略立案者、特にネオコン思想の中心と言われるハーバード大学でも必須な基礎知識となっている事を知り、帰国後初めて読んで見た。昨今の日本の政治状況を見ると「民主主義は理想の制度では無い」という疑念が深まるが、約2500年も前のプラトンの「国家」では民主主義がファシズムを生み出し易い制度である事が語られていて、今の日本や世界各地の実状そのものであり、描かれていた事や人物像は現代にもそっくり通じるものであり自分のようなタイプの人間も批判の対象になっていたりして本当に驚いた。更に日頃日本には民主主義ですら実はちゃんと根付いていないし、むしろ後退している現状である事を再認識させられているのだが(司法・検察当局の権限が強大過ぎ、かつ恣意的運用も強過ぎて冤罪も多い)。日本でも地政学や国際関係論といった学問がもっと深く拡がって視野の広い人物がそれを政策に生かして国際協調を大切にしていかないと、折角アジアで唯一植民地化しなかった国なのに、時を経て「国家」に描かれたように権力者が劣化して政治(軍事)も経済も表向きはともかく実質的に完全に植民地化されてしまう危険性が強まって来ている。 (3)ギリシャと日本の財政事情は全く別物である 今日の一般の日本人には「ギリシャは財政破綻した国」であり「日本も消費税を増税しないとギリシャのように財政破綻してしまうから大変だ」という誤った認識が完全に刷り込まれて、ギリシャは財政破綻した貧しい気の毒な国と考えている人が多い(尤もそんな関心すらも無い人の方が多いが)。しかし、このプロパガンダは消費税増税を認めさせ権益を更に強化する為に財務省等がマスコミを動かし行われたものであり、全く関係もないギリシャにとっては引き合いにされて迷惑な話だろう。ギリシャは2010年にユーロ危機が叫ばれてから4年目を迎え予想通り破綻もせず今の所危機は沈静化している。ユーロ圏にとってギリシャは歴史のルーツであるという意味合いに加え、観光地・別荘地として無くてはならない存在であり、又オリーブやぶどう等の食料も豊富で、ドイツ等からの債務返済要求も当初の厳しい姿勢が徐々に緩やかなものになって来ているようである。ドイツ・フランス中心の欧州にとってギリシャは必要不可欠な国なので決して切り捨てられたりはしないだろう。 一方、貯蓄大国である日本の消費税増税の本当の目的は①消費税の輸出大企業への還付金により輸出大企業の輸出競争力を支援する事 ②法人税減税分に充てる事とが大半の目的である。この事は、これまでの消費税導入後の税収の推移等を調べれば明確に理解出来る事だ。又、「税と社会保障の一体改革」や「高齢化社会での社会保障費の増大に対処する為」という一見尤もらしい大嘘も消費税増税の決定と併せて年金制度等あらゆる社会保障制度の改悪が続く事で隠しきれなくなりつつある。アベノミクスは金融財政で無理やり株を急浮上させ少数の不動産・株式保有者は大いに潤い喜んだが、本当の成功である景気回復に必要な第3の矢の成長力・国際競争力の回復には繋がっていない。今後、経済特区で外国資本を誘致したり雇用条件を自由化して切り下げたりしても本格的な景気回復は困難である。遠からず(中国発になるか?)又々バブルが崩壊し、アベノミクスの失敗が明確になる確率は限りなく100%に近いと思う。一般国民も嘘を信じていたと皆気付く事になるだろうが、その時に後悔してももう遅いのだ。それにしても一般の日本人が同じ嘘に何回でも騙され続けるのも悪く、もう庇いようが無いと半ば呆れ半ば諦めて突き放して見ているしかない。 確かにギリシャの財政事情は悪くユーロの信認を崩しかねない存在のようだが、それとてドルの基軸通貨性を守る為に米国がゴールドマンサックスが中心になってユーロを相対的に弱体化さす為にギリシャを材料にして攻撃を仕組んだ事は知る人ぞ知る公然の事実だ。この状況を利用した日本の財務省は「消費税増税によって自らの権益を拡大する為」だけに、先進工業国で国民の貯蓄が著しく大きくリーマンショック時等も安全通貨としてドルも避難してくる程相対的にはまだ財政が健全な日本と、農業・観光国でドイツを始め他国からの借金比率の高くなりすぎた小国ギリシャでは他の条件は全く違う事を百も承知なのに「GDP対比の政府の債務比率の高さ」のみを取り出してマスコミを通じて多くの日本人の将来不安を煽り、「ギリシャのようにはなりたくないから何とか財政破綻を免れる為、辛かろうが増税に甘んじて社会保障制度を守ると共に子や孫の将来も守っていくべきだ」とマスコミを使って洗脳してしまっているのが実状だ。ギリシャの現状の一端を理解して、「日本の財政問題はギリシャとの関わりで無く独自な問題として考えるべき」という認識が必要である。本当に騙されるのもいい加減にして欲しいものだが、このまま国債増発と公的年金による株式買い支えだけで株高を演出しているとインフレリスクが高まり年金世代を中心に大きな負担増に繋がっていき弱者の脱落が消費支出の縮小、社会の不安定化に繋がっていくだろう。一部で喧伝されているが本来は遠い筈の、ヘッジファンドの狙う国債の暴落や金利急騰等の最悪の事態も視野に入りだして来るかも知れない。 2.旅行日程(2/23~3/3) 第1日目 関空~イスタンブール経由アテネへ 乗り継ぎが慌ただしかった。 第2日目 アテネからコリントス経由オリンピアへ 今回の旅はゆったりとした大型のバスでペロポネソス半島中に麓から山上まで連なるオリーブ畑とぶどう畑を見ながら走り回る旅だった。2004年のアテネオリンピックの時に作られたと舗装道路は驚く程整備されており、トンネルも片側通行で2本ずつ作られておりオリーブが美しいので快適だった。見所は1893年に掘られたコリントス運河だった(現在は小さな観光船が通れる程度)。 第3日目 オリンピア遺跡、考古学博物館見学後ギティオへ ・オリンピア遺跡はBC776年~AD392年迄約1000年間ゼウスへの奉納競技が行われた場所。遺跡中が野生の花々とオリーブ等の木々に彩られレスリングや競技場(2004年のアテネ五輪でも投擲競技が行われた)等各施設が古代そのままに残っていた。ゼウスの神殿や今も2020年の東京五輪でも聖火を採るヘラの神殿も時空を超えて厳かに存在していた。 … [more]

ギリシャ旅行(古代は神話と民主制国家の源、今は財政破綻のみ強調される国)で考えた事 ギリシャ旅行(古代は神話と民主制国家の源、今は財政破綻のみ強調される国)で考えた事

イスラエル旅行と、その後知った事

<はじめに> 今の世界情勢に多大な影響力を及ぼすイスラエルの実像を少しでも観たい、行けば何かが分かるだろうと思い、2013年2月末から10日間行って来た。旧約聖書も新約聖書も読んだ事は無いが、3つの宗教の聖地エルサレムに行きそのイロハも知りたかった。行って見ると思いがけなく美しい風景や、豊富美味な食事も良かったが、何といっても古代から現代に至る壮大な歴史・宗教の渦巻が強烈であった。旅行中やはり実力のある凄い国だと思うようになっていった。ただ他の旅行先の時は、帰国後1カ月程で旅行記も無邪気に纏める事が出来たが、イスラエルだけは何かまだ本質的な理解が足りな過ぎると感じ何も書けなかった。歴史・宗教についても知識不足だし、政治・軍事状況は錯綜しているので表面的知識だけでは不十分で、余程良く見極めないと安易に語れない問題も多く、帰国後に知識の確認や補充が必要でした。10か月経過してようやく最低限の情報の整理と自分なりの納得が出来たので現段階の到達点として纏めて、やっと辿り着いた基礎的判断材料としておきたい。 折しも、最近イスラエル中銀のフィッシャー前総裁が来年2月にFRBの副議長になるというニュースがあった。サマーズやバーナンキを指導した人らしいが、ユダヤ金融資本主義が裏で世界を支配しているという風説がまるでその通り表に現れたようなニュースだ。金融や政治についてちょっと知れば、世界は我々一般人の想像を超えたレベルで極く少数の権力者への集権化が進んでいる事が見えてくる。日本でも日銀の株主、日本の株式会社の株主構成や提携先を見ればおぼろげながら実態が分かってくるし、具体的事例を探して挙げる材料に事欠かない。又、日米欧のマスコミを支配していて僅かでもその実態への言及や批判を封じ込めようとしている。しかし、少人数の権力者集団が銀行、軍事力&検察・警察を握りながらマスコミを通じ情報統制を強化しようとしている実情を全て覆い隠す事は難しいだろう。現在米国ドル・石油本位制による単独覇権維持が難しい微妙な局面を迎え、激しい角逐が続いている事を知る人も少なくない。この問題の根底と今後の見通しを把握するのに良い考える材料を提供してくれる国がイスラエルだと思う。今回見た事・知りえた事を繋ぎ合せ、複雑極まりない世界の歴史・宗教・政治軍事状況に強い影響を与えているイスラエルが一体どんな国か、その一端でも正しく認識して、その力に圧倒されるだけでなく日本の美風・大切なものは何なのかを再確認して守っていく手掛かりにしていければ良いと考えている。 <旅程と概要> 第1日 関空→トルコ航空でイスタンブール経由テルアビブへ ・テルアビブ 空港は賑わっていた。玄関口にベン・グリオン初代首相の像がある。直ぐに空港から北へ走行したバスの両側はずっと菜の花が一面に群生していて、美しかった四万十川や宇佐神宮の川岸・指宿等の菜の花程鮮やかではないが、これだけ連綿と長く続く菜の花畑を見るのは初めてで、本当に綺麗な国に良い季節に来たものだと感激した。 第2日 テルアビブ着→アッコー→ハイファ泊 ・カイザリア テルアビブから北へ40kmの所にある紀元前後、初代ローマ皇帝アウグストゥスに従っていたユダヤのヘロデ大王が築いた街で、ここからペテロ・パウロがローマへ向かいキリスト教の布教を始めたとの事だ。美しい地中海が眩く目に飛び込んできて海岸の間近にある円形劇場跡や導水橋跡等を見ながら散策し、春風を楽しんだ。 ・アッコー  交通の要衝にあるこの街は歴史上十字軍とイスラム等の攻防・戦闘が繰り返された小高い眺望の開けた丘にある。十字軍の要塞も残っていた。現在は残存パレスチナ人が1/3居住しているが高い所はユダヤ人、低地がアラブ人と居住地が分かれているそうだ。オスマンの旧市街は世界遺産になっているが通過しただけだった。 ・ハイファ   … [more]

イスラエル旅行と、その後知った事 イスラエル旅行と、その後知った事

イラン旅行と最近の中東情勢で感じた事

<はじめに> イランに9月26日から11日間旅して来た。「栄華を極めた古都と素朴な村を巡る古代ペルシャ・バスの旅」である。 一般的な日本人から見ると「イランは危ない国」のイメージが強い。確かに戦乱・動乱の続く中東は内戦・テロも多いだけでなく、比較的遠いし何故そういう状況になっているか分からないので敬遠するのは理解出来る。しかし、日本のマスコミ報道は欧米マスコミのキリスト教の立場を元にしてシオニズムで出来たイスラエルの影響を強く受けたプロパガンダ報道の追随が多く公平性に問題がある。マスコミ以外の情報も加味して見ると内戦の続くシリアを別にすれば、イランではこの旅行期間に本格的な戦争は起こらないしテロの危険も極小だと判断した。そして今後「イスラエル&欧米とイランの戦争が回避出来るのかどうか」を見守る上でより正確に理解する為に、自分の眼で本当のイランの現状も少し知っておきたかった。一時は米国の空爆の危険が高まったが、ロシアの介入や米国議会が慎重になった事等で回避された。そしてたまたま今回の旅行直前に、ローハニ新大統領とオバマ大統領の歴史的な電話会談があり、又11月初旬からジュネーブで開かれているイランの核開発問題協議が大詰めを迎えている。イスラエルやサウジアラビアの反対が強く協議成立迄に簡単にいく筈はないが、この成否は中東地域だけでなく世界情勢の安定に多大な影響を及ばすので協議の行方を固唾をのんで見守っています。 中東情勢についての基礎知識は、現政権の政策に批判的な元官僚の孫崎享氏(元イラン大使)や天木直人氏(元レバノン大使)の著作やメルマガ、JSRメルマガ他の情報がより公正で信頼性が高いと考えて参考にしている。又、小室直樹氏の「イスラム原論」や「アラブの逆襲」も読み直し、理解出来る範囲で(旧約聖書や新約聖書、コーラン等を読んでいないので充分な理解は難しい)それらも照らし合わせながら自分の感じた事を纏めてみた。日本の人達が国際情勢に多大な影響を及ぼすイラン問題やイスラム教を偏った情報だけでなく、少しでも公正な立場から考えイラン等イスラム圏の多くの善良な人達と友好関係を築いていけたら良いと考えています。イラン(ペルシャ)は決して侮れない実力を持ち世界をリードしてきた輝かしい歴史・文化・宗教が存在し理解を深める事でより心豊かになれると感じさせる旅でした。 <私の見たイランの現状と背景> 現在は人口7000万人余のイラン。豊か過ぎる親欧米産油国のカタール航空便でカタール経由まずは1260万人が住む首都テヘランへ。街はイラン高原の麓で海抜1500Mと高く、北に4000m級の山々が並んで聳えていて美しくホテルではエアコンを切って過ごした(空調は全館一律タイプだが)。山の向こうはカスピ海で南岸は緑も豊かで冬は雪も降るという。テヘラン市内は鉄道や地下鉄の整備が充分でなく南北のメインストリートは酷い渋滞(ガソリン不足の筈だが)で悩まされていた。今は欧米主導で日本も追随した経済制裁で、飛行機の部品が供給されず運行が不安定な為バスで国を縦断しようという企画の旅であったが、却ってよりイランの魅力に浸れる旅だったと思う。 1.宗教=イスラム教関連について ・イスラム教の教義と一般イラン人のイスラム教&現指導者層への思い 使徒モハメットが西暦610年メッカ郊外でアッラーの神の啓示を受けたとして始めたイスラム教の教義に六信(神・天使・啓典・使徒・来世・定命)五行(信仰告白・礼拝・喜捨・断食・巡礼)があるようだ。異郷・異教の私だが、トルコやエルサレム、イラン等を旅して訪れるイスラムのモスクはどれもとても好きな空間です。礼拝は他のイスラム教国では決められた通り5回行う人が多いが、イランでは3回で簡便に済ます人も多いそうで全く行わない人も3割程度らしい。今回のツアーガイドは日本に6年間暮らしたイラン人だったが、預言者モハメッド布教以前のアケメネス朝ペルシャやササン朝ペルシャ時代等古代の非イスラムの歴史・文化の豊かさを誇りにしていてイスラム一色ではないようだった。前回の大統領選挙では投票で下位だったにも拘わらず、イスラム教指導者達の推薦で強硬派のアフマディネジャドが就任したいきさつがあったらしく当時も反対のデモがあり、今回選挙では自分達の選んだローハニが新大統領に選ばれたので米国との関係が改善されそうだと皆大歓迎だったそうだ。 ・偶像崇拝禁止の意義 各地に大小いろいろなモスクがあったがテヘランは少ないと感じた。モスクの中はどこも偶像は何も無く、ただ壁面や天井は美しく床に絨毯やゴザも敷き詰められた心休まる空間でした。イスラム教の偶像崇拝禁止は、バーミヤーン遺跡(アフガニスタン)の大仏の破壊等何であんな乱暴な事をするのかと思っていたが、アッラーの神(神だがヤハウェと同一ではない)を唯一絶対の神としモハメットですら最後の使徒で最大の預言者として位置づけられていて偶像化していない。又イスラム教の信徒間は平等で王様も貧民も神の前では同列だそうで宗教指導者はいるが聖職者・僧侶階級を持たない事は、僧や神官を別格扱いしている日本人には理解しにくい所だ。それでも異教徒の私でも、モスク構内に入ると何とはなしに漂う温かさや優しさに共感や安らぎを感じて心が伸びやかになるのが嬉しい事です。 ・ハラール(食べて良いもの)とハラーム(食べてはいけないもの) テヘラン市内のバザールの中の食料店に質量とも豊富な食材が並んでいるのに驚いた。くるみ・ピスタチオ・ピーナッツがあまりに安くておいしかったので、大量に買って来てお土産にしたが、友人・知人から好評しきりでした。欧米日等の経済制裁により4年間年率30%のインフレに苦しめられているが、それでも食料自給率は100%で輸出もしていて食料問題はないとの事(但しテヘランは家賃が高く、殆どの人が仕事を2つ掛け持ちで働いていて、医師が夜タクシーの運転手をやる位との事だった)。アルコール厳禁なのでノンアルコールビール(但しレモン味等)で過ごしたが痛痒は感じなかった。ケバブも美味だが、ホテル・レストランはどこへ行ってもほぼ同じパターンのてんこ盛りでとても食べ切れなかった。豚だけでなく牙や爪がある動物が禁止されている(ハラーム)が制限は複雑で(意外に解釈は柔軟らしい)、食べて良いものはハラール表示のあるものに限定されているとの事。いずれにせよ食べ物はふんだんで果物も何でもあって皆とてもおいしいし、スイーツはアルコールが飲めないので発達していて、日本に負けず劣らずのおいしいお菓子が豊富でお土産にしたら大変喜ばれました。 ・イスラム教シーア派の国 イランは世界のイスラム人口16億人のうち約1割という少数派のシーア派が殆どの国だ。スンニ派と元々の教義に大差は無さそうだが、モハメッドの血統を継ぐイマームをいだくか、血統にとらわれないカリフを信者代表とするかの違いがある以上の事はまだ理解していないのでこれ以上触れない。イスラム教第一の聖地メッカのある多数派のスンニ派の国サウジアラビアとは関係が悪く、シリア内戦でもイスラム少数派のアラウィー派のアサド政権支持のイランと反政府軍支持のサウジアラビアとは敵対して主導権争いをしているようだ。勿論イスラエルや欧米の諜報組織も深く絡み石油利権を巡って争っているようだが、中東のより根本的な問題はパレスチナ問題だ。それにカダフィーやムバラク等独裁的政権が倒れた現在、サウジやカタール等湾岸国の王家の存在はまだ盤石だろうが微妙でに複雑に絡み合っているので正確な把握は難しいが、出来るだけ正確に知ろうとしている所です。 今回はイスラム教シーア派第2の聖地ゴムでマスアーメ廟を見学。ここはイスラム革命の発端となった地でホメイニ師もここで学んでいた人口78万人の宗教保守派の牙城。多数の参拝者と教学者達がいたが、皆ホメイニ師の怖いイメージとはほど遠くにこやかでゆったりとしていて教学者に声を掛けたらきさくで一緒に撮影に応じてくれた。ゴムを本拠にする現指導者のハーメネイ師達はローハニ以外を選びたかったようだが、52%の選挙結果には抗えなかったようだ。 2.政治&軍事関連 ・原子力 イランは医療用アンソトープの生産を行うテヘラン原子炉の稼働の為20%高濃縮ウランの自国製造を進めていると主張しているが、核保有に繋がる90%以上の高濃縮ウラン製造に繋がると警戒されてきた。そこでイランはIAEAの査察受け入れをするので経済制裁を大幅に緩和するよう主張している。それでも今回協議成立迄至らず20日に再協議となったようだ。イスラエルは自国の安全の為に核武装していて米欧も暗黙で認めている事は公然の秘密だが、中東の他の国の核武装はイスラエルが絶対に認めないので米欧・IAEAも認めない。今回イランがIAEAの査察を認めてもイスラエルが協議成立に反対なのは、核保有せずともイランの影響力の強大化を警戒しているのだろう。イスラエルは経済制裁の緩和を極小にすべく強硬に主張していて大詰めの段階だ。今回旅行時テヘランからイスファハンへバスで南に向かう道中に2か所核関連施設が遠望できる所があったが、走行中の車中からの撮影すら禁止されていました。 ・パフレヴィー時代と(ホメイニ師らの)イラン革命の見方 モハンマド・レザー・シャー・パフラヴィー(パーレビ国王)は父の開いたパハラヴィー王朝の2代目。1970年代は米国との関係は良好で最恵国待遇を得て最新鋭の戦闘機や旅客機を供与される等イラン近代化(開発独裁)を推進した。又ヒジャブの着用禁止等の女性解放も推進したが、近代化を嫌うホメイニ師らのイスラム法学者や傀儡政権への国民の反発等でアメリカ大使館人質事件等が立て続けて起こり、最終的に国王は国外追放となった。以降米国との敵対関係が続いて来ていた。今回の旅ではテヘランのサーダバード宮殿で当時のペルシャ絨毯等の宝物を見たが実に華やかであったがイランの人達は敬遠しているとの事で、近代化の時代はたった2代だけで元のイスラム教国に戻っていった事が分かった。ちなみに現在は旅行者もヒジャブ着用が義務付けられていたので妻達も滞在中ずっと着用していた。女性の社会進出はまだまだとはいえ、学生も多いテヘランで大学生の7割が女性だそうです。 3・主に古代を偲ぶ旅行内容 ・テヘラン 考古学博物館では古代ペルシャの展示物が多かったがゆっくり鑑賞する時間不足でした。宝石博物館(イラン中央銀行の地下)では歴代王家のまばゆいばかりの財宝を見学した。 ・カシャーン 人口27万人の王の道(スーサ~ペルセポリス)沿いにテヘランから南へ約3時間のオアシス都市。欧米列強の圧迫下にあったカージャール朝の宰相アミール・カビールが更迭後に暮らし暗殺された世界遺産のフィーン庭園は噴水・池が美しくまだ眼に浮かぶ。バラの花も綺麗だった(バラはイランからイギリス等に拡がったとの事)し散歩は実に快適であった。有名なカシャーンの絹の絨毯は懐具合に関わらず見ると買いたくなるのが必定なので眼を瞑ってパスしました(トルコ絨毯よりこちらが本場だそうです)。 ・イスファハン 途中ピンクの石作りの家や石畳の続く素朴なアブヤーネ村に立ち寄り。おばあさん達が、凄い田舎なのに素敵なピンクのバラ模様のスカーフをしていて似合っていて土産にしようと見たらメイド・イン・ジャパンだったのでパス。この人口僅か数百人程度と思われる田舎村の洞に数名の若者の写真が飾ってあったので何か聞くと、皆1980年~88年迄続いたイラン・イラク戦争の戦死者を祀っているとの事で驚いた。 イスファハンはテヘランから南へ40km。古くから政治・文化・交通の中心の街だったが、16世紀末はイスラムのサファヴィー朝の首都として世界の半分と言われる程栄えた都市。まず創建8世紀のの精密なタイルの美しい金曜モスクから、広大なイマーム公園を一望出来るアリパク宮殿へ。素晴らしい細工を観ながら急な階段を上り、室内楽団もいた所を更に上るとテラスからの眺望は素晴らしかった。広大なイマーム公園は夕方には家族連れが芝生の上に輪になってゆっくり歓談を楽しむ光景が実にのどかでした。人々の日本人旅行者への好意も随所で感じられました。翌日もイマーム広場をゆっくり堪能。本当に広大で周囲にはトルコ石(本当はイラン産)やタイル、ラクダの骨に書いた細密画等多種類の伝統工芸品店が立ち並び時間を忘れて見入って回り何点か購入。決済はドバイ経由であまり歓迎されなかったがクレジットカードも使えました。イマームモスクの細工は素晴らしかったし、公園を一周する馬車も楽しんだり。イギリスのものと思っていたポロ競技も発祥の地はここイスファハンだったようです。是非再訪したい所です。 ・アクダ&ヤズド ゾロアスター教の街アクダ経由ヤズドへ。高いミナレットの金曜モスクを望んだあと、アーテシュキデで拝火教神殿で1000年以上燃え続けているという神秘的な”永遠の火”を観た後、鳥葬が行われていた沈黙の塔という丘を歩いた。イスラム教は本当は異教徒に寛容で共存してきたのが事実のようです。 ・パサルガダエ パサルガダエへ向かう途中のアバルクで樹齢4500年前の糸杉の周囲を散策。糸の名前が全く似合わない巨木ですが、掘り出したものでまだ半分は埋まっている状態との事で、実に若々しく感じる樹でその姿は眼に焼きつき忘れられません。 ペルセポリスの北東87kmにあるパサルガダエ。アケメネス朝・ペルシャ帝国の最初の首都であり、紀元前546年に、キュロス2世の手によって建設が開始された場所。大昔のキュロス2世のものと伝えられる墓には強い存在感があった。。 ・ペルセポリス 史上最初の帝国と言われるアケメネス朝ペルシア帝国の都。最盛期(リビアから中央アジア迄またがる大帝国)を迎えたダレイオス1世(ダーラヤーウ1世)が建設した宮殿群。クセルクセス1世、アルタクセルクセス1世等が実際に行政をした場所と言われている。山裾に自然の岩盤を利用して作られている広大な宮殿跡だ。今回は間近な森の中の大臣達も泊ったコテージ型ホテルだったので、初日はクセルクセス門から夕日が沈みゆく日没前と、翌日は早朝から大階段、クセルクセス門、百柱の間、謁見の間、東階段、ハディーシュと全体をゆっくり歩くのと2回も訪れる事が出来て史跡を満喫した。東階段の壁に描かれた当時の多くの属国群の民族毎に特徴あるレリーフが興味深く、往時の権勢が偲ばれました。 ・シラーズ 最後が南端にあり、詩人の街と言われるシラーズ。紀元前700年頃からの街だが、13世紀以降学問の中心地となり、詩人サアディーやハーフィズ、哲学者モッサー・マドラーらを輩出し芸術や文学が花開いた。一時衰退したが1750年、ザンド朝が起こると1762年にシラーズはその都となり、カリーム・ハーンは要塞や城壁、バザールなどを改修再建し繁栄を取り戻した。今回の旅行ではローズモスクに立ち寄った。小さいモスクだが名の通りピンクのモスクで内部もステンドグラスも風情があり印象に残った。 4.カタール シラーズからドーハへ飛び、夕方まで市内観光。ラクダ市場やパー・アイランド、ゴールドスーク、スーク・ワキーフ、イスラム芸術館、カタールアルジャジーラの本社前等を慌ただしく見物した。イランの古い歴史建造物とは一転して対照的過ぎる豪華な街が続く。7人に1人は億万長者という国だけあって物凄い繁栄ぶりだったが、ここは日中39℃と暑かったのと巨大なビル群や豪華なヨットが多数等別世界なのでちょっと馴染みにくいと感じた。夜ドーハを発って関空へ。 4.最後に 今年は2月にイスラエル旅行し今回のイラン旅行と併せ、あまり知らなかった世界に首を突っ込んだ1年でした。やっとイラン旅行について纏めたので次にまだ書けなかったイスラエルについて纏めてみます。私は数年前まで政治と宗教についてあまり深く関心も関わりも持たず過ごして来たが、この2つについて皆が少し真剣に向かい合う事が必要な時期に来ていると思う。 ・政治 湾岸戦争、イラク戦争、各国のアラブの春、シリア大内戦、イラン核開発問題は根底にパレスチナ問題と深く繋がっている事が見えてきた。湾岸戦争やイラク戦争で多額の資金を出して米国を支えた日本。戦争が続き財政難に喘ぎ出した米国。日本人の生計にも大きな影響を及ぼして来た。今後更に大きな動きが予想される。目先の利害にのみ捉われず、国際情勢も踏まえてキチンと正しく見て他人任せにせず関与していく必要がある。 ・宗教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。いずれも1神教で元々の神を共有しているようだ。それら同志の骨肉の争いの歴史と論理は今後も少しずつ理解を深めていきたい。八百万の神を祀る日本、靖国神社だけを特別大切にする人達もいて有力だ。仏教も葬式主体で僧の在り方にも疑問もある。宗教は無宗教も含め価値観の根底にあるもので、狭い道徳を一律に押し付けるのでなく、各個人が比較宗教学的に見比べて考えていく必要がある。 権力を握っている人達の専横で全てが決められるのでない、空気を読んで従うだけで無く、しっかりした考え方で草の根で繋がっていく時代にしていきたいものだとつくづく感じています。… [more]

イラン旅行と最近の中東情勢で感じた事 イラン旅行と最近の中東情勢で感じた事

ドルの弱まる時代。どう対応する?

<はじめに> 新聞・TVでも、アメリカの「債務上限問題」を報道したので、一般の日本国民もやっと「アメリカは大丈夫なの?」と感じ始めた。殆ど多くの人が「それでもアメリカは大丈夫」「債務上限額はこれまでもずっと何十回も上げられてきたので今度も問題ない」と考えそこで思考を停止し、これまで通りにその枠内で行動する。だが米国単独覇権が終わりに近づいていてサインが色々と出だしている事には無頓着だ。今の国際金融制度に代替する制度が明確化するにはまだまだ時間を要するが、近い将来大きな変革が起こる歴史的時代を迎えている事は確かだと思う。この事を指摘する著作・報道も少しずつ増えて来たが、今回はまず「オバマ発金融危機は必ず起きる」山広恒夫(ブルームバーグ・ワシントン支局)著に沿ってその骨格を主体に纏めて見た。 <今、草の根の日本人が認識すべき事> 米国ドル基軸体制に絡めとられた日本は米国の植民地同然になりつつある。どう対応すれば良いのか名案は無いが、まずは現状を的確に把握する事から始め自分の出来る範囲で対抗するしか無い。   1.大きな流れの基本認識 米国は「建国以来の第1合衆国銀行が創設された18世紀末を起点とする経済発展の長期波動の転換点に達して来ている」との認識が必要。 ①1971年・ニクソンショック=金ドルの交換停止でドルが現実の価値を失い、米国は基軸通貨国としての矜持をホントは40年余前で既に失っている。 ②1985年・プラザ合意。この時も日本を犠牲にして危機を脱出した。日本は失われた10年の時代に突入し、以来ジリ貧に。 ③2008年・リーマンショック(住宅金融のバブル化とその破裂)は「100年に1度」でもなければ、既に克服されたものでもなく、今後のオバマ発の本格的な金融危機の序曲に過ぎない事。 2.QE(FRBのニューマネー供給)の現状 オバマが推進したリーマンショック対策の金融規制改革法は「偽りの金融改革」だった。オバマは「ヘッジファンドのお友達」。FRBも大量のマネーを投入して金融機関を救済した。金融機関はただ同然で資金を調達して利益を上げ新たなバブルのリスクを世界中にまき散らしただけで、本質的な問題は何も解決していない。FRBや金融当局者は「精神の無い専門人」。物価指数やGDPの伸びが下方に触れるとデフレ恐怖症にかかり、ガソリン価格・教育費・医療費・交通費・食品・自動車&家屋の修理費等の大変なインフレを実感出来ず、一般の米国民や他国への配慮は全く無い人達です。 ①QE1(09.3~6ヶ月間)→FRBが米国債3000億ドル購入&住宅ローン担保証券MBSを1兆2500億ドル他、合計1兆7250ドルで金融機関を救済しリーマン危機をひとまず先送りし切り抜けた。 ②QE2(10.11月~11・6月まで)→FRBは6000億ドル購入&MBS償還金3000ドル購入。米国では豪華客船クイーン・エリザベス2世号だと大歓迎されたが、R.マンデルコロンビア大教授は本当は「世界経済へのテロ行為である」と言及した。バーナンキは「実態は米国の金融システム=ウォール街を力強くするウォール街限定の振興券」である事を認めていた。 ③QE3(12.9月~)→月額400億ドル購入。雇用市場が改善する迄。既に開始後1年以上経過しており、縮小観測もあったが縮小出来ず。取りあえず当面半年程度の延期と見る向きが多い状況。中国は米国債の持ち分を縮小する傾向である。サウジアラビアですらシリア空爆問題を契機に米国と距離を置き始めたようだ。もうどこも買い支えるのが難しくなりつつある米国債を日本だけがアベノミクスで買い増ししている異常な事態になっている。これは「基軸通貨の緩やかな減価政策」であり、21世紀の「米国版徳政令」であるといえる。この事を「長期的安定に沿ったインフレ」等と言って誤魔化して債務を帳消しにする構えでいる。しかも、この過剰流動性が世界経済を混乱させて来たし、今後も米国以外の国が混乱の影響を背負う事になるのであるが、米国は他国の痛み等我関せずの構え。 ニューマネーの供給だけで「最大限の雇用」を確保する等は夢物語に過ぎない。金融関係の雇用者が少し増え報酬が上がっても、利益至上主義に凝り固まった経営者は労働者の削減と賃金引き下げしか考えない。マンデル教授も「基軸通貨であるドル相場の下落は海外のドル保有者に税金を支払わせる事に繋がる」と警告している。 3.今後の展開予測の一例と日本の一般国民の対策 ワシントンのシンクタンクは債務上限問題は2014年2月7日まで引き上げられ今回はデフォルトを回避したが、この「非常手段は長続きしないだろう」。債務上限の新たな引き上げ期限が到来する時の債務上限は約6000億ドル増の17兆3000億ドルと予測。多額の税還付を行う時期と重なることもあり、次回の引き上げ期限は2014年3月頃迄しか延長出来ないのではないかとも言われている。ここを乗り越えるとフレディマックからの配当金の支払いも得て数4半期息がつけるとしているようだ。今後の展開について正しい情報を常に把握していく必要がある。 日本でも、金融当局に近い立場の人や既に優良な株式を保有している人達、それに自己資金を金融資産と投資資金とに厳格に区分管理出来てプロ顔負けの実力のある人はともかく、それ以外の一般人は日本政府&金融機関からのあの手この手の株式&債券購入への制度的誘いに負けず市場と距離を置き(今からの市場参入は、当面はまだ大丈夫でも、いずれバブル崩壊時に逃げ遅れて鴨葱の類になる公算が強い)価値観を問い直し物を大切にして、まだまだ多い無駄を省き、信頼出来る人達と連携して籠城するしかないだろうと考えています。… [more]

ドルの弱まる時代。どう対応する? ドルの弱まる時代。どう対応する?

総論カテゴリについて

Share on Facebook

今64歳。22歳で大学卒業後ずっと競争・効率・グローバルスタンダードをある程度信じて生きて来た。

しかし50歳位からいろんな疑問を抱きだして勉強を再開。いろいろこれまで見失っていた事の真実や本質に次々と遭遇した10余年で知り得た事を纏めていきます。覇権国米国の暴走と失敗、それを取り戻し覇権を維持したい米国からの過大な要求が属国日本人の生活に大きくのしかかって来ています。日本の実権を握る官僚はそのツケを全て一般国民に押し付けようとしています。この現状の理解を、主として同世代の人達と共有し、自立した国家を目指す人達を増やしたいたいと思います。マスコミによる統制の強化で事態はむしろ悪化の傾向に見えるが、諦めず、団塊の世代の不甲斐なさが日本を本当にダメにしたと言われないようにしたいですね。

これから自分の知り得た事・感じた事を整理し先の進路に少しでも光明を見出して、『ハハッ、この程度だけど良く纏めたね!』『少しだけ世の中に役立ったね』と思って思われて死にたいと考えています。

折しも尖閣や竹島の外交問題が燃え上がっている。福島原発問題、消費税増税問題、TPP問題に加えての事で大変だが、なるようにしかならないとの諦観をベースに守るべき伝統・価値を明確にしていきたい。



「総論」カテゴリーの投稿を日付の新しい順に表示しています

巨大な権力の実態を知り、正しく対峙しよう

2011年02月11日
Share on Facebook

1.権力はどこにあるのか?

戦後の日本の政治経済社会を動かして来たのはずっと米国であり、米国に隷属した官僚である。
マスコミが一体となってその意向を広報する。
米国の衰退が強まりイラク戦争に突入したブッシュ時代の小泉・竹中政権でその傾向が顕著になって、2008年のリーマンショックではっきりしたのは「米国覇権の近代資本主義システムに限界が近付いている」と言う事なのである。
経 済が疲弊した米国は日本の残った資力を完全に奪おうと官僚・マスコミを総動員して菅政権で米国完全隷属体制を完成させようとしている。小沢・鳩山政権の誕 生と退陣させる為の攻撃、その後も続く執拗な小沢氏完全抹殺を目指した攻撃ではっきりと姿を現したのである。日本の現在の官僚は米国の指示・要望をいかに して受け入れるかしか眼中にない人達なのだ。戦前は天皇を奉じていた人達が、戦後は完全に米国を奉じる事に替わったと言っても過言ではないだろう。

2.市場(経済)と国家(戦争)の関連の強さを再確認しよう

戦後国土が直接の戦場になった事のない日本では、市場(経済)と国家は別物で切り離して考える人達が本当に多くなってしまっているのが問題を見誤る要因に なっていると思う。本当は国家権力があって初めて市場経済が成り立ち、その国家は戦争をし続けて生き抜いて来た事実を忘れてはいけないのである。

日 本は1950年の朝鮮戦争特需で息を吹き返した後、日米安保条約に守られ市場(経済)に専念出来たから戦後の復興・繁栄が享受出来たのだ。しかしその経済 の勢いも、米国という国家の戦争によって大きく左右されてきた。1965年のベトナム戦争の前に日韓基本条約が結ばれ、1970年位迄ベトナム特需で潤い 1968年GNPで世界第2位まで上昇した。この後1972年のニクソン訪中や沖縄返還(6月)に繋がっていく。
そして同年8月にニクソンショックが起こったが、ベトナム戦争で疲弊した米国経済の立て直しを図ったものだ。この年は田中角栄内閣が誕生し、日中国交が正常化した年でもあった。

し かし1972年の出来事で何よりも大きいのはオイルショックだ。OAPECが石油の価格を4倍にした重みで欧米の経済は不況に向かうが、日本は省エネ技術 等で10年間は何とか経済を維持した(狂乱物価と呼ばれるインフレはあったものの)が1980年頃から低成長時代に突入していく。
1980年代は米国と組んで米国の後退した分、それを補完する形で日本は世界最大規模のODAを多くの国に供与する国になっていったのだ。

1991年湾岸戦争、ソ連の解体から1992年PKO協力法でのカンボジアへの自衛隊初の海外派遣を経て小泉首相による2001年からのイラク戦争への自衛隊派遣に繋がっていく。この戦争で日本は戦費の約半分の約40兆円を米国債購入という形で負担していたのである。

3.官僚の決定権限の大きさと米国隷属の強さを知ろう。
ー国会はあって無きが如しだー

【財務省】
日本の本当の財政の規模は260兆円と言われている。国会で審議されるのは90兆円余の一般会計だけだ。残りの特別会計は依然としてブラックボックスのま ま。特別会計には余剰金が100兆円近く存在する筈であり、実質的には官僚と米国の財布になっているのではないか。これを一体に組み替えて国民に取り戻し て行こうとする小沢氏は米国・官僚から見て許すべからざる謀反者なのであろう。去年も特別会計から米国債やカリフォルニア州債を購入(合計20兆円近 く?)したり日銀にJリート等数兆円を買わせたりして米国経済の破綻を防ぐのに協力しているのだ。
破綻しかかっている欧米に比べると日本は特別会計を入れればまだ世界有数の金持ち国だから円高になるのは必然的なのに事実を必死に覆い隠そうとしているのだ。

【外務省・防衛省】
2005 年に2×2(外相・防衛相と米国国務・国防長官)で決めた日米同盟の深化についての取り決めをいよいよ本格的に実施しようとしている。もう米国とずっと打 ち合わせて来て決まっている事だから官僚は鳩山元首相の辺野古の国外・県外移転等と言う事は全く聞かない。このままだと集団的自衛権の範囲を世界中に拡大 し、米軍の指揮下で自衛隊が海外で戦う事態も起きかねない段階が近付いているのだ。

【法務省・特捜検察】
日本は事実上三権分立の国ではない。司法・行政・立法が一体となって権力を構成している。米国や官僚の権限を冒す政治家は特捜検察で排除するシステムになっている。これとマスコミが完全に一体化している。鳩山・小沢攻撃はまさにこれなのだ。

4.米国の一国覇権の終焉間近

ドルの暴落か切り下げがいつ起こるか、世界中が固唾を飲んで見守っている。米国がこれまでもずっとそうであったように新たな戦争を求める可能性は充分ある。イランとイスラエルの核戦争なのか、それとも北朝鮮・中国と日韓を戦わせるのか。これは何としても避けさせたい。
経済で言えば新たな通貨体制の模索が始まっており、3月の北京でのG20でドル・石油基軸通貨から次の体制について論議が始まるようだ。各々の通貨と金の交換比率を決めるドル・ユーロ・円・元等の通貨バスケット制度等が検討されるのか?

中国が昨年GDPで日本を抜き世界第2位と騒がれている。日本人はどうも中国に対する偏見や嫉妬や恐れの感情が強く共産党独裁体制は暴動で崩れるとか、軍国主義が強まり日本に核戦争をしかけてくるとか対立を煽る情報のみ流される。
冷静に見ると日本の30年ぐらい後を追って成長し、日本のバブル崩壊も充分研究して日本のように米国のいいなりにならない中国はまだ少なくとも10年以上発展が続くと見るべきだろう。
中国経済が米国を上回るのは早い人で2015年~19年、遅い人でも20年~30年後位とみているようだ。私は根拠は充分とは言えないが2020年までには起こると考えている。

今 回のチュニジア・エジプト・リビアと続く政争はいろいろな思惑が交錯しているようだが、はっきり言える事は米国の衰退が最大の要因だという事だ。新自由主 義的経済運営による一般国民からの収奪の強化への抗議であり日本で今まさにTPPと消費税増税で行おうとしている収奪の強化と重ね合わせると恐ろしい。今 後の日本の姿になりかねない瀬戸際に来ていると言っていいだろう。

但し最後に再び強調しておく。日本の財政は特別会 計も合わせてみるべきであり、そこにはまだまだ余裕があって、国会論議抜きで財務省がせっせと米国を支援しているのだ。消費税を払えずに、中小企業を企業 倒産や経営者の自殺にどんどん追い込んでも平気で消費税増税を何としてもやり遂げようとしているのである。日本を米国と同じような国にするTPPと共に決 して許してはいけないと思う。



「真の民主主義実現に向けた闘い」の中期見通しについて

2011年01月03日
Share on Facebook


イタリア側からのマッターホルン(2003年)

謹賀新年

今年も宜しくお願い致します。

昨年「日本の民主主義はまだ名目だけ」であり、戦後65年経っているのに未だに米国の支配から逃れていない所か、むしろ小泉・竹中政権になってから隷属の度合いが顕著になり、2005年以降ますます深まり、菅政権になってから属国化の政策が鮮明になってきてしまっている。

2009年に鳩山・小沢政権が多くの国民からの大きな期待によって出来たのだが米国・官僚・マスコミの支援を受けた菅政権に権力を纂奪された。以降マスコミは総力を挙げて小沢批判を繰り広げ、小沢さんを政治的に抹殺しようと懸命である。

し かしマスコミの影響力・権威は大幅に低下している。既に多くの見識の高い人達は激しい批判を展開している。その人達の影響もあり、自らの生活との関連を自 分の頭で考えられるかなりの人達がマスコミの意見・報道が著しく偏向・捏造・操作に満ちている事に気付き始めている。マスコミ以外の情報入手先を手にしマ スコミの影響から脱し始めた人が激増している段階だ。

2011年はいろいろな意味で岐路になる年だ。

<国際情勢>

1.米国の一国覇権から、台頭する中国等の新興国を加えた多極化が明確化・具体化していく。
2.欧米中心の官僚連合体がネットワークを強化して各国毎の統制強化が進んでいきそうである。
3.米国の産軍複合体の暴走の有無・程度が大きな要素となるので、強い関心と情報確保が必要。

<日本>

1. 国益を無視し、自分達の権益維持の為に恥も外聞もなく小沢・支持勢力を攻撃し続けるしかない官僚・マスコミと小沢系・国民(除く特権階級)の闘いの年とな る。検察・マスコミのごり押しは論理・道義上破綻しだしており、どんなに取り繕っても通用しなくなっていくだろう。菅政権・検察・マスミは総力を挙げて小 泉郵政選挙の再来を狙っているが、賢くなった国民は前回のようには騙されないだろう。
2.2011年度の緊縮予算で景気は大きく悪化する。それ以上に米国の取り繕っている財政破綻状況が顕在化する公算が本当に強まっているようだ。そうなると不況の規模が大きくなり政治無関心層にもいよいよ本当にお尻に火がつくが、その時彼らは眼を覚ますのかどうか?
3.米国の強い意向に添った沖縄の普天間基地の現状凍結や辺野古新設を図る菅政権の札束誘導も中途半端で沖縄の怒りが止まらないのかどうか?

2012年以降への期待。

1.米国の財政窮乏が顕在化してドル・石油基軸通貨体制に大きな亀裂が生ずる。大きな策謀による戦争が起こらぬよう一人一人が小さな声・視線で連携して監視し戦争阻止に努力するしかない。
2.日本人もやっと国民が正しい世界情勢や国際常識、日米の財政状況を少しずつ本当に知る事になっていく。これからは官僚・マスコミ等の米国完全依存の人達ほど、精神的・経済的なダメージが大きくなっていくだろう。
3.新自由主義により齎された大き過ぎる不正義・経済格差への批難が本格的に盛り上がってくる。

押さえつけようとする力との摩擦が更に強まっていくだろう。

とにかく急激な展開・激動が必須の時代に突入していると思われる。状況を見極め、コツコツ本当の民主主義に近付くよう私も微力ながら少しでも具体的に働いていきたい。



日米同盟の正体~迷走する安全保障

2011年01月01日
Share on Facebook

「日米同盟」の中身はどういうものなのか専門家が分かり易く教えてくれる必読の良書です。

 

 

 



日本の「自由や人権」は無くなってしまうのか?

2010年12月11日
Share on Facebook

昨年民主党政権が出来た時、激しい官僚・マスコミの抵抗・攻撃があり今に至るが、その間の推移を見るにつけ日本という国の現状・特性が今更ながら把握出来たが、懸念も拡がって来ている。

「日本は明治以来の官僚独裁国家」が続いている。
根 本問題は「日本は明治以来の官僚独裁国家」であり続けていてその体制が「微塵も揺らいでいない」事にある。第2次世界大戦の敗戦で「民主主義国家」に生ま れ変わったように見えたがたまたま戦後経済の復興期に、米国の覇権に乗って朝鮮・ベトナム戦争で利益を上げ、成長したので多くの国民は成果を享受出来たの だ。

「戦後の日本の歴史」を良く知ろう
この間に日本の官僚機構は元々命を助けて貰った 岸元首相以来米国CIAの支配下で自主独立の気概を示す人達は徐々に隅に追いやられ、ひたすら米国覇権に追随する官僚や追随者の天下になっていったよう だ。それと一体になって日本の言論の情報空間を取り仕切って来たのが読売新聞のナベツネ達であった。

「イラク戦争協力」の是非の再検証が必要である。
米 国がイラク戦争を必要とした時、私もまだその本質を理解出来ず、多くの日本人同様小泉・竹中の構造改革に不況の克服を期待したものであった。その後「構造 改革」の本質を多くの人が知る所となり、自公支持が激減して民主党政権の誕生に至ったのだ。ようやく誕生した鳩山・小沢政権を、米国・官僚が潰し菅・仙 谷・前原政権が誕生したが「日本の首相選びは米国に実質決定権がある」事を日本国民に思い知らせるものであった。
今後日本人もイラク戦争開戦の契機となった9.11事件の検証や、イラク・アフガニスタンでの劣化ウラン弾使用の実態を良く知り、日本の戦争協力問題を再検証していく必要があると思う。

「日本混迷の根源は日本の官僚・記者クラブマスコミの存在」にある。
米 国に100%協力した日本の官僚・記者クラブマスコミは自分達の特権維持に死に物狂いである。彼らの画策で今の所小沢潰しに成功したかに見えるが、これか らが本当の闘いが始まるだろう。「自由や人権」を大切に考える人達の層が既に厚くなっている。国際的視野を身に付けた人達も増えている。戦前だったら「自 由や人権」を大切にする人達を「治安維持法」でアカと決めつけ排除出来たのだろうが、今は既に多くの人が手にした「自由と人権」を奪う事には大きな幅広い 抵抗があると思う。狭い料簡の人達には日本の統治はもはや無理なのである。

「覇権国米国の衰退」の実態を知ろう。
米 国は知れば知るほど、金融・経済は崖っぷちの危機に立っていて、社会からは「自由や人権」も奪われている事がわかって来ている。昔はともかく、今の米国は とても中国共産党の一党支配や、人権弾圧を非難出来るような自由が溢れている国ではないのだ。マスコミはこの事を隠して、一切伝えない事に大きな問題があ るのだ。

「検察・マスコミ・裁判所そして極め付きの不公正な検察審査会」の酷さも知ろう。
こ の1年余、検察・マスコミの冤罪作りが酷いばかりか裁判所もほぼ一体の共犯である事が理解出来た。そして陸山会事件ではどれだけ恣意的に法律を濫用しても 小沢さんが潔白だったものだから起訴出来ないと見ると「検察審査会」なる実態も定かでない組織でインチキ議決をしたフリをして強制起訴をしてしまった。こ れがどれだけ「自由と人権」を踏みにじる行為かを理解し、反対しなければ日本が暗黒の社会に戻り多くの日本国民の「自由と人権」は奪われてしまうと覚悟し た方がいい。

「日本の司法制度」の後進性と中国の人権問題
私もこの時代 に日本人で生まれ多くの人達に育んで貰って来た。しかし現在「日本の司法制度」がいかに遅れていて酷いかを理解し、改善に向けた国民的運動をしていく必要 がある。日本人は中国共産党の一党独裁を批判するが、両国の「国民の自由と人権」のレベルを比べてその一長一短を公平・冷静に判断する姿勢が必要だろう。 間違っても古いイデオロギーを振りかざして狭い視野で戦争を煽る人達の跋扈跳梁を許してはならない。金融経済のシステムや両国社会に暮らす国民の人間性の 本質には大差は無いと思う。勿論国民性の違いの大きさの理解は重要であり克服すべき課題も多いのだが。

終わりに
私も特に今年1年、多くのネットのブログ情報と単行本の情報にtwitterの身近な情報を加えて飛躍的に真実の情報を沢山得る事が可能になり、ようやく上記の認識が深まり確信のレベルに至った。
これらのブログ発信者や単行本著者、冤罪被害者、フリージャーナリスト等の講演会には極力足を運び、その真贋・深浅を自分の眼で確認して来た。

日本の新聞やTVの情報は、世界の常識からかけ離れた低過ぎるレベルである事を痛感している。米国と官僚の意見の代弁だけで、世界情勢の大きな変化が全く取り入れられていないのだ。特に米国金融経済社会の衰退、中国等の新興国の台頭を考慮しているか大きな疑問がある。

日本の忙しい人達が一人でも多く新聞・TV情報の一面性から脱皮し、正しいネットブログ情報と単行本等により世界の動向を把握して世界の変化を織り込んだ人間性の本質も視野に入れた正しい判断が出来るようになる事を願わずにはいられない。

私もこれらの事を、「具体的に簡明に」説明できるよう認識を深めていくようにしていこうと決意しています。



国力を冷静に見る力について

2010年10月26日
Share on Facebook

私達の多くの人がそれ程確かな情報蒐集力がある訳でもない。
私がずっと不思議に感ずるのは高級官僚のあまりの情報蒐集力の無さだ。国民の上に君臨するだけで高い待遇が維持出来るので、本当の世の中が見えなくなるのだろう。特に近年は米国の指示通りに動けば良かったので、何も考えなくても追従していれば良かったのだ。

労組も同様だ。経営者に物申すフリをして高額の組合費を使う労働貴族が経営者と裏で談合するだけの組織だ。こんな甘い商売は無い。あまり何も考えなくても良いのは高級官僚と一緒だ。

私も日本人であり日本人を悪く言いたくは無い。しかし最大の問題は「先の敗戦から学んでいない」事だ。天皇を奉って朝鮮や中国等を侵略した中心勢力が、戦後朝鮮戦争以降米国の指示の下にそのまま生き残って日本を支配して来た。ベトナム戦争を経てイラク戦争から実質的に海外で軍事行動を開始してしまった。この頃からそれでも後方支援に過ぎないので「兵を前線に出さないなら、カネを出せ」と多額の米国債を買わされる羽目になり国内に回すカネが減った。この時以来減ったカネは「弱者から取り上げるので強者の取り分は減らさない(どころか実は増やす)」政策が強行され今に至っている。
菅政権は自公政権以上に酷い隷従ぶりを毎日晒している。

法律も詳しく無いが、日本人が検察に弱いのは戦前の特高警察の名残というより、むしろ江戸時代のお白州以来のお上には逆らえない意識が根強く、それが「特捜検察の暴走=酷い人権侵害」にも仕方が無いと受忍する現実の根底を支えているようだ。

伝統も大切だし江戸文化も素晴らしかったのだろうが、現代の激しい国際競争下で、日本人は勝ち残っていけないのではないか?年功序列制も問題はあるがそれ以上に派遣労働者の冷遇が高度成長期の日本の良さ、団結力を失わせていると思う。全く同一労働同一賃金とは程遠いのだ。

最大の問題は国民に残る米国隷従、中国・北朝鮮蔑視の感情だ。この意識が続く限り、今のアジア勃興の時代に自立した国家、繁栄を続ける国家でいられる訳が無い。米国隷従の実態は日本の支配者層程顕著なようだ。優秀な官僚でも自立意識の強い人達は、既に「巧妙かつ断固として排除」されもはや絶滅危惧種のようだ。政治家も同様で、小沢さんが排除されたら、みじめな世界中から馬鹿にされる国家に落ちぶれていくだろう。対中国・北朝鮮の問題はイデオロギー等はそれ程重視する必要は無いと思う。中国共産党を恐れ、日本の未熟な偽りの民主主義や先進国になったのが早かったからと言って威張っていては話にならない。技術等は余程努力しないといずれ全部追いつかれて相手にされなくなるのがオチだ。

「通貨の価値=為替レート」というものは不思議なものだ。しかしよくよく眺めれば中長期の動向を推定するのはそれ程難しいものでは無い。国力は衰退の方向だが、これまでの稼ぎの余剰が多いのと米国はドルの価値を下げたら日本や中国への借金を大幅に減らす事が出来るから円高が都合がいい。この2点で日本の余剰金が無くなるまで続くだけの話とシンプルに理解出来るかどうかであり金融関係で飯を食っていればわかっている筈という話では無い。

私達はその立場立場で賢く粘り強くいい国を目指して頑張るしかない訳で、一部の戦争好きの人達に操られる愚だけは何としても避けていきたいものだがとても安閑としていれる状況ではなさそうだ。



今は「正義感」と「勇気」が最重要徳目である。

2010年10月08日
Share on Facebook

私もやっと63歳になれた。サラリーマン時代を38年間過ごしそれなりに日本の世の中の事情も表裏共人並みに一通り経験出来た。日本の急な上り坂→高原→緩やかな下り坂の時代を生きて来たが、いよいよ避けられない急激な下降の時が近づいていると思う。

米国は自らの急速な衰退を避けるため、唯一忠実な子分である日本から収奪の限りを尽くそうとし始めている。一見穏やかそうな顔のルース大使にライシャワーの時のような余裕の笑みは無い。
部下達は恐ろしい形相でこれまで育て上げた官僚・マスコミに命じてあらゆる手段を使って小沢氏排除に懸命である。仙谷の検察・悪徳弁護士と連携した民主党代表選の謀略や、今回の審査会の決定の巧妙さを見事だと舌を巻き褒めたたえる人達もいるがとんでもない話であり許してはならない。

こんないい加減な検察審査会がこのまま通用するなら、戦前の治安維持法と同様に権力に逆らえば時の権力者の好きなように法律を適当にこじつけて邪魔な奴を捕まえる事が出来る暗黒国家に逆戻りしてしまう。戦後曲りなりにも存在した民主主義は本当に死滅するのだ。

この動きを指示する勢力は狂暴で危険極まりない人達であり、個人で対峙する事は難しい。自分の生命・財産が第一ならば土下座して財産を半分差出し、「命ばかりはお助け」と縋る方が賢いかも知れない。しかし一旦そうしたら全てを奪われ奴隷になる他ないだろう。今はまだ社会的弱者から順番に酷い目にあっているので「自分さえ大丈夫なら眼を瞑ろう」「奴隷から搾り取るのを手伝います」等の人が多いのが現状だ。いずれは自分の番が回ってくるのに・・・

有り余る人がもうあまりない人から強奪する。これを見て見ないフリをしないのが本当の「正義感」だ。命の危険もあるが「勇気」を奮って団結すれば戦いに勝てる事もある。負けるかも知れないので遠くから石を投げて前線の仲間を見殺しにして逃げて生き残って良かったという連中はいらない。歴史上この事はこの繰り返しあった事だろう。

「正義感」「勇気」を振り回すのは若すぎると一蹴される場合が多く周りが迷惑する場合も多いが、今こそ嫋かな融通無碍な「正義感」を持ち、「勇気」を持って小沢さんを支持し、無策の菅政権による日本の本格的窮乏化や、前原を野放しにして属国軍として本国の為に戦争させられる愚だけは絶対阻止するよう、立ち上がらなくてはいけない時だと思う。



3つの何故?

2010年05月15日
Share on Facebook

私は今の日本に大きくは3つの疑問がある。

①何故東京地検特捜部があれだけ徹底した捜査をして犯罪が無かったのに、あったようにマスコミに誤報させ結局検察が不起訴としたのにそれで終結しないのか?

<私の意見>
素人を11名集めた(何らかの意図を持って恣意的に選んだ人達としか思えない)検察審査会の、あまりにもレベルの低過ぎる決定に重みがある筈がない。こんなものが跋扈したらその瞬間に国が滅んでしまうと極論していい程馬鹿げたものだ。この決定を喜んで大騒ぎするマスコミの退廃は眼を覆うばかりの惨状である。

②何故日本の国民は普天間問題を自分自身の問題として考えようとしないのか?日米安保条約が今は日米同盟となってしまっている。本当にこのままで良いのか?又マスコミの報道は何故鳩山内閣批判一色で、日本の国防をじっくりと一緒に考えようとしないのか?

<私の意見>
国防や外交を論じる事を専門家の特権にしてはいけない。いわゆる専門家と称する人達は未だに辺野古沖の現行案でなければいけないと主張しているがそんな事はない筈である。2014年にグアムに移転するまでどう繋いでいくか答えは鳩山内閣がきちんと出してくれるのでそれをじっくり待てば良いのだ。但し、沖縄の負担軽減が第一で、軽減したものの本土の負担増は嫌だというなら徳之島の住民がやったようにその意思を皆で示していけば良いのだ。

この①②とも大変重要な問題で多くの人達が論じているので当面その動向をキチンと見守っていきたい。
さて今回私が論じたいのは最後の③の問題である。

③何故この7月の参議員選挙の民主党マニュフェストに、3年後で良い次回の衆議院選挙後に消費税アップを図るという案が浮上して来てしまったのか?という疑問である。

<私の意見>
今この時期に消費税増税を言いだす事は2重の意味で間違っている。
一つは政治的意味合いである。参議員選挙で与党側が勝利する為には、いずれ必要になるにしても消費税増税を今言う事は選挙にマイナスである事は誰の目にも明らかな事である。それなのに消費税アップを今主張する民主党の人達はわざと選挙で負けて民主党中心の政権を潰そうとしているスパイのような人達であろう。

二つ目がもっと大切な事である。この財政の悪化は旧政権が作りだしたものである。長く続いた自民党単独、その後の自公政権のツケは大きく大変だし、麻生政権の予算で税収見積もりが7兆円も狂い財源探しに苦労している事はわかるが、この問題こそ政府が一部の学者や財務官僚の意見だけでなく一般市民にも情報を提供しじっくりと時間をかけて論議・決定すべき重要な問題なのである。

これまでの自公政権では「実質の支配者は特権官僚」であり国民の代表である政治家が主体になろうとするとその政治家を特捜検察とマスコミで潰してきた歴史がある。この特権官僚が優遇して来たのが、まず支配者である米国資本と自分達自身である。天下りシステムは本当に巨大利権である。その次が隷米の政治家と大企業である。マスコミは米国資本に隷属しながら自身が大企業であり、かつ大企業の広告によって成り立っているので、財政危機を煽ってなるべく充分な論議をさせないまま消費税を増税させようとしている。

こんなに一般市民が苦しくなっているのに更に消費税をアップして法人税を更に減税し、所得税率の上限をそのままにして、弱者に負担を強いていこうとして必死に抵抗している。もしそうなったら市民の活力が更に失われ大不況に繋がっていくだろう。財政は確かに厳しいが欧米等と比べると本当にまだ僅かばかりゆとりがあるのだ。この機会に税制の在り方について多くの国民が学びながら意見を戦わせる時間が必要なのだ。
この点については菊池英博氏の他に、植草一秀氏のブログ(5月16日付け)で明晰に論じてくれているので、納得するまで何度でも読んで見る事をお勧めする。

①②③のような重要な問題について多くの人は専門家でないのが当たり前である。しかし自らの生命や安定した生活を守るためにこれらの問題について「普通の市民の常識のレベル」が低すぎる事が大きな問題である。この点について新聞・テレビの責任は本当に重い。はっきり言って日本経済新聞も、他の新聞も恥ずかしい程レベルが低い。今の一時的な回復が誰によってなされたのか。2010年度補正予算について財務省や菅さんの主張通り実質2兆円程度の規模にしていたら景気はここまで戻っていなかったと思う。亀井さんの主張が通ったお陰で国民の多くが一息つけているのであると思う。今つくづくケインズ的政策の有効性を感じている。

財政規律を再優先して消費税をアップして法人税を下げ、危険な米国の債権を大量に購入しようとするみんなの党を支持しようとする普通のサラリーマンは「自分で自分の首を絞める」本当に愚かな人達だと思う。

菅財務相よ、参議員選挙のマニュフェストや2011年度予算を策定する際は、小野善康阪大教授の「増税しても使い道を間違えなければ景気は良くなる」等という蒙説にくれぐれも騙されないで欲しい。そんな甘い話がある筈がないではないか。
ここの所が肝なのだが民主党の国会議員を筆頭に一般市民も意外に簡単な事なので本当にじっくり考え理解して国政に生かしてくれる事を切望しています。



日本国憲法と9条について

2010年05月03日
Share on Facebook

日本国憲法制定後に生まれ、大学で憲法の科目を履修した位であまり考えずサラリーマン生活を過ごしてきました。
最近普天間移設問題が連日報道され、考えてみるとやはり外交・防衛問題が基本であり、とりわけ憲法9条の存在が極めて重要であり、これを守っていく事の大切さを痛感しています。

自分の本棚を見ると元々は金融・経済・財政ものが多く、それに歴史ものが混じっていました。去年迄の数年間はずっとそうでした。

しかしこの1年は大変違和感を感じる検察・マスコミ報道もあり、小沢一郎氏に関する事件を正しく認識する為に、背景を調べてみました。小沢関連本では「小沢一郎嫌われる伝説」「わが友小沢一郎」「小沢一郎完全無罪」です。
ここに至る流れの根底になった「田中角栄の遺言」や「国策捜査」「日本の裏金」「公安検察」そして有罪となった人達の書いた「知事抹殺」「リクルート事件江副浩正の真実」「知られざる真実」における検察の手法の問題、それとほぼ一体となった「裁判官はなぜ誤るか」「裁判員制度と知る権利」等の司法絡みの本を読む事に集中していました。

ところが外交・防衛となると無関心だったせいか殆ど書籍が無く最近やっと「日米同盟の正体」で実態を知り「憲法9条と25条・その力と可能性」で考え「昭和天皇・マッカーサー会見」や「昭和天皇の悲劇」等で、憲法制定の経緯・機微にやっと触れた所です。とにかく私達が無関心で気付かないうちに「日米同盟」が既に強化・深化していて、「更なる日米同盟の深化」というと、これ以上深化すると行き着く先は自衛隊は完全に米軍の1部隊にすぎなくなる危険を孕んでいるようです。

最近殆ど毎日、天木直人氏のメルマガを読ませて頂いていますが、氏が6月頃「さらば日米同盟」という本を出されるそうで今から心待ちしています。私のような素人も良く考えていくべきと思います。

これが民主党政権で移設先の見直し論議が進まず「何故か」と考える時間を与えてくれた効果でしょう。



小沢さんの事

2010年04月29日
Share on Facebook

やっと暖かさが戻りGW入りです。

今年はリハビリを兼ねて花見三昧で過ごしてきました。河津桜に始まり最後は大河原(共に満開前の5分咲きでした)。
いずれも初めてでしたが良い所でした。川岸を静かに歩けるとても素晴らしいポイントで本当にお勧めしたいです。

小沢さんの件の「検察審査会」の議決、呆れ果てました。この制度は早く改善した方がいいですね。根が深いようであり簡単ではありませんがキチンと対峙すべき重要テーマだと思います。
鳩山さんの「普天間移設」の腹案?もこれが本当ならば期待を大きく下回るものであり誠に残念です。最後のどんでん返しをまだ期待しています。
本当に抵抗が凄まじいせいもあり実行力不足は否めませんが、それでも民主党政権支持は変えません。

マスコミは「電波利権」「記者クラブ制」を守り「クロスオーナー制」を阻止する自らの権益死守だけで民主党政権を攻撃する本当に醜悪な人達の集まりである事が連日剥き出しになっています。こんな見苦しいものはなく本当のジャーナリズム精神を取り戻さないと不買・不視聴はこれからも加速して増え続けるでしょう。
私もささやかにこの運動に取り組みます。

「検察」も米国に指示されたり?自らの特権的な社会的地位の維持のみにこだわり続けると、ますますカルト集団しか支持しない孤立した権力になりかねません。誰も尊敬しない心の底では憎み忌避される存在になるでしょう。権力乱用による恐怖政治は長続きするとは思えません。

普通の生活者達は、無気力にもならず絶望もせず、アリや働き蜂の集団のようにいずれ本当に団結して大きな勢力になる事を確信しています。
本来は立派な指導者たるべき人達が、つまらない見え透いた策謀によるのでなく正道に戻ってくれる事をまだ僅かですが期待しています。

 




Newer Entries »
owljiiの素人談義